ミル

かまつち

ミル

  今日、ある夢を見た。なぜだか私は海外にいる夢を見たのだが、そこがどこなのかどのような景色だったのかは忘れてしまった。


しかし、これは夢なのだし、このことはそれほど重要ではない。覚えておくべきことは私以外にも、そこにはたくさんの観光客がいたこと、私以外にもいたこと、つまりそこは観光名所だったということだ。


私は何らかの観光ツアーでそこに行ったようだった。周囲にはツアーガイドとそのツアーの参加者がいて、私はそれについていった。


ツアーガイドは複数人いて、欧米風の人間と日本語を話すアジア系の者(おそらく日本人)がいた。ツアー参加者の数もかなりのもので大規模なツアーだった。ちなみにすぐに日本に戻ったようである。


 しかし、ここからが本番である。今までのものはあらすじと言ってもいいだろう。私のついていくツアーはなぜだか愛媛にいた。私は不思議に思った。私は愛媛に行ったことはあるが、一度だけである。


その上、そこはおそらく愛媛ではない。私が見たのは大きな、石垣が積まれた土台の上にある二階は寺のようなものである。そしてその寺に行くまでに広い、白い道路があって、その道路には街頭のようなオブジェなどは一切なかった。


ただ、広大で、厳かなどこか心惹かれるところがあった。私は初め、どこかで、その愛媛とはおそらく異なる位置の、学校のグラウンドを意識してもらえるといいのだが、広い砂場でツアーの者たちと座って何かを待っていた、おそらくバスなのだろう。


それからの記憶はなく、次の瞬間には先程述べた光景が目の前に広がった。次に私たちはこの寺に近づき、そこの見学をしていた。そこでだった、私は彼女を見たのだ。


 私は寺の外側、たしかそこには焚き火が囲いで囲まれて燃えていたのを見た。わたしは外から寺の内側を窓、太く長い、何本もの木材で十字の形で塞がれていた窓から寺の中を、次に見た。


寺の内側には、本堂らしきもの、そして寺に関わるものが売られているのであろう土産物の販売店らしきものがあった。それらをぼんやりと眺めていた時、私は彼女を見たのである。


彼女は人間ではなかった。頭には日本の角が生えており、そして着物を着ており、見た目は若々しく、しかし、その見た目とは裏腹になんだか自分よりも長い年月を生きているかのように感じた。おそらく彼女は鬼なのだろう。


 次の場面、私は寺の中、先程の土産物の販売店に一人、そこにいた。そこには御札やおぼろげながら何らかのお寺関連のものがあった。私はその中にあった絵札を眺めていた。

その絵札には、いかにも和風の、一本の木と、青い空が、そして緑色の草原が色鮮やかに描かれていた。それを眺めていた私は後ろに気配を感じた、もしくは後ろから声をかけられた。


後ろを向くとそこには彼女がいた、綺麗だった。

彼女は何かを私を話した。それをもう私は何も覚えていない、思い出せない。彼女はさきほど私が眺めていた絵札と同じものを両手を下側にし、持っていた。


彼女はずっと粛然とした顔をしていたが、私がその絵札を見た時、その絵札の中心にはビー玉のようなものが埋め込まれていた。そこには横たわった自分が写っていた。


 次の場面、私の眼の前から彼女はいなくなっていた。前方には廊下をはさんでふすまを開き、まるで私を誘うかのように一室の和室があった。私はすぐさま底に入っていった。おそらくそこに彼女がいると思っていたのであろう。しかし、誰もそこにはいなかった。


和室に入って右方には、和室を想像する時よく出てくる床の間のような空間が机と座布団なしで、そこにあった。


しかし、左方にはまた別の和室があった。ふすまが開かれていたかは忘れてしまったが、おそらく開いていたのだろう。私はそちらに進んだ。


そこには何もなく暗い一室が広がっていた。私はさらに奥に何度も進んだ。和室が途切れることなく続いた。私は無限に続く空間に取り込まれてしまった、そう思った。


ふすまの奥には無限に続く暗闇と和室が続いたのである。そこで夢から目が覚めた。


 私は目が覚めたからすぐに、先程までの夢を反復し、思い出し、夢の意味を考えようとした。まず、彼女は何者かと言う考えが浮かんだ。次にあの寺はなにか、なぜ愛媛にあのような寺があるという夢を見たのか、ツアーであの寺に行くほどなのだ、あそこは少しは名の知れた場所なのだろう。ああ、夢に対して考察しようなどとは、しかしあの夢は実に素晴らしかった。


 しかしもっとも重要なのは私の姿が映ったビー玉だったのだろう。あれを見ることが何らかの重要なことだったのだろう。なんだか恐ろしいものを見たような気がするのだ。自身の恐ろしい未来を、結末を見たような気がして。私はそして後悔している。あの暗闇から目を背け、恐怖で逃げ出してしまったことを。


あの瞬間、あの暗闇へ進んだ時、私に何が起こったのか、何を見れていたのか、私は好奇心を持ってしまった。臆病な好奇心を。しかし、ああ、こんなことなら進めばよかったのに。それにしても、あの夢を忘れたくなかった。

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ミル かまつち @Awolf

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