今度は俺の番だ
「カズ、私ね…」
隣のベッドで反対側に寝そべる妻のエリが俺に吐露してきた…
「私、あの子の気持ちを分かってあげられてない気がするの……」
それは今年で中学生になる"義息"のユウヤのことだ。
「何でそう思うんだ?」
俺はエリに尋ねた。
「だってあの子が時折する寂しそうな顔をする原因が分からないんだもん………それで昨日、ちょっとした喧嘩で『死ねババァ!!本当の母親じゃないのに口出すなよ!!』…………って…言わ…………れて……」
ポタ
エリは泣いていた……
「……………どうかな」
俺はエリの頭に手を置いた。
「え?」
「本当に分かってられてないんだったらどうしてそんな"寂しい顔"って分かるの?」
「」
「本当に理解できてない人は理解できてないことにも気づかないよ」
「……………」
「それに…………昨日のあの後、ユウヤが俺に言ってきたんだよ……
『俺って最低だ…』って」
「」
「あの子もこれから育っていくんだ。俺達だってガキの頃は本当の親だろうと何だろうとよく喧嘩だって言い合いしてただろ?それが"今のアイツ"だよ」
「…………」
「ユウヤも多分、いろいろとある。悩み事や悲しい事だって俺ら以上にあるかもしれない」
俺は一息ついて言った…
「これからだよ?これからだ…!!」
「」
こんな言葉でエリが立ち直れるとは限らない……
けど、誰かが諭してあげないと……
誰かが支えないと……しっかりしないといけない……
正直、二人のことを思うと俺も凄い辛いけど、
これからだ。
俺は泣く、エリの頭をずっと撫で続けた………
雨の音は次第に強くなっていく中、俺はその強さに負けないくらいエリに…
妻に抱きついた。
懐かしいな……
俺も"義親"とはガキの頃よく喧嘩していたよ……
でもここまで生きてこれたのはあの人達のお陰だ……
今度は俺の番だ。
一話完結…人の愛情… アレクサンドル @ovaore
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