Vol.5


俺とじすさんとFMAKと時々熱波と

第二部

じすふみの奇妙な冒険~戦闘潮流~

第二話

作:俺





~これまでのあらすじ~


アンディーメンテ制作のゲーム、アールエスをやりすぎて死亡してしまった俺の友人、木岡史明。【俺】はジスカルドに殺された史明の頭文字FMAKを名乗り、ジスカルドに復讐する為、友人と共にTHE SPA西新井にジスカルドを呼び出し、殺害する計画を実行する。俺はプロ熱波師・重本大輔氏を人質に取り、ジスカルドにルピアライブをしろと迫る。サウナという極限状況でルピアライブをさせることにより、ジスカルドを殺害しようとしたが、計画の最中に史明は生きていたことが発覚し、【俺】はジスカルドと和解。大団円と思われたが、ルピアライブが続行された為にサウナ内の全員が熱中症・脱水症状で死亡するという最悪な結果に終わる。

それから20年の時が過ぎた。

残されたアンディーメンテファンが開催した、PIPインフィニティ。その参加者の中に、ジスカルドとFMAKの息子と名乗る、じすふみが現れたかと思うと、シスマメ、ポジス、ジスツネ、ジスエメ、フミヴェネ……ジスカルドの子供を名乗る物が次々と現れる。

混沌とするPIPインフィニティ。しかしじすふみは、20年前にジスカルド達が死亡した事件の真犯人がこの場にいると言い放つ。その真犯人は、禁呪によって、いなくなってしまった親友・中原サエを復活させようとする、ピロナスだった。

最後の闘いが、始まろうとしていた……。






~登場人物~



小崎緑……緑のエメラルドとぁふぁの娘

YOKO……はなまめの娘

じすふみ……ジスカルドとFMAKの息子

ピロナス……真犯人

ちんねん……裏世界で暗躍する凄腕のエージェント

アマヒサ……大男


【ジスカルドの子供達】

ジスマメ……ジスカルドの息子

ポジス……ジスカルドの娘

ジスツネ……ジスカルドの息子

ジスエメ……ジスカルドの息子

フミヴェネ……VeNEとFMAKの息子


【20年前の事件の犠牲者】

ジスカルド……FMAKの友人。アンディーメンテ首謀者

FMAK(俺)……前作の主人公

はなまめ……FMAKの友人

緑のエメラルド……FMAKの友人

つね……FMAKの友人

VeNE……FMAKの友人

クロス……FMAKの友人

藤本……FMAKの友人


重本大輔……プロ熱波師

肉男……熱波師

まめちよ……熱波師

黒河内……熱波師

海賊王……熱波師


カズソウル……銭湯ミュージシャン

タックンジョー……銭湯ミュージシャン


村上さん……THE SPA西新井の常連


木岡史明……FMAKの友人

木岡邦雄……木岡史明の父親


※前作までに登場した、ヴェネフミというキャラクターの設定に対し、有識者の方々から、「エビデンスに欠ける」「史実に基づいていない」などの意見が多数寄せられた為、当該のキャラクターの名前は「フミヴェネ」が適当であると判断した為、今作からは「フミヴェネ」となりました。ご理解の程宜しくお願い致します。












起----------------------------------------------------------------------------------------------


その場に、静寂が流れていた。


PIPインフィニティの参加者100人が、一人の女性を見ていた。


「ピロナス……さん……!?」


私は絞り出すように、その名前を、声に出す。


彼女は、私とYOKOさんのお母さんの友人で。


ずっと前からアンディーメンテのファンで。


今回の、PIPインフィニティをやろう、と、私とYOKOさんを誘ってくれて。


一緒に主催して、開催にこぎ着けてくれた人。


「ピロナスさん……嘘でしょ……!?」


YOKOさんも、声が震えていた。


ピロナスさんは、笑顔を浮かべていた。しかし、その表情からは、何も感じられなかった。


仮面のような、笑顔だった。


「ピロナスさん。あなたが真犯人ですね。20年前のあの事件の。そして今日、ここにいる参加者100人を黒魔術の生贄にして、友人だった中原サエを復活させようとしている。俺は今日、あなたを止めに来ました」


じすさんとFMAKさんの息子、を名乗る、じすふみさんが鋭く言い放つ。


ピロナスさんは、笑顔のままだ。


そして、口を開いた。


「じすふみ君、はじめまして。いきなりワケの分からないことを言わないでくれないかしら?私がここに居る皆さんを生贄にして、中原サエを復活させようとしているって?マジで頭おかしいんじゃないの?私はサエのことなんて30年前にとっくにふんぎりつけてんのよ。しかもFMAKくんを操ってじすさんを殺そうとしたって?あなたの想像力は大したものね、そんな荒唐無稽なデタラメをよくこんな所で言えるわね。そもそもあなたがじすさんとFMAKくんの息子って、意味が分からないんだけど。そんな非現実的な話があるわけないじゃない。私があなたの主張する真犯人だっていう前に、自分がじすさんとFMAKくんの息子であることを証明できないんじゃない?」


