第3話

辺りが暗くなっていく。そう、今宵は僕達あやかしの宴日。

人々は今日を”ハロウィン”っていうらしいけど、僕にとっては楽しい宴の日。

だって今日は、あやかしが見えない人も、みーんな、僕達のことが見えるようになるのだ。春兄様曰く、あやかしが居る空間…彼岸と、生者が居る空間…此岸、この2つの空間の境目がなくなって人もあやかしも入り混じってしまうんだって。だから、僕達…いや、他の子がそうかは分からないから、あれなんだけども…僕はこの日、境目が消える日に人を驚かしてあま~いお菓子をもらうの楽しみにしていたんだ!

まぁ、あやかし界に限らず、あやかしの存在を知っている陰陽師の人たちが目を光らせているからやり過ぎはできないんだけどね……。


なんて、一人で考えながらはやる気持ちを抑えてはどんな仮装をしようかな?とわくわくしながら準備をする。その時だった。

「猫葉?ほんとうに人里に降りて祭りを楽しむのか?」

後ろから抱きしめられたかと思えば、どことなく心配そうな寂しそうな感じでそんなことを言われた。それも、そのはず。今日は僕一人で人里に降りてハロウィンを楽しむ予定なのだ。なんでも、春兄様は神社の仕事があるとかで忙しいから行けないらしいのだ。だから僕一人で行くんだけど……、


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ?」


「いや!心配になるから!俺も一緒に行けるわけじゃないし、一人でなんて行ったらナンパされちゃうっっっ!!」


「春兄様、流石にそれはないと思う。」

うん。何言っているのか全然わかんない。いくらあやかしと人が区別できなくとも、こんな子どもっぽくて可愛くもない子にそんなことする??

「でも、、、」

「もう!なんかあったらすぐ帰るから、それなら安心でしょ?」

「全然、安心じゃない!!」

ギャンと叫ぶように言ってはひしと腰にしがみついてくる。うん、うるさいし離れてほしい。でも、まぁ、嫌ではないんだよな、。

「はぁ、もう、それなら早く仕事終わらせてよ。じゃなきゃ神社でもできないでしょ。」

要するに行かないから、神社でハロウィンやろ、って意味合いで言ったんだけど…流石に伝わりにくいかな?なんてしがみついてくる春兄様の頭を撫でながら聞いてみる。もう少し素直に言えたならいいのだけども調子に乗られても嫌だな、ってことでこの言い回しになってしまった。


「…人里行かないでここに居てくれるってこと?」


流石、なんて褒めたくないけどもやっぱり春兄様は僕のことをなんとなくでも理解してくれている。だから、意味も分かってくれる。そういうとこ好きだよ。


「居るから、ちゃんと神社でもハロウィンやってよね。」




今日もなんだかんだで平和な日常になりました。

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化け猫の夢 ねるもち‪🌱‬ @nerumoti_18

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