消えてしまった者・・・
ネエアス
絶望
簡単な仕事だった。
聖女と共に周辺の浄化作業をする簡単な仕事だった。
周りには多くの騎士も居た。
簡単だったのにそれは現れ疎んでいたアレを貪り、砕けた。
口煩い者だった。
それでも私の婚約者として幼き日から側に居た者、それが私を庇い事切れた・・・・。
ここ数年笑うアレを見ていない、なのになのに、何故笑う?何故微笑む貪られて微笑み力を使い砕けたアレの姿・・・
もっと大事にすればよかった。
何でも努力してるアレに嫉妬して冷たくするんじゃ無かった。
私はアレと何時話した?目の前で事切れ魔物を道連れにして守ってくれたアレは聖女を虐める者ではない
「アリュー・・・すまない・・・すまない・・」
アリューの命と引き換えに生き延びた私、本来守らなければいけないのに・・・・
父も母もアリューを称え、私の婚約者が聖女と変わった。
「殿下、わたくしとても嬉しいですわ」
「私も聖女殿と婚姻出来ることが嬉しく思います」
私のせいでアリューは亡くなった。私が間違えた。アリューアリューすまない、不誠実な男の私ですまない
聖女との婚礼も済ませたが私の心にはアリューが居た。私は幸せにはなりたくない、アリューの命の上の幸せなど・・・
「殿下、私達のお子です。是非撫でてくださいませんか?」
「あぁ、聖女殿この子は大切な私達の子だ、大事に育てよう」
何故聖女はアリューの事を言わない?悲しまない?虐めの証拠は無かった。アリューアリューすまないお前を裏切ってすまない
「とーたまー」
「おぉ、どれ・・・重くなったな」
聖女に似たこの子は次の王になる。私と同じ間違えをしないように教えないとな、例え政略結婚でもアリューの様に心を通わせられると・・・私は間違ってしまったが・・・
アリューが亡くなって早7年、アリューの眠る墓に足を運ぶと泣けてくる。ここにはアリューの小指一本しか埋葬されてない
アリューは何処にも居ない、魂も砕けてしまった。禁忌魔術で私を助けてくれた・・・
愚かな私のせいだ。
「アリュー・・・愛してる・・」
嘆いても次の日は来る、アリューに助けられた命を無駄にしたくはない王太子の仮面をかぶり、聖女となった女を愛する真似をする。
アリューの言葉を信じなかった私のせいだな・・・・
日を追う事に私の子では無いのが見て分かり、第二王太子妃を娶った。
彼女はアリューと仲良かった者だ
「・・・殿下、アリュー様の事を今でも思ってるくださいますの?」
「そなたには酷だろうが・・・アリューを喪って初めて・・」
「苦しまないでくださいませ!アリュー様も悲しみますよ。殿下殿下、アリュー様も想いが通じて嬉しく思ってますわ!私は愛する殿方がおりませんのよ、ですからご安心を、ふふふ」
「すまない」
正式な跡継ぎが出来るまで半ば監禁生活をさせてしまったが不自由しないようには手配しておいた。
12年経ってやっと念願の跡継ぎが産まれたそれも二人、これで彼女の義務は終わる
「すまない、まさかおなごが3人続くとは思ってなかった。辛かっただろ?ありがとう」
「いいえ、大丈夫ですよ?私体力はありすから!ただ・・その・・」
「双子の災いだな、此方でどうにかする。警備も厳重にしておく、アリューならきっとそうしてたはずだ、ゆっくり休め」