確かに……と私は思った。


ピロナスさんと、じすふみさん。


どちらがムチャクチャな事を言っているかなんて、私達からしたら一目瞭然だった。


私とYOKOさんが子供の頃から会っていたピロナスさんと、


今日、初対面で、いきなりじすさんとFMAKさんの息子という主張をしているじすふみ。


じすふみさんは、ピロナスさんに言い返されても尚、その目つきは鋭くピロナスさんに向けていた。


「確かに、俺がジスカルドとFMAKの息子とこの場で証明するのは難しいですね。


でも、俺は母さんから、俺が誕生した時の事を聞かされています。2023年、今から20年前の夏、あの事件が起きる直前……新三河島のエレガン・ザ・コローナという母さんいきつけのイタリア料理屋で、母さん主催の飲み会が開催されたそうです。その時の余興として、LUPIAアコースティックライブを父さん、母さん、supplyさんの3人でやったそうです。そのライブのリハーサルとして上野のスタジオで練習した後、FMAKがジスカルドとsupplyさんに、秋葉原にあるサウナのコンカフェに行きませんか?と誘って、三人で行ったそうです。情報によると、そのコンカフェはサウナとバーが同じ建物内に存在して、カフェのキャストである女性がそのまま熱波師としてサウナで熱波を行ってくれるというコンセプトだったようです。カフェだけの利用でも、サウナだけの利用でも有りで、両方利用したらカフェの飲み放題が割引になるというシステムだったので、どうする?となり、結局サウナだけを受けに行ったそうです。コンカフェは秋葉原駅から徒歩で10分くらいの、こんなところにサウナがあるのか?という奥まった所にあり、恐る恐るカフェの店内を見てみると、三人くらいのねーちゃんが数名の客を相手にしていました。パッと見ただけではただのガールズバーのように見える店内で、父さんは恐る恐る、「すみません、サウナに入りたいんですけど…」と言うと、「あっ、今から準備しますね!ではこちらに移動お願いします」と誘導され、サウナ室に三人で入りました。そのサウナは入れ替わり制で、20時からの回には、3人と、もう一人、常連っぽい男性の4人だったそうです。4人は挨拶を交わし、サウナ好き同士、これまで受けて来た熱波の話、井上熱波神の話や、おふろの国で行われる熱波甲子園の話などをしながら、熱波が始まるのを待っていました。そして20時になり、なんとスクール水着を来た女性熱波師が登場しました!!!その女性熱波師に話を聞くと、どうやら、普段はそんな恰好ではやらないが、前日がコスプレ熱波の日だったとかで、でもその女性店員はちょうど前日休みで参加できなかったので、一日遅れてコスプレをしていたそうです。ジスカルド達は、そんな恰好で熱波をしたらヤケドするんじゃないかと心配になったそうですが、いざ熱波が始まると、小さめのサウナ室に高出力のサウナ炉だったという事も相まって、相当強力な熱波だったそうです。ジスカルド、FMAK、supplyさんは数多くのサウナで熱波を受けてきましたが、その中でも上位に入るサウナ体験だったそうで、気分を良くした三人はそのまま夜の街に消えて行ったそうです。その日、俺という生命が芽生えた、母さんはそう言っていました」


じすふみさんの迫真の話が終わり、私はピロナスさんに視線を移す。


「どうやら、あなたがじすさんとFMAKくんの息子というのは、本当のようね……」


ピロナスさんは、苦笑いを浮かべる。


そして、数秒の静寂の後。


「フフフ……ははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ピロナスさんが、突然、堰を切ったように、人格が変わったように笑い出す。


その瞳は、狂気としか言いようのない、真っ赤と真っ黒を混ぜ合わせたような色を映していた。


そしてピロナスさんは、じすふみさんを、参加者100人を、私を、YOKOさんを見渡して。


「みなさん、はじめまして!マジックイズオールのリーダー、ピロナスです。今日は優勝なんかはどうでもよくって、皆さんに死んでもらう為に来ました。よろしくお願いいたします!……なんてね、ふふふ。 じすふみくん、よく調べたね。そうだよ、私が黒幕なの」


「ピロナスさん……」


私は、思考がほとんど止まりかけていた。


あの優しかった、ピロナスさんが、じすさんやFMAKさん、お父さん達を……。


そして、今日は、私もYOKOさんも……。


ピロナスさんは、私とYOKOさんに視線を向けた。


「みどりちゃん、YOKOちゃん、こんなにもたくさんのナイトたちを集めてくれてありがとう。20年前、みんなのご両親を犠牲にしたのに失敗してしまって本当にごめんなさい。今度こそ完全な儀式を行う。 私も昔、もう30年以上も昔のことかな…、みんなと同じようにPIPに参加するためドキドキしながらこの駅に降りたんだよ。そしてサエに出会ったの。あの頃はじすさんもいて、私はじすさんに夢中だった。みんなはじすさんのこと、フリーゲームの神様かなんかみたいに思ってるのかもね? まあ私も似たようなものだったの。サエに目を覚ましてもらうまではね。サエもAMファンの一人だったんだけど、特別な人だったの。私だけじゃなくて、ふみあきくんもじすさんも、あの頃のAMファンはみんなサエのことが大好きだったんだよ。本当にサエは……頭がよくて、やさしくて、面白くて……遅刻魔で……、魂の半身みたいに思っていたの。 でもサエはいなくなってしまった……。どうしても取り戻すことはできなかった。帰って来てくれなかった。だから私は、サエに帰ってきて欲しくて、銀河百貨図書館に眠っていたノーザンバランド人の古文書に記されていた黒魔術を解読したの。それは、失ったものを取り戻せる、禁じられた魔法だった。その魔法は、代償として、サエと同様に大切なものの命を捧げないといけなかった……。だから私はふみあきくんを誘導して、じすさんを生贄にして、サエを取り戻そうと思ったの。でも失敗しちゃったんだ。私はサエを失ったままなのに、ふみあきくんは本物の史明くんが帰って来て、ズルいよね!!!!!!どうしてサエは帰って来ないのに!!!!!ふみあきくんは失ったものを取り戻せたのよ!!!!!!!!!!!」(本人執筆)


ピロナスさんが絶叫する。


「ま、結局ふみあきくんもじすさんも死んじゃったけど、サエは取り戻せなかった……。それで長いこと考えて、わかったの。つまり、人類は滅んだほうがいいってことが。苦しみ悲しみ痛み……あらゆる不幸から人間を解放します。そのために今日まで準備してきました。改めてみなさん、集まってくれて本当にありがとう!なるべく痛くないようにやるからね。 わからないかな、世界に満ちた苦しみや悲しみの総量は、喜びや幸せとは比較にならないほど大きいの。ときどき新鮮な空気を吸わせてもらうために冷たい汚水に浸けられてもがいている、それが人間という存在なんだよ。サエを失って、そのことがわかった。楽しい時間はずっとは続かない、どころかすぐ終わってしまう。出会いには必ず別れがある。それが輝くものであればあるほど、喪失の痛みは耐えがたいものになる。人はどこまでいっても一人ぼっちなのに、一人では生きていけない。傷付くと決まっているのに、この世に産まれ落ち、もがき苦しむの。こんなにも哀れな人類の生きる世界ときたら、東京の夏は気温がついに50度を越え、各地の紛争はいっこうにやむ気配もない。人類はこれ以上の苦行を重ねる必要はない。この苦しみを終わらせないといけない」(本人執筆)


