第48話 天に召される豚野郎
「ブヒ! ブヒヒヒ! その身体どうしたんだ?」
眠ると気づいたら久しぶりに豚野郎が定住している夢の中にダイブしました。
相変わらず豚野郎はマッパなので地獄みたいな状況です。
「うん? 身体が? なんじゃごりゃあ!」
見ると体が光の粒子的なあれに変わっていきます。
「ブヒヒヒ! おそらくこの世界を救うためににお前は私の体に呼ばれたのだろう!」
なんですかこれは?と思っていると豚野郎がニヤニヤしながら推測を喋ってきます。
いや痛みなしで安らかに死ねるのなら別にそこまで悪くはないんですけど、豚野郎がウキウキしているのが腹立ちますね。
「これでお前といい感じになっていた女どもも私のものだ! この時待っていたぞ! 女の子からチヤホヤされるこの瞬間を! 貴様に甲斐甲斐しく死なんように協力してやった甲斐があるものよ! ブヒヒヒいぃぃ!」
「仲直りしただけなんですからそんなんだとすぐ愛想尽かされますよ」
まあしゃあないので消える前に体借りたよしみで注意喚起だけしますが豚野郎はテンションマックスで聞いていません。
どうなっても知りませんよもう。
「……なんだか急に疲れて眠く」
豚野郎がはしゃぎすぎたのかわかりませんがいきなりぶっ倒れて眠り始めました。
最後まで凄まじい人ですねこの人。
俺が豚野郎にドン引きしていると、お迎えなのか、真っ白い世界の空から小さいキューピッドみたいな天使がゆっくり下りってきます。
そろそろかと思うと俺の横を通り過ぎて、豚野郎を運び始めました。
「あ、すいませーん! 取り違いです! その人、ああ……」
天使たちに取り間違えてますよと伝えますがそのまま行ってしまいました。
まあさっきめちゃくちゃ調子こいてたし、いいか。
──
「スラン様!」
目が覚めて、なんか色々と凄まじかったなと思いながら起きるとローゼリンデが抱きしめてきました。
どこでしょうかここはなんかロイヤルなベッドの上ですが。
「ここは?」
「ここは王族の避暑地です。スラン様は3日意識を失われていて」
三日。
全然実感が湧きませんが結構寝ていたようです。
生命力というのは消費するとかなりの負担がかかるようですね。
「生きてまた会えたね」「豚にしては頑張ったじゃない」「姉ちゃんのことありがとね」「未来の社員が消えるかと思ったぞ」
なんかよくわからんがヒロインたちから抱きつかれました。
豚野郎が見たかった景色がここにありますね。
豚野郎ご冥福を祈ります。
「妄りに接触するのはやめなさい。その方は『真の王』であり、私の王配ですよ」
「何?」
俺が疑問に思い、シアに尋ねるとどうやら現王が二つの国の軍を壊滅させ王都を全壊させた金色鎧──俺にビビりり散らかし、大々的に王権を俺に委ねるとめちゃくちゃなことをいい始めたらしく、とりま現王はダメということでクビにして王の血族であるシアが王権を継承し、俺と結婚する形で地味に影響力のある現王の言葉を歪曲させて収めたらしい。
とんでもないことになってますね。
まあ俺もこういう感じに落とさないと王都全壊の責任取りで首括りなさいとか、独裁者になりそうなので文句はありませんけど。
「あなたが両国にあるすべての鎧を壊し尽くし、これ以上争いを続けて貴方の怒りを買い世界が滅びることを危惧した人族も魔族も和平を結びました。そして教会はあなたが懐柔して麾下したファラスによって『預言』が破棄され解体されました。貴方が王国も世界を救ったのです我が夫よ」
いや麾下って部下か何かのあれですよね。
そんなもんにした覚えは……。
そういえば空気仮面に魔法打たれそうになって、そんなことを言ったような気がしますね。
まあなんか割とシアには真摯に対応しているみたいですし、世界から俺がヤバいやつ認定されているようなのでブッコロすると人の心のないモンスターグレードアップしてこの世界の人々と全面戦争することになりそうなのでブッコロはやめておきましょう。
裏切たり牙を剥いたらその限りではないですが。
「あなたとの式は王都復興後に行う予定です。一日も早い復興お願いしますよ。私はイクスと共に魔族との会談に行かねばならないので」
俺は当面は王都の復興作業らしいです。
まあ俺が王都はやったので当たり前といえば当たり前ですけど。
体の調子を確かめると、痩せたおかげで年相応に体が動きます。
少し動くだけで死にかけてた状態と比べると素晴らしい体の具合です。
病み上がりということで今日は復興現場から来た人から現場の話を聞いて、メイドのシルヴィアと再会して世話を焼いてもらうと明日現場へゴーということになりました。
さてまた寝て明日に備えますか。
「入るぞ」
「リリアンか」
そう思って寝床に横たわるとリリアンが入ってきた。
「体の調子はどうだ?」
「いいぞ」
そういえば体調繋がりで思い出しましたが、動くとしんどくなるのが回復したらグヘヘすることになってましたね。
「不調は治った。約束は果たせるぞ」
「ふむ。ならばヤるか」
──翌朝
「なんだ君は。病み上がりだというのにひどく血色がいいな」
復興現場の王都入りすると先に、現場監督していたファラスと遭遇して、目を剥かれました。
昨日ので絶好調なのが外面にも現れていたようです。
仮面脱いでアイデンティティーを喪失した空気仮面に婚約直後に婚約者以外と婚前交渉しましたというわけにもいかんのでお茶に濁すことにします。
「三日も寝れば誰でもこうなる。ヘソ曲がりな貴様のことだ。とっくに裏切っていると思っていたが殊勝だな」
「私は老いも寿命もない人の紛いものだから時間は惜しくなくてね。無限の時の中で君が言った言葉が本当に実現するのか見て時間を潰すのも悪くないと思ってね。少なくとも不可能なことを可能にする実績はあるようだし、せいぜい期待させてもらうよ」
「貴様の期待を更新し続けるから覚悟しておけ。驚いて死なんようにな」
ファラスがお家はもちろんいいやつ作ってくれますよねと圧をかけてきたので、リップサービスでめちゃくちゃすごいのができますと言っておきます。
さて駄弁っててもしょうがないのでお仕事始めますか。
「ではこれから本日の復興作業を開始する」
そう指示を出すと豚野郎親衛隊や近衛騎士、聖騎士たちが動き出します。
壮観な光景ですね。
完
──
お読みいただきありがとうございました!
お読み頂いた皆様の応援のおかげで完結まで書き切ることができました!
エロゲの豚野郎に転生してなるべく怒りを買わないようにしたらヒロインたちの好感度がカンストした 竜頭蛇 @ryutouhebi
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