第2話

 さて、それから馬車に揺られること数日。俺はようやくその辺境の村とやらに到着した。まあ、村なだけましである。にしても、憧れてた一人暮らしがまさかこんな異世界の辺境になるとは…面白そうなのでよしとする。


「では、サクマ様。またいずれ。」


「はい。」


 そんな会話を交わし、その馬車は去っていく。さて、この村の概要であるが人口は100にも満たない程度。故に集落と言った方が正しいか。おおよそは農耕にて生計を立てている。山が近いと言うこともあり、炭鉱もあったそうだが今は使われていないとのこと。

 魔素の濃度が低く魔物の目撃例も極端に少ない。原因はあのアンラス山にあると聞く。何でも、あの山の中に眠る聖魔石しょうませきが魔素を分解、吸収しているらしい。

 と、ここまでが先程まで揺られていた馬車の中で読んだ内容だ。

 それで、肝心の俺の家であるが村の入り口の近くに空き家があるそうで、そこに移住許可が下りたとのこと。


「おお、あんたが話に聞く異世界人かい?」


 第一村人発見。


「はい。」


「ワシはここの村長をしておる、タナスと言うものじゃ。待っておったぞ?」


 タナスと名乗ったそのおじいさんは、俺をその一軒家まで案内してくれた。まあ、見てくれは立派な木造建築。中もそんなボロくない。なかなかいいんじゃない?


「なにか困ったことがあれば何でもワシに言うんじゃよ?」


「はい、ありがとうございます!」


 そうして、タナスさんは俺の家をあとにした。それにしてもタナスさん、優しい人でよかったな。さてと、それじゃあ引っ越しの続きでも………。

 ふと、窓から視線を感じた。


「え?」


「?」


 窓から覗く少女の青色の瞳。目があったまま数秒お互いに沈黙。そのまま、しばらくして彼女はようやく気づいたかのようにビクッとして顔を引っ込める。


「いや、遅!?」


 お隣さんかな?あとで挨拶に行かなきゃ。ともかく、あの本の束を運ぼう。


―――――――――――――――

――――――――――

―――――


 そうして、数分ほどでそれを運び終わる。嫌に荷物が重いと感じたのはステータスの影響なのだろうか?このくらいで息が上がるとは思っていなかった。さて…。


「「………。」」


 いや、扉開けっぱなしの俺も悪いかもしれないけどさ?


「見てるよね?」


「!?」


 なんともアグレッシブな隣人だこと。まあ、嫌いじゃない。


「背中に目でもついてる…?」


「そんな化物じゃないよ。」


 そう言いながら彼女の姿を目にいれる。感想だけのべるなら、凄く綺麗な人だった。年は俺と同じくらい。黒く長い髪に青い瞳。先の少女と同一人物であることはすぐに解った。おどおどとこちらを見つめ、興味半分、恐怖半分と言ったところ。


「ごめんね。挨拶が遅くなった。今日からここに越してきた、獅子堂 咲真だ。よろしく。」


「シシドウ…?」


「サクマでいいよ。君は?」


「私は…ミユ…。」


「ミユか。よろしくな。」


 そう言うと、ミユは頬を赤らめる。同年代と話すってことがなかなか無いんだろうか?確かにこの村じゃ、あり得ない話しでもない。まあ、それなりに言い友人関係を気づいていければそれでいいさ。


「あ、あの…。」


「ん、どうした?」


「サクマは勇者候補だったって話し、本当?」


 ああ、そう言う情報も出てるんだな。


「まあ、本当ではあるな。」


「すごい…。」


「すごいことはないよ。運に見放されたからここにいるわけで、たぶん君とさほど変わり無い実力さ。」


「そうなの?」


「ああ。事実上の戦力外通告ってことさ。」


「悔しくないの…?」


「悔しいさ。だけどこうなったならどうしようもないだろう?だから、俺は俺に出来る戦いをするんだ。」


「戦いって…。」


「相手を知ることだって戦いの内の1つってことさ。尤も、アイツらの近くに居られないのは腑に落ちないがな…。」


「そう…だよね…。」


「なんか、暗い話しになっちゃったな………そうだ。この村のこと、教えてくれないか?」


「え?」


「色々回って見てみたいんだよ。駄目かな?」


「え、えと…大丈夫です…。」


「よかった。ありがとうな!」


「は、はい…。」


 とまあ、少々強引ではあるが話をそらすことができた。

 さて、それから半日。俺とミユは一緒にその村を探索した。事前情報はあったものの、やっぱり自分の目で見てたしかめるに限る。


「ここが村の自警団の本部。」


「なるほど。立派な建物だな。」


「うん。村で1番大きい。中には闘技場とかもあって―――――。」


 ミユもそれなりに心を開いてくれたようで何よりである。もともと、話し相手がほしかったのだろうな。見て回った感じ、やっぱり他の住人はミユより年上ばかりだ。同年代と言うだけで珍しかったのだろうな。


「おや、ミユに………そっちは見慣れない顔だな?」


 後ろからそんな声が聞こえた。


「あ、ナナさん。」


 甲冑に身を包んだ女性がそこには立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハズレスキル【ヘタレ】がハズレすぎる~全ステータス1/2は酷いって~ 烏の人 @kyoutikutou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