いけいけ勇者様84

最上司叉

第1話

【ガサガサ】


「まだか?」


「方向はあってます」


【ガサガサ】


「!」


勇者と城にいた魔法使いが止まる。


「これは勇者様ごきげんよう」


「誰だ!!」


黒装束の男だと思われる怪しい奴がいた。


よく見ると黒装束の男だと思われる奴の足元にあの方が転がっている。


「死んでるのか?」


「?あぁ、無能だったので始末しました」


「!!」


「そんなことより勇者様に是非ともお会いして頂きたい方がいます」


「断ると言ったら?」


「勇者様にその選択肢はございません」


「なんだと!」


「仲間たちと国の人間がどうなっても宜しいのですか?」


「!!卑怯な!」


「なんとでも、さあこちらに悪いようには致しませんので」


勇者は疑いながらも黒装束の男について行くしかなかった。


「勇者様!!」


「大丈夫だ」


一緒にいた魔法使いにそう言い残し勇者と黒装束の男は消えた。


そして1週間後勇者は仲間たちと住む家に帰ってきた。


「あっ…!!」


「魔王…」


「敵に連れて行かれたと聞いて」


「大丈夫だ…」


「良かった」


魔王は涙ぐんでいる。


勇者は魔王を優しく抱きしめるとおでこにキスした。


「!!」


魔王の顔はみるみる赤くなり俯いてしまった。


「…どうしたの?」


「魔王…」


「うん?」


「これでサヨナラだ」


「え…!!」


魔王はビックリして顔を上げ心配そうに勇者を見ている。


「大丈夫だ」


勇者はそう言いながら魔王の頭を撫でる。


魔王は訳が分からない。


そして勇者は仲間たちに別れを告げて国を出た。


「ありがとうございます」


勇者は黒装束の男に話しかけられ睨んだ。


「今後はせいぜい大人しくしててください」


「約束は守るんだろうな?」


「ええもちろんそのつもりです」


「…」


勇者は歩き出しどこかの国の小さな小屋に身をひそませた。


勇者は小屋で暮らしながら黒装束の男に連れていかれた国であった出来事を思い出していた。


あれは


「よくぞ参られた勇者殿」


「誰だ?」


周りの側近達が腰の武器に手をかける。


「静まれ!」


立派な椅子に座った男がそう一言発すると周りは大人しくなった。


「余はこの国の王だ」


「!!」


勇者はこいつが全ての元凶かと立派な椅子に座った男を睨む。


「これは愉快だ」


「?」


「余を倒せると思っているのか!」


【ブンッ】


立派な椅子に座った男が立ち上がり剣を振った。


【ドンッ!】


勇者は風圧で吹き飛ばされた。


「グハッ!」


「身の程を知れ!!」


「…」


「余からの命は1つだ!今すぐあの国と仲間を捨てて出ていけ!!」


「…」


「どうした?返事は!!」


勇者は今の自分では勝ち目がないと思い従うしか無かった。



残された勇者の仲間たちは勇者の帰りをしばらく待っていたが帰ってくる様子がないため1人また1人と家を出ていった。


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