私達は、誰一人として、声を発することが出来なかった。

そして、ピロナスさんは、しばらく空の向こうを見詰めて、じすふみさんを見た。


「じすふみくん、今日は来てくれてありがとう。じすさんが生きていた時から、女の子に興味がなさそうだった理由が、ようやく分かって良かった」


ピロナスさんは、一歩ずつ、じすふみさんに歩み寄る。


「ピロナスさん、身柄を拘束させて貰います。あなたは正常じゃない」


「ええそうよ、私は壊れちゃったの、サエが居なくなった時から、もうとっくに壊れていた。もうどうやっても心に空いた穴は埋まらないの。人と人が出会うから、別れがあるんだってようやく分かったんだ。だから私は今日、人類を滅ぼす。人が居なかったら、出会いもない。サエを失う事も無かった。分かるよね、じすふみくん?」


一歩ずつ、歩み寄る。


「分かりたくはありませんが、言っていることは伝わって来ましたよ。でも……」


じすふみさんは、足元に視線を落とす。

そして、再び、ピロナスさんと向き合う。


「俺は、この世界が好きです。みんながいて、時には傷付けあったり、理解し合えないことだってある。でも、父さんと母さんが俺達に残してくれた世界を、俺は失いたくありません。その中には、勿論、ピロナスさん、あなたも居る。ピロナスさん……俺達と一緒に、この世界で生きて行きましょうよ、まだ戻れるはずだ」


一歩ずつ、歩み寄る。

そしてついに、一歩の距離で向かい合った。


「じすふみくん、ありがとう。お姉さん嬉しくて、ちょっと泣きそうかも」


ピロナスさんは、目の下をぬぐう仕草をした。

そして、背中に背負っていたリュックサックを地面に下ろし、右手を中に入れた。


「でもね……じすふみくん、やっぱり私達は分かり合えないみたい。私はやる。もうサエがいないこんな世界なんて私には耐えられない。だから……」


リュックサックに入れていた右手を、引き抜いた。

その手には、大型ナイフが握られていた。


「生意気なクソガキね!!!!!!あなたには最初の生贄になってもらうわ!!!!!!!!!!」


その右手が、じすふみさんに向かって、突き出された。


「!!?」


じすふみさんは完全に虚を突かれた。


「じすふみさん!!!!!!!!」


私は叫ぶ。


血飛沫が、舞い散った。


しかし。


その血飛沫は、じすふみさんの物ではなかった。


ピロナスさんとじすふみさんの間に、割って入るように。


飛び出した巨体の胸から背中に、ナイフが貫通していた。


「ア……」


私は、絶叫する。


「アマヒサさん!!!!!!!!!!????」


巨体が、地面に崩れ落ちた。





承----------------------------------------------------------------------------------------------





アマヒサさんは、緑のエメラルド、私のお父さんと同じ時期にAMファンだった、歴史の長い人だった。

じすさん達が亡くなった後も、定期的にAMオフを企画し、残されたAMファン達をつなぎ留め、20年経った現在までAMのファンコミュニティを存続させてくれた人の一人だった。

今回のPIPインフィニティも、企画の段階から協力してくれて、今朝もスタッフとして、公園中にカードを配置して回ってくれていた。


「アマヒサさん!!!!


じすふみさんが、うつぶせに倒れこんだアマヒサさんを仰向けに起こした。

胸から、背中にナイフが貫通して、アマヒサさんの胸と口から、とめどなく血が流れている。

私も、隣にいるYOKOさんも、体が動かなかった。


「がっ……グフッ……」


アマヒサさんの顔から、どんどんと血の気が引いている。

そんなアマヒサさんを見下ろすピロナスさんの右手には、アマヒサさんの心臓が握られていた。


「あらあら、私はじすふみくんにまず生贄になって欲しかったのに。アマヒサくん、つまらない正義感なんか出すからこんなことになるのよ?まあ、今死ぬかもう少し後死ぬかだけの違いだけれどね」


ピロナスさんが、ナイフに滴るアマヒサさんの赤い血を、舌で舐める。

そして、アマヒサさんの心臓を地面に置き、その周りに、アマヒサさんの血で、何か法則性のありそうな線を描いていく。


「あ……あれはまさか!!!!?」


よく聞いたことのある、男性の声が後ろから聞こえた。


「ちんねんさん、あれは一体!?」


声を発したのは、アマヒサさんと同様、昔からのAMファンの、ちんねんさんだった。ちんねんさんは、風の噂によると、普通の仕事ではなく、なにかスパイのような仕事をしているようだった。その黒スーツとサングラスの特徴的な風貌から、我々AMファンからは、尊敬の念を込めて、エージェント・ちんねんと呼ばれていた。

ちんねんさんは、ピロナスさんが書き出した幾何学的な線を見て、驚愕の表情を浮かべている。


「ぼ……僕は昔、エージェントとしての修行をしている時に、呪文の勉強もしていた。数ある呪文の中でも、師匠に、絶対に関わるなと言われていた呪文の魔方陣が、確かあんな形だった……あれは禁呪だ。関わる者すべてに破滅をもたらす、滅びの呪文……」


ピロナスさんは、魔方陣を描き続けている。


「誰か、アマヒサさんを運ぶのを手伝ってくれ!!!」


じすふみさんが叫ぶと、それまで地面に縫い留められたように動かなかった体が、解き放たれた。

私とYOKOさん、ジスマメ、ポジス、ジスツネ、ジスエメ、フミヴェネさんの他、10人ほどがアマヒサさんまで走り、その500kgを超える巨体を抱きかかえ、ピロナスさんから距離がある場所まで運んだ。


「Es a rah a carnal……Es a rah a carnal……Es a rah a carnal……lube sea kiss ah…」


ピロナスさんは、何やら魔法のような言葉をつぶやき続けていた。

すると、アマヒサさんの心臓を中心に描かれた、魔法陣が、黒い光を放ち始めた。


そして、私は、目を疑う。


ピロナスさんの肉体からも黒い光が放たれ始め、宙に浮いた。

10メートルほどの高さまで浮上したピロナスさんは、閉じていた目を開ける。

その濁った眼で、下にいる私達を、見下ろす。

すがすがしいような、笑顔を浮かべて。






……サエと過ごしたのはどれくらいの期間だったのか……、5年か6年くらいなのかな。サエと一緒にいられるならどこで何をしてもよかった。とにかく口実を作って、あれを食べよう、あそこに行こう、山に登ろう、ゲーム実況をしよう、思い付く限りのことをした。サエはね、引くほど付き合ってくれたんだ。えっ今からやる?今からは無理だよ…に始まり、最後にはねえサエもう帰ろうよって具合。

