短歌二十首連作『セントラルパークへ』
畳川鷺々
セントラルパークへ
月影よ 常にこちらを向いているペープサートの裏側の顔
トイレットペーパーの芯をかすかに透かしつつ耐える最後のトイレットペーパー
春、撚れたわたしのためのエチュードが市長候補に盗られてしまう
ベランダに無断でひっくりかえってる虫が二種類七匹もいる
墜ちてゆくとりたち、追突事故のくるまが二台、裏返るブランケット
加害者のきれいな笑顔ひとつ、もうひとつ笑顔、くるまの欠片
南風にのる塩素のにおい 追憶のプールに眠る正十二面体
日曜の祈る人たち見おろして中指で鍵をまわして歩く
リリシズム、その緞帳はゆっくりとどちらに動いているようにみえる
セントラルパークのただしい皆さんに怯えるように花を 花を
注釈 あらゆる中央公園をセントラルパークと呼んでよいものとする
きつねかな ねこだよ そうだ、ねこだね うん きみは何回目のねこですか
また少し傾いてるね たましいはみんなゆっくり向こうに流れる
「ふざけるな、なんの薬も飲んでないお前なんかが人を語るな」
落陽にのまれる街に溶けのこるインプラントの顔がおおきい
親戚が働いているコンビニが最寄りであって寄らずに暮らす
橙のカウントダウンを煽るように炊飯ジャーの激しき唸り
カフェインの抜かれた紅茶を淹れながら無理にやさしい気持ちをつくる
星影よ 隣りを歩いていいですか光も影も変わらないなら
死んだ虫ひとつひとつと弔えばわたしのなかにある排他性
短歌二十首連作『セントラルパークへ』 畳川鷺々 @ttmx6
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