2話 第四を破る者

突然だが…

この世界の魔法の歴史について説明しよう。


この世界で初めて魔法が使われたのは、砂の国サハラカディーフルからだとされている。


古代の砂の国は草木が生い茂る緑豊かな国であり,国民全員が笑って暮らしていた国だった。

しかし,とある時期の砂の国では長期間の日照りが発生し、水不足が深刻化していた。

国の付近にある川の水は蒸発して無くなり、国民達は今まで各自で溜めてきた水で喉の渇きを潤すしかなかった。


そんな絶望な状況でも国民達は希望を抱いていた。

それは少し経てば雨が降り,水不足が解決するという希望だった。


だが悲惨なことに,一向に雨は降らず、草木は枯れ、一面砂の世界になってしまった。

やがて、溜めてきた水が底を突き始め、亡くなる者も現れた。

人々は残り少ない水を求めて、国民間で水を奪い合う争いが国中で起こった。


そんな時、笑顔が消えた国に絶望した当時の砂の国の王は神に雨を降らせてほしいと願うようになった。

毎日毎日,必死で願う事により、やがてからその身に魔力という奇妙な力を貰い受ける。


そして少し時間が経てば魔力というものは、国王以外の人々も持つようになった。

魔力を持つ者達は魔力を使い、水を作り出して、国中に雨を降らせた。

それにより国民の間で起こった、水を巡った争いは消え、再び人々が笑い合える平和な国となったのであった。


この時に、魔力を持つ限られた者達だけが出来た創造の技術の名こそがと呼ばれる物だった。


その時代の魔法は、今では基礎魔法と呼ばれるものだ。

(地)(火)(水)(電)(風)(光)(闇)等など、現代の魔法を形成するには必要不可欠な土台が出来た時代だ。


やがて、時代が進むに連れ、魔法技術が発展し、基礎魔法よりも威力の高い上位魔法という魔法が出来た。


しかし、上位魔法には、弱点があった。

それは、基礎魔法よりも発動する時間が長い事と、魔力の消費が激しいことだ。


それらを改善しようと、を極める者達は尽力じんりょくした。

その結果、中位魔法という、基礎魔法よりも威力が高く、上位魔法よりも魔力消費が少なく、早く発動出来る魔法が生まれた。


そして今も尚、魔を極める者達の探究心は永遠と続き、魔法は進化していく。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【No.15・地球】

〈2027年6月3日木曜日午後5時30分〉

ども〜!読者の皆様!こんにちは!

初登場から第四の壁をぶち壊しているレアベルです。

現在、私がいるのは…………



はい、空の上です。


何故こうなったかを話すと…

駅から目的地に行こうとして道に迷い、

森に入ってしまって、大きなドラゴンと遭遇し、

そこから逃げて、そして転んでしまい、

ドラゴンに襲われて、そのドラゴンの大きな爪に服が引っ掛かって…


そして現在、背中から吊るされるような体勢で、地獄のドラゴン飛行旅が始まっています。


皆さん皆さん!見て下さい!!

街の建物があんなに小さく見える!


「あれは、有名なレストランで〜!」

「これが砂浜で〜!」

「そしてあれが私が目指してた目的地〜!」

「そして、また森〜!」って感じで、

その周期を5回ほど続いた私は……………


精神が病んでしまいました。

何処ぞの自称神のように………………………


「あの〜ドラゴンさん〜降ろしてくれませんかね?」

「………」

「無視ですか、はい…」



飛んでる間は暇なので改めて、自己紹介を!

私の名前は、レアベル・ツメクサです。

西洋の魔法学校の学生で、これでも校内では優等生の部類に入る学生なんです!!

学科は魔法生物科で、得意魔法は植物系の魔法と回復系の魔法です。


そして私の自慢できる要素は、!!

どんな複雑に暴走した魔法や初見の魔法でも、この私がチョチョイのチョイで、制御出来るんです!

しかし、私にも落ち度というものがあり、魔力量が常人に比べ、半分しかないのです。

なので、長い時間魔法を使うことが出来ません…


とまぁこの際、そんな事はどうでもいいので!


この地獄のフライト旅行を中止する方法を読者の皆様!!

一緒に考えましょう!!


私が助かる方法はあるのでしょうか…

うーん…


え?

お得意の魔法は使わないのかって?

A.こんなドラゴンに私風情が勝てるとお思いで?


まず、このドラゴンは、ストーンドラゴンと言いまして、脅威レベルが80もあり、(MAX100まで)

熟練の戦士でも、傷をつけるのに苦労すると言われています。

特徴は、普段は温厚なドラゴンで、こちらから攻撃しない限り、普通は襲ってこないんですが…(何故私は襲われたのだろう?)


主に洞窟の中で暮らしていて、その硬い胴体を活かして、洞窟の食物連鎖のトップに立っていると言われています。

極稀ごくまれに翼の運動の為、外に出て運動をし、

そして住処へ帰ってくる時、大きな爪を使い住処の前で着地するというのが、このドラゴンの特徴なんですが…


この特徴から分かる通り、私はこのままだと死ぬ事になります。


分かりやすく言うと、このまま落下されると私は硬い地面と大きな爪に挟まれ、潰されて死にます…



うん?