夕方みんなで歩いているとき、サエが突然ルピアライブをやれ、路上でやれと言い出したことがあったの。できない、機材も何もないのにと言うじすさんに、サエはいいからいいからと近くの電気屋で小さなスピーカーを買ってきて、それで結局じすさんに……ルシファーは歌ってくれた。あの時の曲は何だったんだろう、もう思い出せないの。ただただ楽しくて、サエがむちゃくちゃだったことしか……。ブラックホールのようにぎゅっと詰まった日々だった。

ねえサエ?だから一緒に、こんな世界ぶち壊そうよ。もう誰も傷付くことのない、無の世界にしよう。じすさん達もきっと分かってくれるよ。

……さあ、始めよう、サエ。(本人執筆)





            ―月交信【ムーン・テレパシー】—






★演出動画>>>ttps://youtu.be/mi-dqvtc-KY?si=Wtb7-sV3nr9EsywS



















転----------------------------------------------------------------------------------------------







宙に浮くピロナスさんの背後の空間に、巨大なヒビが入る。

その向こう側には、真っ黒い、何もない空間があった。

空が割れ、空間が崩れ落ちる。

その黒い空間から。

巨大な手が、【こちら側】に入って来た。

邪悪で、おぞましい、巨大な手が、空から地面に降りてくる。


「あ……あれは一体……」


私は混乱する頭を必死に冷まそうとして、ちんねんさんを見る。

ちんねんさんもパニックになっているのだろう、体を震わせていた。


「僕は、ノーザンバランドの古文書の全てを解読出来たわけではなかったけど、断片は分かったんだ。それを今思い出した……あの魔法陣は、魔界から、【魔王】を召喚する魔法陣だったんだ。自分の思い出と近しい人間の心臓を依り代に、世界を滅ぼす【魔王】を召喚する……そういう魔法陣だったんだ」


