第6話
私は妃殿下とのティータイムで、告白されたことを告げた。
迷っている私に妃殿下は腰を浮かし、ずいっと身を乗り出して尋ねてきた。
「どうして猶予がほしいの? あなたが私の幸せを喜んでくれたように、私もあなたの幸せを願っているのよ」
「ですが……」
好きだと思った相手に、本当に好きで居てもらえる自分なのだろうか。
視線の先、ガラスのティーポットの中で茶葉が踊る。
のびのびと広がった茶葉が、透明な水を紅に染めていく。
その向こう側で、ミレイラ殿下が私に微笑んだ。
「ねえ、もう一度信じてみない? 幸せになる未来を」
◇◇◇
結局、私は彼と幸せになった。
隣国宰相家に嫁いだ娘の才能を見抜けなかったと、実家はずっと揶揄されることになった。
元婚約者と親友は悪評が広まったので、その後なかなか縁談がまとまらずに苦労することになる。
最終的に二人がどうなったのかは知らない。ただ、結婚できたのなら私に連絡が来るだろうから――家督も、弟や女きょうだいの婿に取られたのかもしれない。
――数年後。
私は親友と、親友の夫。そして私の愛しい夫と避暑地で過ごす。
あの日飲まされた煮え湯は、煮え湯をネタに入れてもらった美しい紅茶の思い出に上書きされ。
当て馬にされた嫌な記憶も、すっかり忘れてしまった。
当て馬にされた悪役令嬢 まえばる蒔乃 @sankawan
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