ふと、忌々しい記憶が蘇る。僕の黒歴史と言って差し支えないだろう。忘れようにも赤錆のようにこびり付いたそれは、ノイズとして僕を蝕む。
思えば、あんなものを書いた僕にも否がある。ただ、それはきっとすぐ忘れるだろうと言う浅はかな考えが根底にあったからだ。こうなることを知っていたら、きっと僕はあんな物に手を出したりなどしなかった。
それにしたって、あれの下書きを葬っておいて本当に良かったと思う。でなければもっと高頻度で思い出していただろう。もっとも、今はあまり関係のないことだが。
なぜあんな物を書けたのか、僕にもわからない。だがきっと、今でも書けるのだろう………2度と書きたくないけどな。
さて、そろそろ黒歴史の正体を明かそう。思い返すこと半年前、僕はその時の彼女に頼まれ………小説を書いた。問題はその内容だった。よくもまあ、あのおぞましい題材で書けたものだよ。僕が書いたのはR-18指定を喰らうだろうものだった。何故そんなものを書いたのか。さっきも言ったろう?僕は頼まれたのだよ。赤ちゃんプレイで一作品書いて、と。それに忠実に従ったさ………好評だった………。これが今の僕を苛むノイズの正体。解っているからこそ、内容が強烈だからこそ、僕は忘れることができない。日常にすら自然体に入りこんでくるソイツは僕の失笑を引き起こす原因になっていた。もう、笑うしかないと、そう言うやつである。結果的に、他の小説を書こうとしても奴が邪魔してくる。それが………僕の悩みだ。
過去に縛られやすい。それが僕という人間だ。それが短所であることもわかっている。それでも僕は、それでいいと思っている。僕は忘れる事のできない記憶のしかたをしているからだ。だから、どんな状況でもある程度映像として蘇ってくる。だから僕は悩んでいても切り捨てるのだ。『仕方がない』と。