ちんねんさんは、状況を飲み込むように、自分を落ち着かせるように、話す。


「じゃあ……あの手は……あの向こう側にいるのは……【魔王】……!?」


空に空いた黒い穴。

その向こうから、

その全てが姿を現す。

それは、人間のような見た目をしていた。

世界中の神話に登場する神をごちゃまぜにして、それでいて何処にも存在しないような、邪悪でおぞましい造形をしていた。


そして、黒い穴から、上半身が現れる。

上半身だけで、500メートルはありそうだった。

そして、その顔に、私は見覚えがあった。


「あれは……サエさんのような……でも何か違う……」


私はYOKOさんを見る。YOKOさんも同じように感じているようだった。

そんな私達を見て、ちんねんさんが言う。


「僕は中原サエさんとは会った事がないから知らないけど、きっとあの【魔王】は、召喚した人間の思い出が色濃く表れるんだと思う。だから女性のような見た目なんだろう」


【魔王】サエ。

世界を壊す神。

そんなものが、顕現してしまった。


ピロナスさんは宙を移動し、魔王の肩に、腰を下ろした。


「ねえサエ、まずはどうしようか?そうだね……まずは東京を消滅させようか。東京が無かったら、私達も出会うことがなかったからね」


ピロナスさんは魔王に語り掛ける。


その言葉を聞き、魔王は、閉じていた目を、開いた。


その視線の先には、平和島公園より北側の、東京全域があった。


その次の瞬間。


その両目から、まばゆい光……レーザーが発射された。


「!!!!!?」


爆風が私達を包む。

私達は吹き飛ばされないように、互いの身体を掴む。

砂埃で辺りが覆われ、それが収まるのにはしばらく時間が掛かった。

風景が晴れ、何が起こったのかを、私たちは目にした。


そこには、何もなかった。

さっきまで、ビルが地平線の向こうまでビッシリと建っていた、そこには何もなかった。


「さすが私のサエ!足立区くらいまで消滅したかな?」


魔王の肩に座るピロナスさんが、嬉しそうにはしゃぐ。


「そんな……そんなことが……」


私は、震えることしか、出来なかった。

誰もの眼には、絶望の色が濃く表れていた。


そんな時。


「みんな、ここにいたら危ない!!!!平島駅までいったん逃げよう!!!!!」


じすふみさんが叫んだ。


その声に、私はハッと冷静になる。


「みなさん、移動しましょう!!!!!」さあ早く!!!!」


じすふみさんが先導し、PIPインフィニティの参加者100人は、移動を開始した。


私とYOKOさんは、かろうじてまだ息のあるアマヒサさんを担ぎ、走る。


「緑ちゃん、YOKOちゃん……グフッ……」


「アマヒサさん、しゃべらないでください!!!!!病院まで我慢してください、絶対に助かりますから!!!!!!」


アマヒサさんの口から、血が溢れる。


100人が移動し始めたの、ピロナスさんは上空から見下ろしていた。


「駄目よ緑ちゃん、まだサエは全力じゃないの。今日来てくれた100人がみんな死んでくれたら、サエは完全体になるんだから……逃がさないわよ」


そう呟き、魔王は、逃げる我々に向かってレーザーを発射する。


すさまじい熱量と破壊音、爆風が我々を襲う。


「うわっ!!!!!!」


爆風が巻き起こる中、目を開けると、目の前を走っていた参加者……10人くらいは居ただろう……が、消滅していた。


「う……うう……」


私は、絶望に震えた。

どうして、こんな事になってしまったんだろう。

ピロナスさんが私達に声をかけてくれて、一緒に企画した、PIPインフィニティ。

カードをデザインして、ルールも考えて、参加者を募って。

100人の応募があった時は、私とYOKOさん、ピロナスさん、三人で喜んだのに。

どうして、こんなことに……


その時。

遥か遠くの空から、音が聞こえた。

影が3つ。

すさまじい速さで、何かがこちらに飛んできていた。


「あれは……心神Ω-1!!!!!自衛隊!!!!?」


PIPインフィニティの参加者の誰かが叫んだ。

自衛隊の戦闘機が3機、魔王に向かって飛んで来ている。

そして、3機から、ミサイルが魔王向けて発射された。

直撃。

すさまじい爆風と音と共に、粉塵が舞い上がる。

しばらく舞い上がっていた砂煙で、私達の視界は奪われていた。


「や……やったか!!!!?」


しばらくして、砂煙が晴れた。


そこには、何事も起きなかったかのように。


魔王健在。


「自衛隊がもう出てくるなんてね。よっぽど有事だと思ってくれたんだ、嬉しいね、サエ?」


ピロナスさんは魔王に笑顔で語り掛ける。


「でも、私達の邪魔は、させないわよ。やっておしまい、サエ」


そして、次の瞬間。


再びレーザーが発射され、まばゆい光がしたかと思うと、戦闘機は3機とも消滅していた。


「そんな……自衛隊も歯が立たないなんて……」


私は絶望のあまり、体の震えを止めることが出来なかった。




「やれやれ……僕がやるしかないようだね」


不意に、声がした。


そこには、黒スーツの男性が、両手に銃を持ち、立っていた。


「ちんねんさん……いや、エージェント・ちんねん!!!?」


ちんねんさんは、魔王と私達の間に、立っている。

まるで、私達を守るかのように。


「僕がおとりになるから、緑ちゃん達はそのうちに逃げるんだ。アマヒサさんを無事病院に送り届けてくれよな」


「ちんねんさん!!!!!ダメです、死にますよ、一緒に逃げましょう!!!!!!」


私は、いつの間にか、泣いていた。

両目から、とめどなく涙が零れ落ちる。

そんな私を見て、ちんねんさんの、サングラスをかけた目で、ほほ笑んだ。


「僕は、ずっと考えていたんだ。じすさん達が死んだ20年前の、あの時から……僕がAMに何が出来るのか、ずっと考えていたんだ。こんな時くらい、カッコつけさせてくれよ」


「ちんねんさん……」


「さあ、行ってくれ!!!!後の事は僕に任せろ!!!!!」


私は、涙をぬぐう。


「ちんねんさん、すみません……私達、行きます。でも、絶対に生きて下さい!!!!!次、絶対にまたPIPやりますから、チームのリーダーとして出て下さい!!!!!!!」


「勿論さ、僕を誰だと思っているんだい?僕は、エージェント・ちんねん。闇を駆ける狼だ」


そう言い、ちんねんさんは魔王に向かって走り出す。


その次の瞬間。


魔王の眼が光ったかと思うと、ちんねんさんは消滅していた。


「ちんねんさーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


私達は絶叫する。


「もうダメだ……おしまいだ……」


生き残っている、参加者たちが、次々のその場に腰を下ろした。


諦め。絶望。


これ以上ないくらい、どうにもならない状況。


私達は、ここで死ぬ。


その現実を、眼前に突き付けられた。


「グッ…グフッ……緑……ちゃん」


アマヒサさんが、口から血を吐きながら、私に話しかけて来る。


「アマヒサさん……ごめんなさい、こんなことになってしまって……」


私は涙を堪えられなかった。


「いいかい、緑ちゃん。よく聞くんだ……」


「アマヒサ……さん……!?」


アマヒサさんが、私に何かを伝えようとしている。

残された命を燃やして。

その瞳は、絶望には支配されていなかった。

その瞳には、希望の光が灯されていた。


「僕は、実は、20年前、じすさんが死んだあの日……THE SPA西新井に誘われていたんだ」


「!!!!?」


私は動揺した。

あの場所に誘われていた……!?

アマヒサさんは、ゆっくりと続ける。


「でも僕は、行かなかった……当時、転職したてで、仕事が楽しくて、家でもずっと仕事をしていたんだ……でもそんな時、エレガンザコローナで、大丈夫Pと話した時に、そういえば知り合いのXXXXがXXXXXXですっごいXXXXXなんですよね、いや絶対にXXXXXXXですよ、という話をしていたら、大丈夫PがXXXのマッチングアプリを作ってはどうですか?と言ってきて、僕は脳に電流が走ったような衝撃を受けた……それは全人類が一度は考えても、絶対に口にすることは出来ないようなアイデアだったからね。それから僕はそのアプリを開発し始めた……それこそ朝から晩まで四六時中さ、だから僕はTHE SPA西新井に行かなかった……それから、ずっと後悔していたんだ。僕があそこに居たなら、もしかしたら未来は変えられたんじゃないかって……」


アマヒサさんがしゃべるたびに、口から血の気泡が溢れる。


「だから僕は、やり直せるんだったらやり直したいと思った。きっとピロナスさんが、中原サエさんを取り戻したかったのと同じなんだと思う。ピロナスさんは世界を滅ぼすという選択に至ったけれど、僕は違う……またみんなと、じすさん達と会いたい、そういう未来を夢見たんだ。僕も銀河百貨図書館で、ノーザンバランド人の魔法について研究した。ピロナスさんが発見出来なかった魔法を、僕は見付けたんだ……」


そう言い、アマヒサさんは、懐から、平和島公園のマップを取り出す。


「僕は今朝、カードを隠しに、平和島公園を歩き回った。それは勿論、PIPインフィニティの為の事でもあった。けど、この地図を見てくれ。何か気付かないかい?」


私は、アマヒサさんから、マップを受け取る。


「これはカードが隠されている場所を記した地図だ。よく見てみてくれ」


私は、地図を眺める。


「ッ!!!!!!この配置は……六芒星!!!!!!!」


アマヒサさんは、口元に笑顔を浮かべた。


「そうさ……僕はカードの配置で魔法陣を描いていたんだ。その魔法は、禁呪……この世の理を捻じ曲げる封印された魔法だった。でも僕はやろうと思った。もう一度、彼等と会いたかった、それが僕のこの20年の全てだった」


そう言い、アマヒサさんは、目を閉じた。

そして、次の瞬間。

平和島公園の地面に、光る巨大な魔法陣が、出現した。


「こ……これは!?」


私達は光に包まれる。

そして、魔法陣を中心に、砂埃が舞い上がった。


その光景を見て、アマヒサさんは、笑顔を浮かべた。


「サプライさん……俺も、ようやくそっちに行けます……俺は、うまくやれましたか……?サプ……ライ……さ…………」


そして。

アマヒサさんは、動かなくなった。


「アマヒサさん……!」


私は、徐々に熱を失いつつあるアマヒサさんの手を握り締める。

ちんねんさんに続いて、アマヒサさんも……。

私は、涙を止めることが出来なかった。


どれだけ時間が経っただろうか。

実際には10秒にも満たない時間だったのかも知れない。

視界を遮っていた、砂埃が、徐々に晴れていく。

私は、砂埃の発生源……魔法陣の中心に、目を向ける。


そこには、何かが、あった。

いや、居た。


肌色をしていた。

それも一つではない、たくさんだ。

人間だろうか?

