ハズレスキル【ヘタレ】がハズレすぎる~全ステータス1/2は酷いって~

烏の人

第1話

「いやぁ…こんなことってあるんですね。」


 己のステータスを見て絶望する。まあ、あれだ。ラノベとかでよくある展開を想像してくれればそれでいい。俺達のクラスは異世界転移に捲き込まれ、魔王の危機から世界を救ってくれと国王から懇願される。これがさっきまでの出来事だ。

 まあ、いいさ。この際気にしないさ。起きちまったもんは良いけどさ。

 さて現在、召喚された大聖堂に神官さんと俺の2人きり。


「このスキルさえなければ…勇者クラスのステータスなんですけどね………。」


 俺の横に居た神官さんからそう言われる。俺の眼前に表示されたステータスボード。俺の名前、獅子堂ししどう 咲真さくまと書かれアルファベットと数字でステータスが記されている。そして肝心のスキル欄。


「なに、この【ヘタレ】って…。」


 このスキル、全ステータスが1/2補正されてしまう。それどころかLv上昇ごとに得られるステータス上昇さえなかったことにされると言うハズレスキルもいいところの足枷である。

 その上で、人間はスキルを三つまで持てると言うのにこの1つだけと言う鬼畜っぷり。どうしろと言うのだ。


「これのせいで実数値だけ見るのなら今回の転移者の中で最弱…それはおろか、こちらの世界の人間よりも少し弱いくらい…。」


「あの、神官さん。解ってますから抉らないでください。」


 ああ、これどうなっちゃうんだろうね。追放かな?やっぱり追放なのかな?まあ、どうにかなること願うしかないんだけどさ。


「ともかく、処遇については検討中ですのでもうしばらくお待ちください。」


 お待ちくださいなんて言われてもなぁ。本当に今後の人生お先真っ暗かもしれないってなると人間こうなるんだなぁ。

 追放されたらどうしようかな。正直このステータス生き残れますか?って話よ。どうにかこうにかやりくりするしかないけど、成長しないこの身体でどうするんですか?

 まあ、こちらの人間よりも少し弱いくらいなら生きていくことは出きるんじゃないだろうか?

 大聖堂の中で俺一人が天井を見上げ、ぼーっとしていた。


「サクマ様。処遇の件ですが………。」


「はい。」


「ここより、西方のアンラス山の麓の辺境の村に移住させよと承りました。」


「アンラス山…?」


「はい。あそこなら魔力濃度も薄く魔物の目撃例も少ないので安全だろう、と。」


 追放…ではないものの戦力外通告か。堪えるな。友達はみんな命がけで戦ってるってのにな。まあ、足引っ張ってアイツらに損害だすほうがよっぽど迷惑だもんな。


「なるほどです…。」


「出発は明日の予定ですので、挨拶は今日の内に…。」


「そうですね…解りました。あの、いいですか?」


「はい。なんでしょう?」


「アイツらとは、また会えるんですかね…?」


「ええ、頻度はそう設けられませんが。ご希望なら善処いたしますよ?」


「ああ、ありがとうございます。」


 まあ、なるようになるさ。さてと、アイツらに何て言ったもんかな。


―――――――――――――――

――――――――――

―――――


「ってな訳で、俺、辺境送りだってよ。」


「「はぁ!?」」


 とまあ、当然の反応だよね。特に、さっきから何がなんやらの状態でまとめ役が居ないってなったら尚更さ。


「おいおい、どう言うことだよ?おまえ、そんな体力無かったか?」


 そう言ってきたのは、高校からの友達。秀斗しゅうとである。あからさまな脳筋の見た目に、脳筋のステータス。脳筋全部りのスキルを貰ったアホの格闘家である。


「いいや。スキルがハズレすぎてもうね、俺はお前らの足を引っ張っちまうくらいに弱体化してます。んでね?そんな状態でさ、お前らに損害が出てもこっちもやるせないのよ。」


「そうは言ってもだろ…。」


「泣くなって、秀斗。暑苦しい。ずっと別れるわけでもない。会えるようにはしてくれるってさ。まあ、そんな頻繁には無理だけどな。」


 まあ、コイツらならなんとかなる。癖やら刺のあるメンバーだが、それくらいでいいだろう。何より、一体となったアイツらに勝てる存在なんて俺は思い浮かばねぇ。

 さてと辺境送りか………なら、俺に出きる戦いをしようじゃないか。


 さて、次の日。旅立ち。しばしの別れである。


「サクマ様、これで全てです。」


「ありがとうございます。」


 木箱が馬車に載せられる。昨日の内に神官さんに頼んでおいたものだ。中身は魔法、魔物、魔王に関する書物。少しでもアイツらの役に立てるように貸し出せる分だけ貸して貰った。

 アイツらは今日から1年間、訓練らしい。その期間だけは俺も一緒に居られないかと聞いてみたところ、トラブルを避けるためと却下された。

 確かに俺の性格上、トラブルを招きかねない。弱い癖して口だけは達者なんて嫌な奴でしかねぇもんな。英断だろう。


「では、サクマ様。」


「はい。お力になれず申し訳ない。」


「いえ、こちらの都合で呼び出し、よもやこのようなことになるなど…こちらこそどう詫びていいものか…。」


「いいんですよ。アイツらのこと、頼みます。」


 そうして俺は、その馬車に乗ったのだった。


―――――――――――――――

獅子堂 咲真【Lv1/20】

INT 70/2→35

STR 50/2→25

CON 60/2→30

DEX 60/2→30

POW 20/2→10

MP 60/2→30



スキル【――】


スキル【ヘタレ】

消費MP0

全ステータス二分の一の補正

-Lvごとの補正値を無視する-


スキル【――】

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