好きな先輩が俺じゃない男と結婚する

@Y-iina

第1話

「彼から付き合おうって言われた場所はね、実は誰かに教えてもらって、一度行ったことがあったんだ」


あ、それ俺っすよ。先輩が将来の彼氏と行きたいデートスポットって言ったから、寝ずに考えたコースなんすよ。


「彼、料理ができる子が好きって言うから、私も頑張って練習したんだよね。」


夜中に泣きながら『カレーが減らない…』って言われたから、飛んでいったっす。おかげでお腹いっぱいになったけど、あの時のカレー、すごく美味しかったですよ。


「考えてみると、二人でいろんなところに行ったよね。君のこと、ほっとけなくてさ。実家の弟みたいで。」


知ってます。俺のこと、男として見てないの。でも、いつか好きになってもらえたらいいなって、仕事も一生懸命頑張ったんす。それも、もう叶わないけど。


「そろそろ、帰ろっか。」


じゃあ、送っていきますよ。


「あ、彼が来てるから大丈夫。彼、嫉妬深いんだよね。でも、後輩君なら、ちょっと勘違いされてもいいかな?なんて。」


…先輩、好きな人と結婚するんだよね?冗談でも、そんなこと言わないでくださいよ。


「相変わらず、真面目だな。君は。」


店の外まで送れなくてすいませんっす。それじゃあ、ここで。先輩、幸せになってくださいっす。


(先輩は外へ。自分はまだバーに。)

(マスターが先輩のグラスを片付けようとする)


「まだ、ちょっと…置いててもらえますか?」


先輩との思い出に浸っていたい。このグラスの氷が全部溶けるまで。

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