20人くらいの、裸の男性達。

見覚えのある、顔がたくさんあった。




「じすさん……!!!!!?」



もう、この世には存在しないはずの顔が、そこにはあった。










結----------------------------------------------------------------------------------------------





「一緒にジャンプしようぜ!!!!!!!!!!!!!!!!」


「ウオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


次の曲は、体力の限界までジャンプする、SFだった。


俺……FMAKは、ジスカルドを殺害しようと、サウナ室で重本店長を人質にとり、

じすさんにルピアライブをやれと迫った。

しかし、その最中に、友人の史明が生存していたことが発覚し、俺とじすさんは和解した。

そしておさまりがつかないルシファーがルピアライブを続行したのだ!!!

俺達は、ルシファーの歌唱に合わせてジャンプする。

どこまでも高く。

星に手を伸ばしたら届きそうなくらい、高く。

いける……いけるんだ!!!!!!!

俺達はどこまでも行けるんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


曲がラスサビに突入した。

俺達は残された体力を振り絞るように、ジャンプする。

今日、一番高いジャンプを、俺はした。


次の瞬間。

サウナ室の空間にヒビが入り、ジャンプしていた俺達は暗黒の空間に放り出された。


「うわっなんじゃあ!!!!!?」


昔、アニメのドラえもんで観た、タイムマシンの空間。

そんな何もない、冷たくも暖かくもない空間だった。

そして、俺達は自分がどこにいるのも分からないまま、どこかへと落ちていった。

底がない闇の中へ、ひたすら落ちていく。

そして、俺は、意識を失った…………………………………………………………………

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………












俺は、目を開ける。

そこは、先程までいたサウナ室ではなく、

広い公園のど真ん中のようだった。

俺はあたりを見回す。

じすさん。はなまめさん。小崎さん。つねくん。VeNEさん。クロスくん。藤本さん。

史明。重本さん達……サウナ室にいた皆が、裸のままそこにいた。


「じすさん……これは一体……!!!?」

「FMAKくん、僕にも何がどうなっているのか……」


じすさんも、誰も、何が起こったのか理解できている人はいなかった。


「でも見覚えのある公園だけど……うおっ!!!!?」


じすさんが突然、何かに驚く。

俺はじすさんが見ていた空中に視線をやる。


そこには、

500メートルくらいはある、禍々しい、何者かが、居た。

そして、その肩には、見覚えのある女性が、立っていた。


「ピ……ピロナス……!!!!?」


ピロナスも、地面にいる俺達を見下ろしていた。


「じすさん……!?さっきの魔法陣は時空と次元を繋げる呪文だったわけね、アマヒサくん、やってくれるじゃない」


ピロナスは、何か苦笑いをしていた。


「おいピロナス!!!!!!一体何がどうなってるんだ!!!!!!!!!そのでかいのは何なんだよ!!!!!!」


俺はピロナスに叫ぶ。


「FMAKくん、久しぶりね。ここは貴方達のいた時代から20年後の東京よ。アマヒサくんが貴方達をあのサウナ室から現代に召喚したみたいね。そしてここは平和島公園。そしてこれは世界を滅ぼす魔王。【魔王サエ】よ」


「なんだって……!!!!?VeNEさん、理解できましたか?」


俺はVeNEさんに救いを求める。


「ああ、どうやらピロナスさんの言っていることは本当のようだ。確かにノーザンバランド人の禁呪に、世界を滅亡させる魔王を召喚するものがあったはずだ。ピロナスさんはおそらくそれを発動させたんだろう」


「VeNEさんが言うのなら本当なんだろう……VeNEさん、一体どうしたら!!?」


「どうやら、あの魔王はまだ完全体じゃないらしい。次元のはざまから上半身だけがこちらに顕現しているけど、おそらく完全体になったらもう誰にも止められない。逆に言うと、今ならまだなんとかできるってことだ。つまり、魔王をあの次元の割れ目の向こう側に押し返せばいい」


VeNEさんはこの状況を冷静に見ていた。

そして、じすさんが、ニヤリと笑う。


「だったら簡単な話だ」

はなまめさんが一歩前に進み、言う。


「僕たち、こんな状況、何回も乗り越えて来たからね」

つねくん。


「武士道とは死ぬことと見つけたり!!!!!!!」

小崎さん。


「えーっ、またやるんですか!?いやだなあ疲れるの……」

クロスくん。


「いっちょやったりますか!」

藤本さん。


「FMAKくん。やってやろうじゃないか、僕たちで!!!!!!」

じすさん……。



俺は、みんなを見て、頷く。


「ピロナス、君の野望は、俺達が止める!!!!!!!!!

 俺達の戦いはこれからだ!!!!!!!!]




つづく












~次回予告~

ついに始まる最終決戦。

全ての伏線が回収され、大団円を迎える。


次回、

俺とじすさんとFMAKと時々熱波と

最終章-決戦-

見てください!







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アンディーメンテwebオンリー

サークル名:緑のフミラルド

作:緑のエメラルド






オレとジスさんと時々SF  -夏の旅行編Ⅱ-






前回までのあらすじ


2023年、春のある日、昨年の夏にアンディーメンテファンの人たちと行ったオフレポを書いていたら、おかしいことに気が付く。

「ジョンDっていったい誰なんだ。」


そもそも、私は何でこのオフレポを書いているのかわからない。

書かなきゃいけないと思い書いている。


すると突然、携帯電話に着信が入っていることに気が付く。

ジスさんからだ!!

直ぐに着信を返すと、1コールでジスさんが電話を取った。

こんなに早く着信を取ることは少ないのにと思いつつ、


エメ「どうしましたか?」

ジス「エメたん!!外見てみて!!夏になってる!!!!」

エメ「え?」

ジス「とにかく、外へ出てみてくれ!!」


そう言われて玄関のドアを開ける。

すると、どうしたことか!!!!

