第3話 黄金の日

「楓ちゃん。縛ったら私に真弥を渡して? そこからは得意分野だから」


楓に縛られそうになっている俺を見て、目をトロンとさせ今にもよだれを垂らしそうなのは、露地ひでみ(ろじひでみ)。源氏名『いんこ』。


店内人気は四番目。

黒髪ロングで、鼻筋が高く美形な顔立ち。平均的な身長に、平均的な胸のサイズ、スタイル。


清楚な高嶺の花と言った見た目をしている。

性格も、平均的な……と言いたいところだったが、そうはいかない。


「この場には四人しかいないからさ、このまま犯してもいいよね?」


唇を舌で舐めると、おもむろに着ているメイド服のボタンを外そうとするひでみ。


「やめろこのド淫乱女!」


清楚な見た目だが、ひでみはその反対にド淫乱。

淫乱な痴女なくせして、実は処女というギャップもある。


官能小説をお客の前で朗読したり、その官能小説の内容を、そのままお客や俺にしようとしたり。


他のお客を気にしないで乱れることから、ひでみ推しのお客以外から、お店でも少し引かれることがある。

それが人気四番目の理由なのだが、熱烈なファンがいるため、上位をキープしてる。

ちなみに、源氏名の『いんこ』は淫ら子と書く。これも、俺が思いついた。


この残念美少女たちと同級生であり、バイト先も一緒で親密な関係であるのがこの俺。


学校では、四大残念美少女たちの世話役、なんて呼ばれたりもしている。


……こいつらの飼い主になったつもりなんて一切ないんだよ! こんな面倒くさい雌犬の世話なんかしたくてしてるんじゃないわ!


同級生だしバイトも一緒だから相談役にはなっているものの、あくまでそれはキャストとしてのモチベーションアップや、一応友人という立ち位置でもあるわけであって。


喜んで話を聞いてあげてるわけじゃないからな!

むしろ、モテないとかほざいてるその口を塞ぎたいくらいだ!


「ホント、毎週毎週……この日だけは鬱になりそう……」


机に頭を抱える俺を気にせず、


「私はどうすればモテるのかーって、なおくんに相談してたんだよ~」


「またその話してるの? ま、私はモテるとかどうでもいいけど」


「璃琴ちゃんだって頻繁に相談してるじゃーん。私も有益なモテる方法聞けるまで拘束しおうかな」


「濃厚なことしてあげたら、真弥も喜んで教えてくれるんじゃないのかな?」


四人は会話を続けている。

この性格が終わっている残念美少女たちが四人、ピンポイントで集まり、お店を回すのが、毎週水曜日。

黄金の日と呼ばれる。


他のキャストも居れば、大分俺の心も休まるのだがそうはいかず、水曜だけは毎回どっと疲れる。

お店が忙しいのもあるが、主にこの四人のせいで。


「もうすぐ営業時間だから、気合入れなきゃね」


「あんた、モタモタし過ぎ。ちゃんと働きなさいよね!」


「予約のお客さんのために、縛るための紐、準備しないと」


「今日は何人食べれるかな? 絞りとってあげなきゃ」


毎週水曜日だけ、何かしら問題が起きるこのコンカフェ『MIX』


「今日は何も起きなきゃいいんだけどな……」


今日の営業時間を生き延びられるか心配な俺は、また深いため息を吐くのだった。




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コンカフェで働いてる残念美少女たち、モテたいそうです もんすたー @monsteramuamu

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