第17話 ミミニアリストアカデミー

 時は来た。

 サバゲー大会以降、無理難題なスケジュールを命をも覚悟でこなしてきた。


 ミミニアリストアカデミー応募締め切りまで、残り24時間。


「大丈夫か?バグとかないか?ササノ」

「ここまで、集中して終わらせたんだ。問題ない」

「ああ、正直、心配はしていない」


 なかなかの信頼関係だ。

 私にあそこまでの信頼関係を築けている交流関係は覚えがない。


「よし!最終チェック完了!完成だ!!」


 ササノはそう告げた。


*****


 ミミニアリストアカデミー本部 応募受付場


 作品の提出にはササノが行った。自らが行きたいと言ったから、オサノが行かせたのである。


「エロゲ開発部だな」

「なんで、受付がお前なんだよ」


 そこには生徒会長(女)がいた。


「私も審査員駄。いて何が悪い」

「いや、悪いとは一言も言ってないじゃないか」

「ああ、そうか。とりあえず受け取る。分かってるな?」

「分かってる。大賞がとれなかったら廃部だろ?しかし、今回の作品はいつもの作品とはわけが違うぞ?」


「ほう、では一応楽しみにしておこう」


 こうして、我々の提出の義務が終わった。


*****


 場所はミミニアリスト魔法学校の中庭にあるベンチ。そこに私とオンノはなんとなく座っていた。


「オンノさん。この部活はどう思いますか?」


 私はオンノにふと、そんなことを訊いた。


「ん……。あまり何も思いませんね……。何せ、関わっていた時間が短いし、みんなが冒険者やってた時も私はハブられたし」

「それはちょっと悪かったと思っています」

「良いですよ。別に部活がなくなっても学校行けなくなるわけじゃないし、また、個別で行きましょうよ。ノゾミルさんがいるなら安心だ」


 正直、私はオンノとユウナとはそこまで交流を築くことができなかった。そこまで話すことができなかったからだ。今思えば、もうちょっと話しておけばよかったとも思う。そうしたら。オンノも「何も思わない」という感想は出てこなかったであろう。


「でも……やりがいはありました。これははっきり言えます。『楽しかった』です!」


 彼女はそう言った。


 そうか、楽しかったのか。


「おい、二人とも、なんでそんな廃部前提の会話をしている?」


 そんな声がした。その声の主は缶コーヒーを持ったオサノ。

 そして、オサノは私たち二人の肩を組み、言う。


「大丈夫だ。まだ部活は続くさ。自分の作品を信じろ。まだ、開発部は続くさ。きっと」

「断言はしないんですね」

「断言は結構無責任だと俺は思うんだが」


 そんな引き腰の部長。それがエロゲ開発部部長オサノだ。


*****


 そうして、ミミニアリストアカデミーが催された。

 ミミニアリストホールにて受賞作品が次々と発表されていく形式のモノである。


 初めに、優秀賞から呼ばれていく。優秀賞は数が多いので、このプログラムでかなりの時間を喰う。

 ここで我々の名前が呼ばれたら、その瞬間、廃部決定だ。


 結果、ここでは私たちの名前は呼ばれなかった。


 そして、次に、特別優秀賞、校長賞、生徒会賞等、色々な賞の受賞作品が発表された。

 まだ、私たちの名前は呼ばれない。

 そのたびに、私たちは一息をついた。


 本当にこの部活は存続できるのか……?

 そんな夢物語があるのか……?!


 そして、最後のプログラム。銅賞、銀賞、金賞それぞれ一作品ずつの発表。そして、ミミニアリストアカデミー大賞の発表だ。

 その四作品の発表が同時に行われる。

 ホールのモニターに映し出されて、順番に司会に名前を呼ばれる。この流れを聞いたときに私は「大賞は大賞で一つのプログラムにしろよ」と思ってしまった。


 そして、いよいよ我々の部活の存続が判明した……。


*****


 私がこの町に来た頃は紅葉が見られた季節だったはずだ。しかし、今となっては木々はすっかり禿げてしまっている。

 この町もかなり積雪がするらしい。私の地元もそうであった。

 しかし、こう、白に染まった魔法都市を飛行魔法を使って一望してみると、やはり地元とは全く違う雪景色である。


 現在、私ノゾミル。ミミニアリスト魔法学校特待生組の生徒である私はまだやりたいことを学校内で見つけられていない。

 やりがいを感じるもう一つの場所はまだ見つけられていない。


 しかし、いつかは見つけてみたいと思っている。

 まだ、私の魔法学生生活は長いのであるから。


 でも、やはり私はエロゲを遊び続けるであろう。私はあの三か月の間に、すっかりこの文化にのめりこんでしまった。一生を溶かすほどの覚悟ができるほどまでにだ。

 しかし、もう少し、魔法学の勉強にも目を向けないといけない。最近成績がやばいのだ。このままだと特待生はく奪されるかもしれない。そんな制度がこの学校にあったかは知らないし。覚えていないが。


 まぁ、これから、私たちが送るのは至って普通の学生生活だ。しかし、私は勿論、普通を平凡を望んでいるわけではない。

 もっと面白い生活を送りたい。そんな未来に期待したい。


 そう思いながら、私は今日も、箒に跨ぎ、空を飛んで、学生生活の舞台である。ミミニアリスト魔法学校へと飛ぶ。

 

 

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魔法学校エロゲ開発部〜特待生魔術師が廃部寸前の開発部に強制入部させられて、エロゲを作ることになってしまう話〜 端谷 えむてー @shyunnou-hashitani

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