パラボラ

@okirakuyaho

ちょめちょめパラボラ

「ばっか、お前の電波強いんだからゆっくり動け」


初めての体験は散々だった。早すぎる、遅すぎる、そんな注文ばかり。想像以上に衛星からの電波を受信しそうなパラボラの手つきは、その大きさに比べてお粗末なものだった。


パラボラはもっと上手だと思っていたんだけどな……。


一通りの行為が終わった後、お互い寄り添いながらベッドに横たわる。パラボラの息が荒くなっていたので、水を持ってきてやった。


「初めてだったのか、パラボラ」

「……お前が初めてだよ」


パラボラの蚊の鳴くようなか細い声が、俺の嗜虐心をくすぐる。見た目は俺よりも立派なのに、なんでこんなにも愛しいのだろうか。見た目と中身のギャップが俺の心をつかんではなさない。


「そういうお前は、俺が初めてか?」

「パラボラが初めてだよ。パラボラと交信できて、すごく嬉しいよ」

「そっか、俺が初めてか……嬉しいな。俺もお前と一緒にいるのが嬉しいよ」


子犬のようににっこりと笑い、もたれかかってくる。初めてと言ったのは嘘だが、パラボラはそれに気づいていない。それが少しまぶしい。


「なぁ、もう一回しないか?」

「少し休憩させてくれよ、けだものかお前は」

「いいじゃないか。俺はパラボラのことが好きなんだからさ、好きな人と一緒になりたいと思うのは普通のことだろ」

「……それも、そうか」


照れくさそうに笑うパラボラは、今まで出会ってきた誰よりも可愛かった。くりくりの瞳に、少し色落ちしてきた髪色、見慣れないピアスやネイルが愛おしい。抱きしめて、この世の電波を全部奪い去ってしまいたい。


「パラボラ、好きだよ」

「八木、俺もお前のことが大好きだよ」


世界は今日も、交信している。

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