ソースの話

秋犬

ソースだろう

 日本食の特徴に、大豆を使ったものが多く使われていることが挙げられるだろう。醤油に味噌、豆腐に納豆、おからに煮豆。日本人は大体豆を食っている。でも、日本食に欠かせない調味料は醤油や味噌の他にもある。


 それはソースだ。


 調味料のさしすせそと言えば「砂糖、塩、酢、せうゆ(醤油)、ソース(本来は味噌)」というくらいソースは日本人の心にしがみついている。創業120周年をブルドッグの笑顔のロゴで祝ったブルドックソースは日本人の心の友である。


 日本人にとってソースといえば中濃ソースで、他にもとんかつソースやウスターソース、オタフクのお好み焼きソースに焼きそば用のソースもある。


 私は中濃ソースを愛用している。ソースは何にでも合う。ハムや魚肉ソーセージ、目玉焼きや基本的にフライはソース一択だ。レタスや鳥の唐揚げにもソースをかけて食べるときがある。いいだろう、マヨラーが持て囃されるならソース愛好家がいてもいいだろう?


 そういうわけで、アジフライはソース派だ。醤油で食べるのもいいけど、アジフライはソースで食べたい。アジには醤油かもしれないけど、フライには圧倒的にソース。ソースがフライのポテンシャルを引き出している。


 この前は厚切りハムカツにソースをかけて食べた。厚切りハムだけだとソースは合わないけれど、ハムカツにすると途端にソースと衣のハーモニーがシンフォニーを奏でる。ベートーヴェン交響曲第九番四楽章、歓喜の歌だ。次第に盛り上がり、最後には大合唱になっている。年末にもお歳暮でもらったハムで作ろう、ハムカツ。ハムカツはもっとメインの顔をしてもいい。


 ハムカツよりソースをつけて食いたいのはトンカツだ。とんかつソースという専用のソースがあるくらいトンカツはソースがよく合う。おろしトンカツも好きだけど、やっぱり普通にソースで食べたい。カラシやすりゴマはあまり使わず、キャベツとトンカツにどさっとソースをかけて食べたい。トンカツを食べに行く時はご飯と味噌汁をどのタイミングで食べるか、と頭の中で孤独のグルメごっこが始まる。でもレモンは欲しい。ソースとレモンはあんまり喧嘩しない気がする。


 エビフライやカキフライも実はソースで食べたい。魚介のフライはタルタルソースが一般的かもしれないけど、出来ればソースで食べたい。尾頭付きのエビフライは未だにどうやって食べればいいのかよくわからない。


 粉物もソースをかける瞬間が至福だ。鰹節や青のり、マヨネーズよりもメインはソースなのだ。ソースを食らうために粉物が与えられているようなものだ。ソースはうまい。ソース味のナントカ駄菓子は大体うまい。ポテトチップスはお好みソース味みたいなのがうまい。もうソースが最強でいいだろう。おまえがナンバーワンだ。


 これだけソースソースとソースのうまさを語ってきたけど、目玉焼きは醤油とマヨネーズがうまいと思う。ソースを使うなら目玉焼きの上に千切りキャベツを乗せてお好み焼きみたいにして、それをソースで食う。肉も揚げ玉もいらない、簡易お好み焼き。ソースとマヨネーズのシンフォニーが運命的なうまさを演出する。ベートーヴェンもアジフライにはソースをかけてくれるに違いない。それにつけてもソース、ソース、ソースなのである。ソース万歳。ソースよ永遠に。



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