ひんやりとしたみずあめに染みこんでいくボランティア/中靍水雲

中靍 水雲

みずあめに似たぬったりとしたボランティア

ひとびとは降る雨のなか同じ傘で似た物語を歩いている


旧式のカーステレオから流れでる晴れか雨かもわからない予報


やわらかい母に似た手がめくってくページのゾウがなみだを流す


モーニングコーヒー味の宗教でおいしいという笑顔の行事


先生が花丸をつけていくたびに見えてたものが汚されていく


猫みたくあればよかった人はもうきれいなもので爪もとげない


色あせた背表紙だったほんとうがわからないまま頭をなぞる


指をさす場面がおそらく違っててこれでもいいといえたら楽で


みずあめはしっとりとしてひらひらと生きる金魚に重しをのせる


食レポはキリギリスには荷が重くオープンカフェに寒いよと泣く


宝石のようなきれいな自己犠牲とはもうろうとした春の夢


正義とはわたげをすべて追いかけてあなたのそばに植えることだよ


やさしいはボランティアだと絵本から知ったひとからでる衝撃波


きらめきを読み聞かせては心ごと落としてあげたにせものの時間


アレルギー症状が出てそりかえる時計の針はタイトルを指す


その場から脱出をするために唱える言葉すら忘れてしまう


何味か知らないパンのやわさから味わっているこの世界観


降りそそぐ花いっぱいの場面にもふわりと揺れる無地のモビール


図書室のベランダだけに吹きこんだ知らない土地の本のにおいが


にせものであればあるほど本物になれる物語やさしさも

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