第15話 魔族製のエロゲ
『国王軍と魔王軍の戦争が終戦し、九十年の時が経ちました。今や、その種族間の関係は完全に戦争の面影を見せないくらいに平和になってきました』
そんな平和を訴えるような面白みもないテレビ番組が何故か部室にあるテレビに表示されていた。
「国王魔王皮肉戦争か……」
九十年前に行われた人族と魔族による戦争である。そんな戦争という無駄なことをしたことを皮肉った意味で、国王魔王皮肉戦争という面白い名前で呼ばれている戦争である。
ちなみに、もうこの世には王は存在しない平和な世界となりえている。
「そういえば、こんな風に共生しているって言ってますけど、私、魔族に会ったことないですね」
「まぁ、魔族はもともと魔法が得意だから、こんな魔法学校に魔法を学びに行く意味がないからな」
ちなみに、国王魔王皮肉戦争はお互いギリギリまで戦った末、平和的解決として、引き分けという結果となった、らしい。
「そういえば、魔族が作ったエロとかあるんですか?」
「少なくとも、うちの部室にはないぞ。でも、少し興味はあるぞ。どうする?今度、階にでも行くか?みんなで」
とオサノは提案したため、エロゲ開発部のみんなで買いに行くことにした。
*****
ネットで調べてみると、一応、魔族の皆さんも我々人族と同様にエロゲ創作に励んでいるようだ。やはり人族と同じく、生き物。性欲が盛んである。
しかし、某ネット通販ではそこまで魔族製のエロゲは出回っていなく、店で買うしかないようであった。
「なんで、彼らはネットで出さないんだろう」
「別に信用のできないネットで取引しなくても、魔力が高く、転送魔法をポンポンと使えるやつは直接取引した方が都合がいいからだろ?」
「そんなもんですかな」
ちなみに、転送魔法は人族にとっては消費魔力が激しく、そんなポンポン使えるものではないのだが、魔族は魔力が多量なので、そんな魔法も好き放題使えるのである。
ちなみに、ノゾミルは好き放題使える。
では、何故、ノゾミルはミミニアリストに来た際、馬車に揺られて来たのか。それは、正直、分からない。何か理由があったか。いや、ただ馬車に憧れていただけなのか。
*****
今回はノゾミルの転送魔法で入手できるであろうとある町の市場に行った。
別に闇というわけでもない、ただの市場である。
「うわぁ……。魔族ばっかりだぁ……」
この市場は中でも、魔族が中心の市場である。そのため、魔族の人口比率が私の地元やミミニアリストに比べ、はるかに高い。何と言っても、地元もミミニアリストも魔族の比率はないに等しいが。
とりあえず、エロゲ開発部一行はとあるゲームショップへと向かった。
ゲームショップには、一般ゲーム、成人ゲーム等色々あるようだ。比率は一般ゲームが多め。
ちなみに、私はゲームショップに入ったことがない、今日が初めてである。
そのゲームショップには人族製のエロゲは勿論。魔族製のエロゲも山のようにある。価格はどれも8000円ほどと、まぁ普通にエロゲの価格だ。
「へえ~。こんな感じなのか。
私はエロゲ台眺め、そう言っていると……。
「よう!そこの人族の少女!何やら輝かしい目で成人ゲームを見ているが、どうしたのだ?!」
とあるいかつい感じの魔族さんに話しかけられた。
「あ、いや、魔族製のエロゲを買おうと思ったんですが、何買おうかなと思っていて」
「ほう、魔族製のエロゲに興味を示す人間がいるとは、関心関心!」
そう言って、「がはは」と彼は笑った。
「では、この魔族エロゲマスターである我に任せたまえ。おすすめのゲームを教えてやろう。しかっしちょっとお願いがある」
「はい?何です?」
「我は魔族のエロゲは通なのだが、人族のエロゲには疎くてな……。おすすめの人族のエロゲを教えてほしいのだ」
「まあ、数タイトルなら分かると思いますが……」
部室にあるゲームの中で良かったものを教えれば良いか。
そうして、お互いにおすすめのゲームを教え合い、それぞれ、その中から数タイトルを購入した。
「礼を言う!同志よ!がははは!」
そう言いながら手を振りながら去る魔族さんに私は静かに手を振った。
───でも、まぁ、良い人だったな。
「おう、ノゾミル。何しているんだ?」
店から出てきた開発部一同が私にそう言った。
「少し、魔族さんと交流を深めていました」
*****
後日、私は部室内で先日買った魔族製のエロゲを遊んでいた。
それにしても、あの男……。すごいな、このエロゲ、私の好みにド直球だ。
そう思いながら、私はエロゲを楽しんでいた。
「……おい、ノゾミル、エロゲで遊ぶのも良いが、作業もしっかりしてくれ。そろそろ締め切りがやばいぞ」
「あ、そうですね……」
そして、その日のテレビも戦争についての番組が放送されていた。
『では、今回は魔族政治代表である、ママノボス様です!」
「どもども、先日、エロゲ好きの人族とお互いのおすすめエロゲを教え合っていましたわ。がはは。ああいう人族が私は好きですよ」
「それは、それは、なかなか面白い交流関係ですね……」
「名前だけでも訊いておけばよかったな……」
そのテレビに映っていた魔族はあの時ノゾミルが出会った魔族であったが、ノゾミルはその時には気づかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます