入学式・Ⅱ

クラスは事前に知らされていた。全部で5クラスあるようで、私は水晶アテに振り分けられていた。先生たちの呼びかけに従い水晶アテの文字と模様が彫られた看板のある教室に入った。そこにはすでに3つほどの影形かげかたちがあり白板しらいたの方を向いて座っていた。

白板には白板を上にした教室内の長椅子と長机の位置と名前が書かれていた。

左側1列目には 「テウス・アーデルフェント」 、隣中央1列目「アレウス・アーデルフェント」、右側1列目「エリネ・ファエリカ」、前から2列目は空席になっており、左側3列目「テリエ・シファステリ」、中央3列目「ウリアス・オーリトキヤ」、そして最後に右側3列目「アリア・リナ」

教室にすでにきていたのはテウス、アレウス、テリエのようだった。

確認を終えて私は書かれていた席に座った。

少しすると残りの2人も入って席についた。

そのあと一つの影形が入ってきて白板の前に立った、そして白板の右下の箱から布を取り出し空に投げた。すると布は宙へ舞い白板に描かれていたものを消し勝手に箱へ戻った。それを確認してから私たちの方へ向きを変え話し始めた。

「皆さん初めて。第一学年 水晶アテの担任ですウリエ・アレシティリと申します。属性テレスレセこれから一年よろしくお願いします。私は魔法植物歴を担当しています、わからないことがあったらいつでも聞いてくださいね。それでは早速ですが、自己紹介から始めましょうか、まずは互いのことを知らなくてはなりませんから。名前と属性テレスと好きな魔法でお願いします。ではテウス・アーデルフェントを最初に前から始めましょうか。ではどうぞ。」

そう言い終えるとアレシティリ先生が席につくと同時に前列左側にいた人が立ち上がって皆のいる方を向き喋り始めた。

「テウス・アーデルフェント 属性テレスエレ、アレウスは弟です。好きな魔法は、エレ・リサーレ《ほのおのはしら》です。よろしくお願いします。」

再びテウスが座ると今度はアレウスが立ち上がった。

「アレウス・アーデルフェント属性テレスシエ、好きな魔法はエリ・ルナエ《きらめくちょうちょ》。えっとよろしくです。」

アレウスが座ってからすぐに次が立ち上がった。

「エリネ・ファエリカよ。属性テレスサエ好きな魔法はサエ・リサーレ《みずのはしら》よ。まあ、よろしくね。」

荒々しく椅子に着くと、次のテリエがゆっくり立ち上がった。

「ええと、テリエ・シファステリ、です。属性テレスは、レセです。好きな魔法は、えっと、シエ・コーレン《つちにんぎょう》です。よ、よろしくお願いします。」

言い終わってからまたゆっくりと座り直した。そしてウリアスが立ち上がった。

「ウリアス・オーリトキヤです。属性テレスケテです。好きな魔法は、レセ・サエ・エーイア《ちいさなおあしす》です。宜しく頼みます。」

ウリアスが座るのをみて私は立ち上がった。

「アリア・リナです。属性テレスは── 」

少し息を吸ってから、

クオです。」

そっぽを向いていたエリネが目を見開いてこちらを振り向いた。

「好きな魔法は、ケテ・クオ・リナ《まほうのさいしょ》です。よろしくお願いします。」

そう言い終えると間髪入れずエリネが立ち上がり声を荒げた。

「ちょっと待って、クオですって、ケテ・クオ・リナ(まほうのさいしょ)ですって!?ふざけないでちょうだい!属性テレスクオなのは大魔法師様だけのはず。それにケテ・クオ・リナ《まほうのさいしょ》なんて御伽噺だわ!名前のリナだって、それは大魔法師様だけの、姓よね。あなた何様のつもり?もし魔法の理すら知らない不届者ならこの場で私が── 。」

エリネの手のひらに杖が現れた時、教室に声が響いた。

「エリネ・ファエリカ!目に余る行動です。即刻杖を下げねば、[校則三項私闘を禁ず]に基づき、処罰を下しますが、どうなさいますか?」

それは担当師のウリエ先生のものだった。

エリネは少し身を強張らせおとなしく杖を下げた。

「よろしい。事が事ですので恩赦と致しますが、二度目はないと心得なさい。」

「── はい。申し訳ありませんでした。以後気をつけます。」

先程の荒れた様子のエリネとは打って変わってウリエ師に少し頭を下げていた。私には少し悔しがっているように見えた。そんなことを思っていると。

「エリネ・ファエリカ、貴方の戸惑いは理解できます。アリア・リナについては少し説明がありますので、おとなしく聞けますか?」

「はい。早とちりしてすみませんでした。」

エリネは座り前を向いた。私も座ろうとしたがウリエ先生に前に来るよう声をかけられた。

私が前に立つとウリエ先生が話し始めた。

「アリア・リナは正当な大魔法師様の弟子にあたる方です。」

エリネの口に力が入ったように見えた。

「アリア、祈りをしてくれますか?」

「はい。」

私は手を合わせ手のひらに集中した。

少しずつ私の手のひらの間に白いあかりが灯った。

「ありがとうございます。エリネ、おわかりでしょう。貴方の事情は伺っていますが、アリアもまたなんの犠牲も払わずしてこの場に立っているわけではありません。以後は気をつけるように。」

「はい。ありがとうございます。以後は気をつけます。」

エリネが俯き黙ると私は先生に席に戻るよう促された。

あっけに取られている他の4人を見て先生は話を続けた。

「この学園には様々な事情や都合を抱えた魔法子がたくさん通っています。皆さんもそのひとかけらです。過度な質問や干渉は時に相手を傷つける事があります。ですので適度に不干渉でありたいと私は思っています。これからたくさん出会って別れるでしょうから、少しずつ自分と相手のちょうどいい距離を探して行ってくださいね。」

「それでは、説明に戻りたいと思います。新入生は明日から今月いっぱいまでオリエンテーション期間になります。」

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