入学式・Ⅳ

「す、すみません、おく、遅れました。」

息を荒げながらかけてきたその人は手を膝につき呼吸を整えてからこちらに向き直った。

「えっと、はじめまして!三年、洞窟クロッシェエルデ・ロイスです。皆さんの特進授業の案内役です。至らないところもあると思うけどよろしくね。じゃあまず自己紹介してもらおっかな、名前だけでいいからね。まずはそこの君から。」

そう言ってアルベ先生の脇に立っていた子の方を見た。その子は自分の番とわかり名乗った。

「アルス・フォルエです。」

すかさずエルデは反応した。

「おお、フォルエというとアフェリア卿の御弟子のライデ・フォルエの弟子ですか?」

アルスは驚いたような顔をして答えた。

せんせいを知っているんですね。」

「はい!私は属性テレスレセなのでアフェリア卿やその御弟子様方の文献は読み漁っているんです。」

ニコとアルスに向かって笑むと次はわたしの隣にいたテウスに向かって言った。

「ささ、お名前は?」

「テウス・アーデルフェントです。」

「アーデルフェントというとああ、兄弟揃って入学してきたという。」

「ええもちろんです。『今度入学してくる一年の中にな俺の弟弟子がいるんだ。しかも兄弟2人揃って!兄のテウスは特進授業を受けるそうだ。あいつは賢いからな、きっと将来大成するぞ。みんなも俺の弟たちを見たら気にかけてやってくれよな!』と休暇前に何度も大声で言っていた奴がおりまして、確か名前をオリウス・アーデルフェントでしたっけ。」

「オリウス兄さんだ。そうか、3年生だから。」

「ええ、私のクラスメイトです。元気が有り余るところが少し厄介ですが。」

はあと笑みとため息を混ぜ合わせてから、エルデは私の方を向いた。

「さあ、最後の方名前をどうぞ。」

「アリア・リナです。」

「おお、貴方が大魔法師様の!ふふ、とはいえここに通う以上皆、等しく生徒ですから。分からないことはぜひ聞いてくださいね。」

それから皆の方を向き教室に向かうと言った。そして先生たちと別れ、歩き出したのは案内板に【2年生棟】と書かれた方向だった。

そしてついたのは潜鼠もぐりねずみと書かれた札のある部屋。つくりは先ほどいた水晶アテの教室と変わりはなく少し広いくらいだった。

「ここが特進授業を受けている生徒のための教室です。ここの教室は1〜5年生の特進授業を受けている全ての生徒が利用しています。今は貴方たちを含めて10人。それと特進授業を受けていた6年生4人が時々顔を出していたりします。特進授業の教室は空いてる教室を使っているから毎年変わったり変わらなかったりするの、6年生棟は空き教室が多いけど一年生棟からはだいぶ離れてるからいつもなるべく2、3年生棟の空き教室にしてるんだ。私が入学した年の特進授業の教室が6年生棟でね、毎日走り回ってたよ。」

懐かしむような表情のあと、こっちについてきてと教室の後ろの方に歩いて行った。

「自分のクラスにもあったと思うけど名前が書いてある所があなた達の棚だよ。特進授業で使うものはここに置いておいた方が良いと思うよ。この教室は去年から使ってるからね、見たまえ先輩たちの棚を、これがカオスというものさ。とかっこつけてた奴もいる。まあそんなことはさておき、授業についての説明は明日の1時間目からあるし、あまり話すこともないんだよね。何か質問あるかな?」

わたしたち3人は黙り顔を見合わせた。

「無いようだね。それじゃ今日は解散で!帰り道は分かるかい?私はこれから他の用があるから、気を付けて帰ってね。それじゃ!」

とエルデ先輩は早足で教室を出て行った。

教室に取り残された私たちは再び顔を見合わせた。するとテウスが言った。

「今日はなるべく早く帰るようにせんせいに言われてるから、僕はもう帰るね。アリアさんとアルスさんは?」

「私ももう帰ります。もう今日の用事はないので。」

私が口を開くのを躊躇っていたらアルスが先に言った。そして私もこの後の予定を話した。

「私は、せんせいにひと通り終わったら学園長室に行くように言われてるから。また明日。」

「うんまた明日。」

テウスの返事とアルスの頷きをみて私は事前に教えてもらった学園長室に向かった。

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aria 皐月 @gogatu5

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