春先だったはずが、真夏日になっている!!!!!


一体、何が起こった!!!!!!


そう、終わるまで終わらない、仕事もすべて忘れて、遊びたいだけ遊べる夏休みになっていたのだ!!!


すると、私の携帯電話につねさんからも着信が来ていたことに気が付いた。







1.8∞


ジスさんと今は、何年の何月何にちなんだ!?となり、調べてみると、2022年の8月5日。つまり、5日前に行ったコテージでの宿泊オフの翌々日であった。

ジスさんと私はひとしきり、何がどうなったんだ!?という話をしたが、特に、何が変わるわけでもなく、何故、ループしたのかもわからないままだった。そして、テレビを付けてみても、このループ現象について報道されている訳でもない。誰もこの現象に気が付いていないという事までは分かった。


ジス「エメたん、近々、東京へ出てくることはできたりするかい?」

エメ「そうですねぇ・・・。ループした今が夏休みなので・・・。」

エメ「明日でも行けますよ!!」

ジス「そうなのww」

エメ「明日、早速、銭湯巡りしませんか!?」

エメ「ヤウルさんやアマヒサさんとか来れる人を呼んで!!」

ジス「ガッテン!承知の助!!」

ジス「コミュニティーにゲリラオフの告知をだしておくね!!」


エメ「ジスさん、ちなみに、話は変わるんですが、ジョンDさんって知ってますよね?」

エメ「昔からのファンの人でしたっけ?」

ジス「どうだったかな。2006年ころからアンディーメンテには出入りがあったと思うけど。」

エメ「そうなんですね」

ジス「え?何かありましたか?」

エメ「いや、特に何かあるわけではないんですけど、さっき、去年のというか、今日が2022年8月5日と考えると、一昨日のコテージオフのレポートを書いていたんですが、一瞬、ジョンDさんって誰だっけ?ってわからなくなって。」

エメ「いや、でも、ジョンDさんとこれまでに会った記憶もあるし、たしか、以前に開催した地獄の荒川ウォーキングオフにも2回とも参加してくれていたはずだから、間違いないですね。」

エメ「変なことを聞いてすみません」

エメ「あと、さっき、ツネさんから着信があったので、明日の銭湯オフに直接誘ってみますね!」


そういってジスさんとの電話は終了した。 






2.銭湯巡り


当日は、ゲリラ開催だったにもかかわらず、10時30分から4名が御徒町駅に集合した。メンバーは、ジスさん、クロスさん、ジョンDさん、エメラルドで、あまひささんは12時から合流、夕方のTHE SPA西新井からはヤウルさん、ツネさん、FMAKさん、ポーンさん、フジモトさん、はなまめさん、ヴェネさん、ちんねんさんなどが参加となっていた。

銭湯巡りの経路は燕湯(台東区上野)→ひだまりの泉・萩の湯(台東区根岸)→大勝湯(荒川区南千住)→THE SPA西新井の順となっている。最終、THE SPA西新井まで歩くというのもまた乙なところだ。


当日は集合時間に10分ほど遅れての到着となった。

私はいつも遅刻してしまう・・・。

駅の改札へ向かうと、既に集合したジスさん、クロスさん、ジョンDさんが見えた。


ジス「おはようございます!」

エメ「す!すみません!遅くなって・・・。」

クロス「エメたん、ひさしぶり!」

エメ「いや、遅刻して本当にすみませんでした・・・。俺はいつもこうだ。」

ジョンD「まぁまぁw」

ジス「じゃあ、早速行きましょうか!」


銭湯に向いがてら、コンビニで朝から缶ビールやチューハイを思い思いで購入し、銭湯の前で開封!!最高の夏!そして銭湯!!最高だ・・・。

時間がループしている危機感も忘れ、自由時間を過ごす。


燕湯は国の有形文化財に登録されるほどの銭湯で、脱衣場は昔ながらの銭湯らしく、板張り、大きなガラス扉からは奥の大浴場の富士山が迎えてくれる。大浴場は空色を基調とした手内装になっており、手入れも行き届いた清潔感のある空間になっている。ほぼ、一番風呂と言うこともあり、最高の瞬間。


ジスさん、クロスさん、ジョンDさん、エメラルドは全員、コテージ宿泊オフにも参加しており、その思い出話に花が咲きつつ、次回の宿泊オフはいつ頃にするかや、どこに行くのかという話で非常に楽しい時間が流れた。


銭湯を上がったのは12時手前で、その後、あまひささんが合流し、徒歩で次の銭湯、ひだまりの泉・萩の湯へ。

ちょうど、上野公園を挟んで反対側に位置する銭湯だ。

萩の湯へ向かう途中の歩道橋でジスさんが変な踊りをしていた。

12時10分頃に、萩の湯に到着。

ひだまりの泉・萩の湯はかなり新しめの小奇麗な銭湯だ。どちらかというと、THE SPA西新井に近い銭湯で、サウナ室や大浴場も非常に綺麗だ。しかも、大人520円!!!!お食事処もついて、もはやスーパー銭湯だ。


居心地が良すぎて萩の湯を出たのは13時50分。2時間近く過ごし、次の目的地、大勝湯へ。


前を歩くクロスさんがヒロツバの帽子をかぶり、青色の猫Tを来ているのが印象的だった。

アマヒサさんは何故か長袖のウインドブレーカーを着ていた!


アマヒサさんが僕は雲です。という謎の発言をして、ジスさんに「何を言ってるんだ君は!」と言われていた。

途中、ジスさんがローソンでイチゴのフローズンシェイクを買っておいしそうに飲んでいた。


あぁ、夏だなぁ。

忙しさで忘れていた、アンディーメンテで過ごす夏休みを少しずつ思い出してきた気がした。


大勝湯は南千住のジョイフル三ノ輪商店街の中のビル1階にある銭湯だ。昔ながらの銭湯というよりは、レトロな銭湯のイメージが強い銭湯。遠くから見ると、ビルの上には煙突が立っており、昭和って感じ。入り口もオレンジライトの看板で非常に雰囲気があり、中も昭和っぽい、茶色基調の銭湯だが、中は綺麗で、薬湯や塩湯といった変わったお湯も楽しめる。


14時50分頃に入店して、出てきたのは16時頃。今からTHE SPA西新井まで歩いて行ったら遅くなってしまうと言うことで、日和って電車で西新井へ!





