第16話 サバゲー大会
私たちは今何故か、銃を持っている。銃と言ってもエアガン。安全です。
「何故、こんなことに……」
今、私は物陰に隠れ、その物陰からは「バババババ!」と弾が撃ち込まれる音が響いている。
現在、バイオルチック市東フィールド。
バイオルチック市は主に銃で戦闘を行う者が多くいる都市だ。
ここでは「市」という名前を付けているが、本来、魔法都市ミミニアリストもミミニアリスト市というのが正しい。しかし、ミミニアリストはその巨大さと「魔法都市ミミニアリスト」という語呂の良さから、世間的にそちらの方が広がっている感じだ。ミミニアリスト市もそこまで語呂が悪いわけではないと思うのだが。
ちなみに、この世界に「国」という区分がない。戦争から国という区分を無くし、人々の国籍という籍もなくなってしまったのだ。あるのは町区分とかくらい。あと、居住区が魔族の人族で分かれている。
話が外れてしまった。話の軌道を修正しよう。
ここでは、銃での戦闘が盛んな地域であるが、何故私たちがこんなところでエアガンを構えているのか。それはミミニアリスト魔法学校に貼られていたはりがみをオサノが見てから始まる。
「どうやら、バイオルチック市で大会が催されるらしいのだ」
「ほう、どんなものだ?」
ササノが反応した。
「何があるか分からないけど、部長、本当にスケジュールがカツカツなんだから、そんな催しに参加している暇じゃないよ!」
とライナが言った。
催しとは……。きょうびきかねーな。
*****
ちなみに、催しとはどのようなものかというと。それは察しの通り、サバゲー大会である。
主催はバイオルチック市自治体。賞品は「あなたが望むもの!(可能な限り)」
「よし!出よう!!!」
反対者であったライナが賞品を聞いて、突如、そんなことを言った。
「何故、そんなノリノリに?」
「あなたが望むもの?!なら私は人手を頼むわ!!」
「人手?」
確かに、そこには「あなたの望むもの」と記されている。
ものということは「
いや、知らんけど。
というわけで、この日に本気を出して二日分のスケジュールをこなし、その大会に出場することにした。
*****
参加申し込みはネットで事前に行った。
そして、大会当日、私たちは転移魔法によって開催地であるバイオルチック市に移動。
「ちなみに、用具はあるのか?サバゲー用の」
「有り余ったお金で買いました」
「またそうやって無駄遣いする……」
*****
ちなみに、今回のサバゲー、魔法都市の私たちが銃の街であるバイオルチック市の方々に勝てるはずがないではないか、と思う者がいるかもしれない。いや、大抵の者はそう思うであろう。なんせ書いてる僕もそう思ってるし。
というわけで、ご都合設定を付け足すことにした。
それは……。この大会は「魔法の使用が許可されていること」だ。
そして、我々は魔法を使えば、火炎竜でさえも倒すことのできる凄腕(自分たちで言うのもなんだが)。
え、これ、勝ち確じゃね?
逆に手加減しないと、相手死んじゃうまであるよこれ?
というわけで、エロゲ開発部はまだ勝ってっすらいないのに、天狗になっていた。
にやけ顔になったとしても、ツッコむ者もいない。なぜなら、みんなにやけ顔になってるから。
*****
第一回戦 会場:バイオルチック市 東フィールド 参加人数 最大10人
そして、場面は初めに戻る。
完全に間違っていた。
どれだけ魔法が使えようとも、キルの基準はエアガンの弾。そして、我々の中に銃を達者に扱える者はいない。
ちなみにルールはフラッグ戦。相手の陣地にあるフラッグを確保(といってもブザーを鳴らしたりするらしい)すれば勝ち。
そして、我々『ミミニアリスト魔法学校エロゲ開発部』は既に二人(ライナとユウナ)を失った。相手はまだ全員ピンピンしている。
「どうする、これ……」
「まじで後がないな」
「……」
しかも、相手の人数は10人ときた。流石に絶体絶命である。
我々4人はこの物陰に隠れていたが……。
突然、ユウナがそこから飛びだした。
「ユウナ?!」
「ちょっと?!」
今、ユウナの脚には俊足魔法のバフがかかっているため、かなり素早さが向上している。
しかし、予想よりもずっと速い。
彼女はすぐさま相手の懐に入り、一発を射撃。
「あ……ヒット!」
相手の選手のヒットコールが会場に響いた。
「速いっ!」
なりふり構わず、彼女は走った。
相手も無抵抗とはいかないので、銃をユウナに向かって撃つ。
「『ウインドブレス』」
まさかの風魔法で弾の勢いを止め、無力化させてしまった。でも、そんなんになるぅ?
「なんだ……?あの戦い方」
セーフティエリアにいる人たちも、その目にも見えない戦い方に注目しているようだ。
「くそっ……」
相手の選手が一発射撃。
その弾はユウナの肩に着弾した。
「……ヒット!」
ユウナはヒットコールを叫んだ。
そして、フィールド後方にいる私たちに目を向ける。
「あとは頼んだ」とも言いたげな目で。
ふと、フィールド全域を見てみるとなんと、相手はあとユウナを倒した一人しかいなかった。
あ、これ勝ち確ジャン!!
「よっしゃー!!!行ってやるぜ!!!」
*****
「なんで、あの状況から負けれるかな……」
「「「スミマセン……」」」
あの試合の結末は、ユウナがせっかく三対一にしてくれて、勝ち確かと思いきや、我々三人があまりにも弱すぎて、瞬殺されたことで終わりを迎えた。
相手も何故勝てたのか、分からなそうな顔をしていた。
「くそう、屈辱だ……」
こうして、我々はただ一日を無駄にし、恥をかきに来ただけの日になった。
しかし、何故、ユウナはあんなにサバゲーがうまかったのであろうか……。
昔、サバゲーでもやってたんかな……?
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