アリューを愛する心に寄り添ってくれる彼女に改めて礼を言い、可愛い娘達に会いに行く。
アリューに叱られるからな、アリューは側室が出来ても私の子なら皆可愛いと言ってくれていた。
あぁー・・今さらだが思い出したアリューの好きな花シロツメクサ・・・彼女にお願いして宮の一部に植えるか
幼い頃シロツメクサで冠を作り私の頭に乗っけ
『りっぱなおーさまになってね!だーいすき!』
頬が暖かなる、幼いアリューからの初めての口付け、それが最初で最後だった。
恥ずかしかった、同い年でも可愛いアリューの白くて丸い頬に返せなかった。
照れが次第に嫉妬し嫌悪した。
冷たくした。
邪険にした。
笑い者にした。
それでもアリューは私を守る為に・・・亡くなった。
『殿下、良く見てください、彼女の行いを・・』
すまない、ちゃんと見なくてすまない、聖女とは名だけの娼婦の様な女は毎晩他の男達を招き入れ、贅沢をする。
すまないすまない、私がちゃんと見てれば前に出た聖女を庇う事をした私の犠牲にならなかったはずだ。
そもそも、あの浄化作業は聖女からの依頼だった。
足手まといな私や側近達やアリューが居なければあのような事故にはならなかった。
夕食にでたガルボ肉のミルクシチューはアリューの好物だ、嬉しそうに食べて何時もよりマナーが大雑把になるアリュー、それを見てると苦手なミルクも美味しく食べられた。
久しぶりに出たガルボ肉のシチューに涙を流し、私の前では禁止した。
可愛い子供達も大きくなり安心してたが、聖女の贅沢に知らぬ子供達、流石に放置し過ぎた。長男を一応残して他は遠い領地に追いやった。
「父上、どうして母上を北の地へ?母上は聖女ですよ?」
「・・・お前に辛い思いをさせたくないが不貞だ。お前も私の子では無いが・・・」
「父上!!!」
「聞きなさい、お前の事は可愛い、だからすまないが自ら廃嫡をしてくれ、すまない、守るためにはこれしかない、あの子達が正当な後継者だ」
「・・・父上」
「謀叛は許さん、するときはお前が死するときだ」
「・・・父上・・・私はだれの・・・」
「・・・もう貴族ではない、お前を可愛がってるお方の息子だ、とだけ言っておく、弟達を守ってくれ」
「・・ハイ」
ダメなら・・・・やるしかないな、だがすまないアリュー、私にはこれしか思い付かないのだ
深く息を吸い吐く、ハァハァと目の前に大きな魔物を手を降り上げて裂ける口から見える鋭利な牙、大きく開き襲ってくる、その時咄嗟に横に居た聖女を守るべく身を丸めさせるが次の瞬間ゴキュっとゴリゴリと嫌な音がするものの私には痛みがなく、そろりと魔物の方へと目を向ける
「アリュー!!!!!!」
首から下を食われたアリューの姿、笑みを浮かべ私へと伸ばされる手、その手を掴みたくって動く足は力が入らずヨタヨタとして護衛騎士に捕まりそれ以上前に出れなかった。
弱い自分が嫌いだ。この時の自分は弱すぎる。だからアリューを死なせた。
『お幸せに、殿下お慕いしております』
「アリュー!!!!アリュー!!!!!!ああ゛ぁーーーーー!!!アリュー、君が全てだ。すまないすまないアリュー愛してる」
夢を見る何度もアリューの死を、そして自分の過ちを、君が私の名前を呼ばなくなったのは何時からだ?