3.THE SPA 西新井


見慣れた西新井駅に到着する。

駅では、合流を予定していたヤウルさん、ツネさん、フジモトさん、はなまめさん、ヴェネさん、ちんねんさんと合流し、THE SPA西新井へ向かう。


早速、My best friend tuneと話す。

エメ「お久しぶり!!!!」

ツネ「エメたん!お久しぶりですね。」

ツネ「いつまで東京にいる予定なんですか?」

エメ「後、4日くらいは居る予定ですよ!」

エメ「今回も浅草に泊まっているので、どこかのタイミングで遊びに行きませんか!!??」

ツネ「イイですね。」


前を歩くヤウルさんがこちらを振り向き、赤の養命酒Tが見える。


ジョンD「エメさん、ツネさんと仲いいですね!」

エメ「あー、実は、ツネさんとは、アンディーメンテに入った頃からの知りあいなので、仲がいいというかw」

ジョンD「なるほどですねー」

エメ「ジョンDさんは誰か、そういう感じの人っていたりしますか?」

ジョンD「僕と同じ時期にアンディーメンテに入って、仲のいい友達かー」

ジョンD「僕と同じころに入ったアンディーメンテファンって、実は、周りにはいなくて、そういう感じの友達って居ないんですよねー」


ジスさんからは、2006年頃からアンディーメンテ界隈にいると聞いていたので、意外だなぁと思いつつ、地方なら、そんなこともざらにあるかなぁと思い、特段、不思議がることもなく、スパへ到着。


脱衣所では、フジモトさんと話す。

フジモト「エメラルドさん、お久しぶりというか、先週あったばかりか」

エメ「ですねw」

フジモト「なんか、結構時間が開いてる気がするけど、3日前か」

エメ「なんか、また、宿泊オフが計画されてるみたいなんで、一緒に行きましょう!!」

フジモト「もう次が計画されてるのw」

エメ「みたいですよw」


話しながら、大浴場へ移動する。


そこには、既に入浴しているFMAKさん、ポーンさんが!!


FMAK「お久しぶりです!」

エメ「お久しぶりっす!3日ぶりくらい?」

FMAK「かみさんは一緒じゃないんです?」

エメ「今日はコントラさんと遊んでるみたいです」

エメ「なんか、また、宿泊オフが計画されてるみたいなんですが、一緒に行きません?」

FMAK「行ってやりましょう!!」

ポーン「この前のオフは行けなかったから、今度は行こうかなぁ。」

エメ「是非、行きましょう!!」

エメ「そして、昔みたいに猥談しましょう!!!!」


その後、大浴場の外湯へ移動し、はなまめさんとちんねんさんと話す。


エメ「お疲れ様です」

はなまめ「おつかれー」

はなまめ「エメたんとはこの前のオフぶりか」

エメ「ですね」

エメ「ちんねんさんはお久しぶりです!」

ちんねん「お久しぶりです」

エメ「いつぶりでしたっけ」

はなまめ「ライブとかやない?」

エメ「そうかも、と言うことは、かれこれ1年ぶりくらい?」

ちんねん「多分そうですね」


話していると、大浴場から同じく外湯へ移動してきたヴェネさんが。


ヴェネ「エメたん、オフぶり。」

エメ「お疲れ様です!」

ヴェネ「なんか、またお泊りオフがあるって聞いたけど。」

エメ「そうみたいなんですよ!」

エメ「今年の夏は楽しそすぎますね!!」

大浴場→外湯→サウナ→水風呂→大浴場とループを繰り返し、皆と話しながら、館内で食事を済ませ、そうこうしているうちに9時をまわる。






4.ジョンD


THE SPA西新井から出ると、今回は、ジスさんは徒歩、何人かはバス、それ以外は駅へ向かう。各自、電車に乗り、途中下車して別れていく。寂しくもありながら、まだ4日も東京にいること、そして何より、大問題ではあるが、ループしていることもあり、しばらくは遊べそう!という感覚で、その余韻に浸る。


そんな感覚になる訳がない。

ジョンD。おまえは誰だ。

全員が散り散りになるタイミングでみんなから離れ、一人になる。

今日、ずっと見ていた。ジョンDの行動。全く持って問題のない行動。これまでにも何度もあったことのある感覚。それなのに違和感がある。明確な会話や行動がどうも思い出せない。


どうやらジョンDは電車のようなので、違う車両に乗り込む。自分がやっていることは、まかり間違えばストーカー行為だなと思いつつ、好奇心が先行する。

最終的に、乗り換えを挟みつつ、彼が下車したのは足立小台だった。


足立小台の改札を彼が出る間際、後ろから声をかける。


エメ「ジョンDさん!」

彼が振り向いて驚いた顔をする。

ジョンD「エメさん。」

ジョンD「びっくりした!エメさんも足立小台なんですか?」


エメ「いえ、実は、私の最寄りは足立小台ではないんですが・・・。」

そう言って黙る私に、彼が口を開く。


ジョンD「それなら、私に何か用事でもありましたか?」

エメ「はい。」

エメ「ジョンDさん。あなた、何者ですか?」


沈黙が流れる。


ジョンD「ははは。気が付いたんですね。」

ジョンD「と言うことは、エメさん、TSですね。」


そう言って彼はぶつぶつと独り言を言い始める。

ジョンD「エメさんがTSって記録になかったんだけどなぁ」

ジョンD「うーん。この際、始末を始めた方がいいのか?」

ジョンD「いや、ダメだろう。」

ジョンD「5人にコンセンサスを取った方がいいか?」


そう話しているのを唖然としてみていると、突然、彼の首がこちらを向き、駆け出してくる。


ヤバい!!!

そう思った瞬間!!!

ききききいいいいいいいい!!!!!!!!!!

彼と私の間に割って入るようにタクシーが急停車する!!!!

な!何だ!!!!

逃げなくちゃ!!!!


と思っていると、タクシーのドアが開き、FMAKさんとヤウルさんが乗っているのが見えたか、タクシーに引きずり込まれ、そのまま急発進していく!!!


そのタクシーを後ろから猛スピードで追ってくるジョンDの姿が見えたが、タクシーのスピードの方が速く、徐々に距離は離れ、彼が小さくなっていくのが見えた。


つづく

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