第2話
春といえば、お花見。と言うわけで僕は桜並木がきれいな山道へと向かった。
仕方ないので春兄様を誘って行ったのだけど、なぜかずっと僕の手を掴んで離してくれなかった。理由を聞いても曖昧な返事しか答えてくれなかった。いつもならヘラヘラと笑って”好きだ”とか”愛してる”とか”俺の嫁でしょ”って太陽みたいな眩しさを感じる笑顔で言ってくれるのに、。今日はただ黙って手をつなぐだけ……。
寂しい、なんてバカみたいな感情が出てくる、いつも、毎日、会う度にどれだけ僕が違うって言ってもやめなかったのに、どうしてなんだろ。なんとなく続いた沈黙もどことなく寂しさを感じるこの空間も、なんだか嫌になりそう。
「え、ね、猫葉?泣いているの?」
立ち止まった春兄様が僕の顔をみて驚いていた。
「へ…?泣いてなんか、、、。」
そう否定したかったのに視界いっぱいに溜まったなにかが伝い頬を濡らしていくのを感じできそうにもなかった。どうやら、僕は泣いていたらしい。普段人前で泣かない僕が泣いたものだから春兄様も驚いたのかな、。でも、なんで泣いてしまったのかが分からなかった。
寂しかったから?
春兄様が何も言ってくれなかったから?
いつもと違う春兄様だったから?
多分、全部なんだと思う。ああ、こうやって考えると僕は春兄様のことが好きなんだ、と自覚せざる終えなかった。
悶々とそう考えていたら視界が真っ暗になった。それと同時に大好きな匂いがした。
そう、春兄様に抱きしめられていたのだった。
「なぁ、寂しくて泣いちゃったのか?」
図星だった、。まさかそこまで分かると思わなかったから動揺してしまう。
でも、なにも言わないというわけにもいかなくただ無言で頷くしかなかった。
「そっか、寂しかったかー」
からかうように春兄様は笑って僕の頭をわしゃわしゃっと撫でてくる。
この手のぬくもりが僕は好きだった。さっきまで泣いていたのが嘘みたいに泣き止んでしまった。このぬくもりが逃げないよう、僕はぎゅっと強く春兄様を抱きしめる。
「春兄様のバカ…なんでいつもより冷たいの、。」
じっと見つめて問いかけると、春兄様が目線をそらす。そんなに答えられないこと、なのだろうか。
「…押してだめなら引いてみろって、言われたから?」
「は??」
何を言っているのだろうか、引いてみろ?恋愛でよく聞く言葉ではあるのだけど…
それを実行されていたとは思ってもいなかった、。でも、僕がなかなか返事をしなかったからかな、。
そうだとしたら申し訳ないかも…。
「ねぇ、春兄様。僕はちゃんと春兄様のこと大好きだよ?」
そう真っ直ぐと伝えると春兄様はぽかんとした表情で僕を見つめてくる。
「普段は恥ずかしくて言えないけど、でもちゃんと好き、だからね、。」
それを聞くと春兄様はぱぁっと表情を明るくさせてはまた、ぎゅっと僕を抱きしめた。そして一言、
「俺も猫葉が大好き、愛してるよ」
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