アリュー、私は間違ってた・・・・。
双子の長男が育ち王太子になる頃、役目を果たすべきとして継がせるために踏ん張り、彼女には色々と世話になった。
「陛下、ありがとうございます。私、好きな殿方が年上で既婚者のです。ですから陛下、王妃と言う位を持てて良かったと思っておりますよ。それに、アリュー様もその・・・・」
「何だ?申してみろ」
「・・アリュー様が生前私に・・その報われないのなら陛下の側室にならないかと、アリュー様も知らないものより・・・・その、陛下を愛してない私だと安心だと・・」
「・・・アリューが?ックアハハハハ!そうだったのか!アリューが!アリューが!嫉妬!でも君には大丈夫だと!!!可愛いやつめ!」
「もー陛下!アリュー様は陛下大好き人間です!聖女様に嫉妬して薬草育てていたのですよ?私の家の領地が適任でまかされてましたの」
「ん?何故薬草を?」
「もー陛下!聖女様は癒しの力をお使いになられますよね?ですので薬草で聖女の力を使わなくて良いよいうにしていたのですよ?」
「・・・そなたは詳しそうだな、王妃の任は溶けぬがアリューがしたかった事に力を貸してくれ」
「お飾りは飽きましたの、謹んでお受けします。」
立派な王となった息子、その横には守るように立つ精悍な姿の聖女の子、自分の役目を考え、時には暴れたが本当の親の祖父が押さえ込み話し合いをしてこの場に居る。
他の聖女の子はこの場に居ない。聖女でなくて上層部には傾国の魔女と呼ばれている。私も一度足を運び彼女を連れてもう一度会いに行ったが酷いものだった。
馬車の中で彼女がアリューが守ったもう1つの命が聖女、彼女は怒り私に暴言を吐き叩く彼女を優しく包み込む、私の変わりに感情を合わしてくるありがとう、腕の中で泣く彼女は小さかった。
「でんか?・・・・その、すみません」
あの顔は今では分かる涙を耐える顔、私と聖女が仲良くしていて口煩いアリューに
『私の一存に文句を言うのか!』
強めにあの時言ってしまった。どのみちアリューとの婚姻は決まってるなら少し、そう思って遊んだ。
口煩いアリューより何でも肯定してくれる聖女、でも間違いだった。アリューは私の婚約者で結婚相手だ。だから良いと雑でも問題ないと・・・綺麗なアリューは消えた、私のせいで
死してアリューは誉められた私と聖女を助けたことに。
でも、それだけだ、アリューはもう、居ないのだから、皆しならない、アリューの魂が砕けた事を・・・
聖女を抱き締めていた私と聖女しかしらない、いや、聖女は地に顔を向けてたから見えて無かったのだろう
アリューはもう、何処にも居ない・・
息子に王冠を譲渡してからお忍びで街にでる。
アリュー、アリューは街を見てみてかったと言ってたな、どうだ?
アリューが何を見て楽しみたかったのかは分からないが周りを見てアリューが好きそうな物を物色してく
アリューは確か小物が好きだったな・・・ただ基準が分からんな・・・ん?この小さい小箱はアリューが好きそうだな
何に使うがわかんけどアリューの好きそうな物を買い満足して足を進める
「おや?酷いな・・・」
老婆の言葉に眉を歪め、言葉をかけると驚いた事に散った魂の一部が私の側にあると
老婆を贔屓にすると彼女が止めるがアリューが戻って来るかも知れなくて私はまた間違えた。
粉々に散ったアリューが老婆に扮した魔物を倒して
『ごめんね次は無理なんだ』
「アリュー!!!愛してる!!誰よりも!いかないでくれ」
完全じゃない姿にすがり付くも温もりも無く消えていく愛するアリュー、ボロボロの姿で私を守るだけに来てくれた愛するアリュー
「あ・・あ・・・アリュー・・アリューアリュー!!!!」
それからアリューの破片を探す旅に出たが僅か3つの小さな破片を
一つはアリューが池に落ちた瞬間の記憶
二つ目は剣術の授業で剣が手から吹っ飛んでいった記憶
3つ目は乗馬が上手く出来ずに父親に怒られてる記憶
どれもこれも見たり聞いたりした。
滑って転んで私と共に池に落ちたアリュー
剣術が苦手と言ってたアリューそれでも頑張った。
乗馬で馬が大きくて怖いと言うアリュー、克服しようとへっぴり腰で馬と合ってた。
たった3つでもアリューが側に居てくれる。
「愛してるアリュー、共に逝こう」
静かに目を瞑ると会いたかったアリュー
『殿下ー今日は私の大好きなピクニックに行ってくれますか?』
「あぁ、もちろん、シロツメクサ沢山生える場所に行こう、愛してるアリュー」
「・・・陛下、アリュー様はもう、ですが・・・・」
「・・母上、陛下が今幸せで逝くならそれほど良いことではないでしょうか?」
「父上、アリュー様を見つけてください、きっと神様が・・・ぅっ・・・神様が・・・」
消えてしまった者・・・ ネエアス @neeas
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