化け猫の夢

ねるもち‪🌱‬

第1話

 みんなはあやかしって知ってる?そうそう、妖怪のことだね。

僕も、もちろん知っているよ!


ーーーだって僕、化け猫だもの。


 春の暖かな日差しが心地よい。そんな日はお散歩に限ると思い、出かけた。そこまでは良かった。一人で何も言わずに出かけたはずなのになんでこいつが居るのだろう。僕の視線の先に居たのは草原に寝転がっている、九つの尻尾を持つ九尾の男。ことあるごとに僕を婚約者だの嫁だの言う、そんなやつが今!目の前に居るのだった!

見つかってしまう前に帰ろう、そう思い踵を返そうとした時だった。

ーーー身体が動かない。

金縛りというやつだろう、ここから察するにこの金縛りを発動したのは唯一人。

「…春兄様、金縛り解いてくれません?」

後ろを向けないのでそのまま背後にいる馬鹿な男に声をかけた。”いやだね”と否定が聞こえるとともにむぎゅっと抱きしめられた。

「今解いたら、火球飛ばしてくるだろ?」

「解いてよ。」

「ヤダ、キケン。」

”解いて”とお願いしても聞く耳持たず。そんなとこも嫌いではないけど、誰かに見られる前に離れていただきたい。こうなったら嫌だけどもアレしかない、。奥の手といううやつだ。

「逃げたりしないから、解いてほしいな?」

きゅるるんと効果音がつきそうな甘ったるい精一杯の猫撫声でおねだりをする。春兄様はこれにめっぽう弱いのだった。ほらこんなふうにデレっとして、ちょっと心配になってくるな。

「し、仕方ないなぁ!今回だけな!」

ふぅ…こんなチョロくて大丈夫なのだろうか。他の子にもこうされたらデレるのかな、。

ーーーモヤモヤする。

そんな事を考えているとは春兄様は露知らず、術を解いてくれた。ついでに離れてくれたけど、今離れられるのは嫌だ。そう思ったからか身体勝手に動いて気付いたら春兄様のことを抱きしめていた。

「え、あの、猫葉さん??」

今まで僕から抱きしめられることがなかったからか、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔している。そんなに驚かなくてもいいだろうに、。

「…どうしたんだ?」

「別に。」

言いたくない、理由が嫉妬したからだなんて口が裂けても言いたくない。実際起きたわけでもないのに勝手に想像して嫉妬とか、良くないだろうし、。心のなかに留めておこう、そう決めた時だった。


「もしかして、俺が他の子にもチョロかったら、なんて思った?」


図星だった。普段はへらへらしているくせにこう言うときに限って鋭いのやめてほしい。

「…そう、だけど。なにか文句ある?」

隠し通すことはできそうになかったのでそっぽを向きながら答えてしまった。

「ふは、かわいい。」

春兄様はふっと笑った。その笑顔は太陽みたいで明るかった。

「俺は猫葉にしかチョロくないよ?」

…春兄様はいつもほしい言葉をもらうな。

「ありがとう、。」

「ん!どういたしまして!」



こんな日常が僕は好きだな___

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