入学式・Ⅲ

「オリエンテーション期間では、来月から始まる通常日課と違って、授業が一日2時限だけとなっています。内容はそれぞれカリキュラムに記されています。あ、そうそう、カリキュラムの冊子や教科書などは、皆さんの家の方に配送されますので、家に帰ったら必ず確認してくださいね。話を戻しまして、学園では一日が4時限の授業と1〜2時限の研究で構成されています。オリエンテーション期間では1時限目と2時限目の授業を受けて、残りの時間は自由時間になっています。自由時間では手の空いている教師たちによるエリア別学園探索のツアーがありますので興味のある方はぜひ参加してくださいね。もちろんお一人や友人と学園探索をしてくださって構いません。その場合近くにいる教師や看板などの指示には従うようにしてください。授業についてはその日登校したらメインホールの掲示板を確認してください。自分の受ける授業を探して、教室を確認してください。たまに授業が中止になったり、時間の変更などがあったりするので、必ず確認するようにしてください。研究の時間は通常日課が始まってさらに1月後から始まりますので、この事については、オリエンテーション期間が終わったあとにまた、説明がありますので安心してください。それからこの教室は水晶アテの教室となりますので、暇な時やご飯を食べたり勉強したりする時、自由に使ってください。後方にある棚に名前が貼ってあるので、自分の棚は自由に使ってください。また私に連絡があるときは、白板に書置きをお願いします。一日に1度はこの教室を訪れますので運がよければ出会えるかもしれません。」

一息つきニコと笑ってウリエせんせいは続けた。

「と、まあ、色々話しましたがほとんどのことは冊子に纏められて教科書などと共に皆さんの家に届けられているんですけどね。それはさておき、実際生活してみなければわからないことがほとんどですから、分からないことが見つかるたびに相談してくれれば喜んで答えますので、よろしくお願いします。長々と話してしまいましたが、今日はこのあたりにしておきましょう。また明日始業時刻に間に合うよう、登校してくださいね。それでは、また明日。」

ウリエ先生が微笑むと、もうすでに荷物をまとめていたエリネが音を立てて立ち上がりばたばたと教室を出て行った。私や他のクラスメイトも帰る準備をし始めると、

「あ、テウスとアリアには少し話があります。ああ、荷物をまとめてからでいいですよ。」

ウリエ先生が声をかけてきたので返事をした。

テウスはアレウスに先に帰るよう言っているようだった。

先生の言う話とは多分特進授業のことだろう。と思いながら荷物をまとめ先生の元へ向かった。テウスはアレウスを送り出し私の横に来た。

「揃いましたね。御二方は特進授業の受講生なので明日から始まる授業のために説明があります。まあ、殆どのことは私ではなく3年生の先輩が案内役として説明してくれるんですけどね。それでは行きましょうか。」

そうして私たちは部屋を出て歩き始めた。何処かへ向かう途中先生は話し始めた。

「今期の特進授業の受講生は水晶から二人、鉄砂から一人います。これから鉄砂の子と3年生の先輩と玄関ホールで合流して、そこからは3年生が案内してくれます。何か質問はありますか?」

私は気になったことが無かったので口をつぐんでいたら、テウスが質問をした。

「受講生が三人というのは少ない方何でしょうか?」

「うーん、特進授業は実は誰でも受けられるんだよね。でもその生徒のせんせいによる申請が必要なの。特進授業は受ける事よりもその過程を修了する事に意味を置いているから、もし特進授業を受けてもすぐ挫折してしまったり特進授業を受けるに届かない子を、あまりに受けさせているせんせいは、周りから冷ややかな目で見られることも少ないの。そのようなせんせいは監査の対象になり魔法師としての除名処分も、受ける事になる。」

「つまり弟子に見合った教育を受けさせるのが大切だと言う事でしょうか?」

「そう、基本的にこの学園に入学できるくらいの子ならほとんどが1年生の授業を受ければ十分なのよ。でもその学年に何人かは一年生の授業が合わない子もいるからね、多い年は10人超えるけど少ない年はいなかったりもするから、今年は少ない方なのかなぁ。」

そんなことを話しながら私達は玄関ホールに着いた。玄関ホールの連絡白板の前で話をしている人が2人いた。彼らはこちらに気づくと歩いてこちらの方へ歩いてきた。私達も彼らに向かって行った。

「ウリエ先生お疲れ様です。」

背の高いウリエ先生と似たような服を着た人がウリエ先生に話しかけた。

「お疲れ様です、ウリエ先生。」

「お疲れさまです、アルベ先生。3年生の子達はまだ来てないんですかね?」

「そうなんですよね、でもまだ定時には少し早いですし、待っていましょうか。」

そうして私たちは案内役の3年生を待つこととした。

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