11.
後日。すっかり治り、仕事に復帰すると、まず最初に先輩に小言を言われた。
が、どこ吹く風やらと受け流す。
そうした、いつもとは違う祥也にぽかんとアホ面を見せる先輩を尻目に、今日の仕事をこなしていく。
今までに感じたことのない、仕事のやりがいに顔が綻びそうになるのを何とか堪える。
そうしてあっという間に仕事を終えた後、裏へと行く。
二階へと続く階段は、オーナーの住居でもあり──。
「しょーやさま! おつかれさまです!」
「ああ、ありがとう」
襖を開けるや否や、嬉しそうにしっぽを振るジルヴァの頭を撫でてやった。
その際に触れた大きな耳が、ぴくぴくと動き、可愛らしいとさっきまで堪えていた表情が緩む。
あれから、オーナーのご厚意で祥也が仕事をしている最中は、二階の住居で預けてもらうことになった。
オーナーも仕事をしていて、忙しいというのに、と咄嗟に断ろうとしたが、いつもの穏やかな笑みを浮かべて、
「近くにいれば、玖須君も心配することはないでしょう。それに、孫を見ているようで可愛いですしね」
そう言いながらよしよしと撫でてもらっているジルヴァは、嬉しそうに頬を赤らめていた。
ジルヴァもオーナーも楽しそうならいいか。
「帰ろう」
「はい!」
フードを被ったジルヴァの小さな手を繋いで、祥也達は家へとゆっくりと歩む。
ジルヴァが今日の出来事を一生懸命話すのを、祥也は耳を傾ける。
そんな二人の頭上の空は、晴れ間が見えていた。
それは、今まで雨が降っていた祥也の心を映しているかのようで。
それ以来、心の雨は降ってない。
雨上がりの空の下で笑えば。 兎森うさ子 @usagimori_usako
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