生贄

スロ男(SSSS.SLOTMAN)

——サクリファイス——

 犠牲、と聞くとにえのイメージが強い。

「○○は犠牲になったのだ」という、アレ。元ネタなんだったんだっけ、……と調べるとナルト。そうだった、あの頃、私は人生で通算三回目だかのジャンプ断ちをしている頃だった。(現在、五回目、ぐらい。はからずも継続中)


 犠牲、サクリファイス、サクリ——サクレ、というアイスがあったが、それとは関係なく、おそらくこれはラテン語の「聖なる〜」から来ている語なのだろう。セイクリッド、サクラダファミリア、サクラくれぱす……。


 Sacraの木の下には死体が埋まっているという話もあった。その死体を贄として、桜は咲き誇る。そして散り際の美を見せつける。日産のサクラは、リーフを経て、いまこそ咲き誇って、まだまだ散る気はないだろうけれど——。


 しかし、そんな雑多な想起よりも、まず思い浮かべるべきは早贄はやにえだろう。

 百舌鳥モズの早贄。

 百も舌のある鳥が、いざというときに備えて、早めに贄を用意し、枝にブッ刺しておくのだ。千も手があれば観音なのだから、やはり百も舌があれば神とか仏とか、その類いだろう。狐なんて九本の尻尾如きで国を傾けるのだ。

 早贄として用意された贄は、脇腹や何かを槍でぶっさされながら死ぬ。いや、死んだと思われて、九相図くそうずのようには観察されないまま、放り置かれて、忘れられる。忘れないのは裏切って、たかだか銀貨三十枚で売った男だけで、そうして忘れられた頃、贄は復活し、自分の覇道を突き進むことになるのである。

 それが実は贄の弟イスキリであるとか、実は死にきれず日の本の国に流れ着いてそうして亡くなった等は瑣末な話だ。


 犠牲にはロマンが詰まっている。

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