第4話 やきう民の彼氏くん、球場デートを敢行



「野球見に行くぞ〜」



梅雨どきなのにやっぱり晴れた7月某日。

今日もまた、ちょっぴりウザい私の彼氏が、私を遊びへと誘ってきた。



「な◯jに行くのか?」

「ネットの世界じゃない」

「プ◯キやるのか?」

「サービス終了しただろ」

「じゃあ何なんだ」

「リアル野球だよ」

「リ◯ル野球BAN?」

「石◯貴明も野球の上手い芸人も出ねぇよ。てか俺らは芸能人じゃねぇから出れねぇに決まってんだろ」

「リトル野球?」

「俺らもう子供じゃないだろ」



「でも10年後くらいには2人で見に行くだろう」



「―――は?」

「…………あ」

「…………もしかして、俺との子どもが野球始めて一緒に見に行くという………」

「黙れ。一緒に野球見に行ってやるから全部忘れろ」

「…………アッハイ」



なんかとんでもない爆弾発言をしてしまった気がするが、これは悪い夢なので気にしたら負けだ。

まあ今日はやること無いし、一緒に行くとするか。



「いやー今日偶々な◯jで過ごしてて。勢い余って2人分のチケット取っちゃった」

「なんjで過ごすってなんだよ」


「『嫁の可愛いところで打線組んだwww』ってスレ立てたせいなんだけど」


「誰が嫁だ。まだ結婚してないぞ」

「案の定ボロカスに叩かれて」

「何故に?遊我はともかく私に叩かれる要素ある?」

「おい」

「それで、何を言われたんだ?」

「美涼のことを自慢してスレ民にマウント取ってたら、『友達居なさそう』『自信だけが肥大化した面倒な奴』『お前プライド高いだろ』などと言われた」

「……………言えてるw」



ネットってすごいなぁ。会ったことなくても人の本質見抜けるんだもんなぁ。


あと目の前のオタク君、君は全く反論できないからね?被害者ヅラはやめようか?



「何で納得するんだよ!?」

「だって遊我お前、まともな友達居ないだろう」

「…………」

「実家の本棚に中二病全開の『俺は凄いんだ名言集』隠してたのバレてるぞ」

「…………」

「『俺はコイツらと生きてる世界が違う』って公言してたせいで大学の同窓会呼ばれなかったじゃないか」

「…………だから何ですか」

「いや、やっぱりお前は私が居ないと駄目だなと。そうしないと孤独死する羽目に………」

「そんな消極的な理由で付き合ってたんですか!?」



いやそんな訳ないが?ちゃんと積極的な理由あるが?お前が好きな理由とか幾らでも並べられるんだが?




「…………//」



「そこで照れるのは違くないか!?意味が変わってくるんだけど!?」

「遊我頭良いんだから察してくれよ………//」

「あぁ………俺にベタ惚れしてくれたから付き合ってくれてると思ってたのに…………」

「いやほんとに察しろよ」














「やきうの時間だァァァァァァァ!!」

「うるさい」

「ンゴwwwwww」

「おい、ここの球団って確かド◯ンゴが炎上した時に所属してたチームじゃないか」

「あれは紛れもなく悪夢だった」

「はあ」

「けど今年は違うゾ☆」

「それいつも言ってない?なのに秋には『やっぱり駄目だった』って毎年言ってるだろ」

「…………君のような勘の良いガキは嫌いだよ」

「私ガキじゃないもん」

「急に口調が子どもになった」

「大人のレディだもん!!」

「あらま、美涼ちゃんは可愛いねぇ〜」



という訳で、電車に揺られて30分くらい。

市街地のちょっと外れにある球場に、私たちの姿はあった。



…………ヤンキーと美人のカップルがンゴとかやきうとか言ってる稀有な光景のせいで、周りからチラチラ見られてるけど。たぶん気にしたら負け。



「ホーム側の外野席取ったから、ひとまず席座るか」

「試合開始まであと何分?」

「ちょっと待てよ…………15分くらい?」

「じゃあ、ちょっと私に付き合ってくれ」

「あっこれまずい1年前も見た流れだ」



そして、入場ゲートを通過した私は、一目散にとある目的地へと向かう―――











「店員さん。とりあえずビール3杯とフライドチキンとハンバーガーを…………」





「最初から飛ばすなよ!!野球見ろよ!!」

「私は花より団子。野球よりビール」

「選手たちのプレイを見ろよ!?それが野球人のプライドだろう!?」

「プライド高いなぁ遊我は。だからな◯Jで叩かれるんだ」

「それとこれとは関係無くないか!?」

「そもそも遊我、野球人って言ってるけどお前の部活って何だっけ?」

「…………中学卓球。高校帰宅部」

「どこに野球人要素があるんだ?」

「日々な◯Jでヘマした選手をネタにしてるぞ!?」

「クズだ。そんな奴が野球人ぶってるの草生える」

「いいだろ野球に興味があるんだから!?」

「じゃあ野球をつまみに酒を飲む私もセーフということで」

「…………ぐうの音も出ない正論」

「はい論破」

「…………さーせん」

「私を誹謗中傷した罰も受けてもらおう」

「ご勝手にどうぞ………」

「店員さん、アイスも追加で♪」



そして私は、ニッコニコでアイスとビールを受け取り、遊我にその他全ての食材を持たせる。



「ありがとう、荷物持ち♪」

「楽しそうでいいですね」

「お前は楽しくないのか?私はもう既に楽しいぞ」

「…………ならいい」

「何だよ、そのトゥルーエンド迎えましたみたいな顔は」

「いや、初めて2人で来た時のこと思い出して―――」











『プレイボール!!!!』






「「あっ!!!!」」





どうやら、いつの間にか試合が始まっていたらしい。

私達は小走りでスタンドへと向かう。




「まあでも、最初は敵チームの攻撃だろう」


「いやしかし、俺の好きな玄人好みの軟投派ピッチャーが先発なんだよ。無失点記録も継続中、初回の立ち上がりも良いし、ぜひ見ておきたい」


「じゃあ急ぐしかないな」




そして、階段を上り、開放感のあるスタンドへと到着する―――








『ホームラン!!!!』




「「―――えッ」」





遊我の推しピッチャー、なんか先頭打者ホームラン食らってるんですけど。

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クールダウナーな彼女を愛でてたら、いつの間にか駄目人間になってたんだが 棗ナツ(なつめなつ) @natsume-natsu

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