潮騒の泣き声

中嶋港人

潮騒の泣き声

サンダルを水に浸してあるくときこれでいいって誘う潮騒


いつかっていつなんですか今きみに貫かれたい身体だけある


きみの好きなところその一、もし僕が死んだら泣いてくれそうなとこ


帰宅時にする音すべて好きだった 出ていくときも似た音のする


好きなだけ泣かせてほしい 誰に許可をとっているのかわからないけど


きみの好きなところその三、「ただいま」を言うと笑窪が浮き上がるとこ


滅ぼしてしまいたかったなにもかも抱いて星のように眠った


くだらないことばっかりを思い出す一人称が僕なとことか


きみの好きなところその四、寝るときのなにかを守るみたいなまるさ


飲みさしのミネラル・ウォーター 閉じ込めていたはずなのに減っていく嵩


どっぷりと浸ると自分の輪郭がわかり そのうちわからなくなる


きみの好きなところその六、ジュースとかお茶はあんまり飲まないところ


それ以外ないって思い込んでいた海水で花は枯れるとしても


忘れたくないっていつから考えていたのか 振り向けば地平線


きみの好きなところその七、突然の海行きすらも喜ぶところ


きみだけを好きでいられたならそれでよかったという嘘をゆるして


防波堤を越えればそこに海はあり私のすべてを奪っていった


きみの好きなところその九、なにひとつ受け入れてないようなまなざし


雨粒は私に触れては離れてくだから泣きたくなんてなかった


きみの好きなところその十、もし僕を忘れちゃっても泣き虫なとこ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

潮騒の泣き声 中嶋港人 @minatotanka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画