それなら、植物系の魔法で爪に引っ掛かった服を取ることができるのでは?


読者の皆様!そう考えたでしょ?


A.私が扱える植物系の基礎魔法は、地面に自身の魔力を流すことで、植物を操ることが出来ます。

しかし今私がいるのは、〝空中〟です。

よって、植物を操れません。

魔力量が多い人なら、空中でも出せますが、

私は魔力量が少ないんです…………


なので、私の未来は、『死』一択なんです。

「死ぬのか…私」

「せめて、に出会いたかったな…」

「サヨウナラ!今世こんせいの私!」と私が名残惜なごりおしそうにない言葉吐き捨て、目を瞑った。

その直後、ドラゴンは勢い良く住処へと落下し始めた。




吹き上がれ風よウィントゥス!!」




その時、私ではない男の声がその場に響いた。

すると突然、私含めたドラゴンに対して強い逆風が吹いた。

無理矢理にも落下しようとするドラゴンだったが激しい逆風に押し戻されるだけだった。

やがて、ドラゴンは落下をするのをやめ、空中で飛び続けながら止まった。


突然の事で理解が出来ず、私は目を開けた。


すると、先程まで誰もいなかったはずの洞窟の入口前に一人の黒い何かが見えた。

首を上げ、よーく見てみると、そこには黒い鎧をまとった騎士が剣を地面に刺して、

こちらを殺気に満ちた目で見ていた。

(いや、怖!)


私のような魔法を扱える者達は、人の魔力を見ることが出来るのだが、

そこにいる、黒い鎧を着た人物の魔力は……

化け物並みだった。

この魔力量は、伝説の魔族の魔王に近しく、または歴史上に存在する大魔法使いに近しい大きさだった。

黒い鎧の人物の体には、白い魔力のオーラが激しく燃える炎のように揺らいでいた。


ドラゴンと黒い鎧の人物はお互いを見つめ合っていた。

その黒い鎧の人物が放つ殺気にドラゴンは少し怯えているのか、震えが私の体に伝わってきた。


そして黒い鎧の人物は、地面に刺さった剣を抜き、その剣を両手で持ち、構えた。

その姿はさながら、幾千いくせんの戦いで非情を貫いてきた歴戦の戦士の様だった。

その姿を見たドラゴンは更に怯え、大きな翼を広げ、後方に全速力で飛行し、その場から逃げようとした。


私は首を下ろし、後ろを見ると、黒い鎧の人物は、剣を力強く持ち、剣を頭上まで上げ、目を瞑り、何かに集中するような動きを見せた。

すると、黒い鎧の人物の魔力がどんどん剣の剣身けんしんの部分に流れていった。

するとその剣身には、魔法陣が浮かび上がっていた。


そして、黒い鎧の人物は、

切り刻め風の斬撃よキテラウィントゥス!!」と言い、剣を振りかざした。


すると剣の剣身から何かが飛び出て、こちら向って飛んできた。

そして、その何かがドラゴンの爪を粉々に砕いた。

「グルギャァーーアッ!!」と、ドラゴンは痛がり、死に物狂いで飛行し、どこかへと逃げてしまった。


先程から鎧の人物が使ってるのは、基礎魔法である風魔法かぜまほうだった。

基礎魔法は威力が低いはずだが、たった一振りの斬撃で、硬いドラゴンの爪を砕くということは、かなりの魔法技術がある事が伺えられた。


で…だ。

今の私は、落下中だった。

もう一度言おう…

だった!


「死ぬーー!!」

私はパニックになっていった。

「えーと、助かる方法…助かる方法…」

私は焦りながら、自分のが助かる方法を一生懸命考えた。


そして地面ギリギリで、

吹き上がれ風よウィントゥス!!」と私も黒い鎧の人物と同じ様に風魔法を使った。

この時,私の心臓はとてつもない速度で鼓動していた。


すると私の足元には、大きな風が生まれ、やがて太ももぐらいの高さまで風が足元を回り、少しずつ落下するスピードは落ちていった。

ゆっくりと私は着地した。


「ふぅー、助かった…」

「いや〜者場しゃばの空気は美味いぜ!」

そんな意味がわからない事を言いながら、私は落ち着いた。


「あ!そうだ!」と、私は先程の黒い鎧の人物にお礼を言おうと、辺りを見回した。

しかし,私が洞窟前の方向を振り向くと黒い鎧の人物の姿はなかった。

その後,辺りを数分探したが、黒い鎧の人物を見つけることは出来なかった。

「お礼…したかったのに…」

私は落ち込みながらも、心の中で黒い鎧の人物に感謝した。


「さて、遅刻だけど…目的地に向かいますか!」と言い、

私は目的地向って歩き出したのであった。

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サン・アンド・エンド 私道ミハル @sakusakukuma

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