不気味な友達
願油脂
第1話
娘の友達が不気味なんです。
私は在宅勤務で基本的にずっと家に居るので自然と娘の面倒は私が見る形になるんですが、先日不気味な出来事がありました。
先週の水曜日、
時間は16時頃だったかと思います。
その日も私は家で仕事をしていて、妻は外で仕事なので仕事が一段落着いた私は自分で
コーヒーを入れて一服していると小学生になったばかりの娘が帰ってきました。
ガチャガチャッと鍵と玄関が開く音と同時に
「███ちゃん、入って入って!」
と誰かを連れてきた様子でした。
珍しい。
娘は人付き合いがあまり上手くなく、幼稚園の頃も友達らしい友達が居なかった為、自宅に友達を招く事は初めてだったと思います。
娘の成長に喜びを感じつつ、
せっかくだしお菓子くらい差し入れるか、と
クッキーとジュースを用意して娘の部屋を
ノックしました。
「入るよ」
そうドアの前で伝え、ガチャッと片開きのドアをゆっくり開きました。
いらっしゃい。よく来たね。
その言葉を口から出し切る前に私は言葉に詰まりました。
娘が連れてきた友達と目が合ったのですが、様子が明らかに変でした。
グイィと不自然なまでに横幅めいっぱいに
引っ張られた口からは黄ばんだ歯がむき出しになっており、目も白目を向いて息も獣の
ように荒く汚いものでした。
にも関わらず娘は平然と接していました。
あまりの出来事に私は娘に茶菓子を渡すと足早に自室へ戻り息を整えようと努めました。
あれは。なんだ。
見てはいけないものを見た気分でした。
きっと顔にも出てしまっていたと思います。
あれから1時間くらいしてガチャッと玄関を開ける音がしました。
気になって覗いてみると娘が玄関を施錠しており、様子を見るにどうやらあの子は帰ったみたいでした。
「…あの子は友達なのかい?」
私に背を向けて佇む娘に問いかけました。
「うん」
素っ気なく返す娘は私に背を向けたままこっちを向こうとしません。
なんだか様子がおかしい。
直感的に不安になった私は娘に近付き、そっと顔を覗き込んでみました。
すると娘があの子と同じように口をグイィと不自然なまでに横幅めいっぱいに引っ張り、白目を向いていました。
徐々に息が荒くなる娘に恐怖した私は
咄嗟に肩をガッと掴むと娘はハッと我に返り、いつもと同じ顔に戻りました。
何が起きているのか頭が理解しようとしません。私自身、息も荒くなり動悸で肋骨が折れてしまうんじゃないかと思いました。
何か悪い夢でも見ているんだろうか。
それから娘の様子は普段と同じでしたし、何より心配を掛けたくないからと妻には相談しませんでした。
ただ時折、本当に時折なのですが、
娘が洗面所の鏡の前で
「あと███日、あと███日…」とカウント
ダウンのような事を呟くんです。
口をグイィと引き上げ、不自然な笑みを浮かべながら。
まだカウントダウンの期日まで多少の日はありますが、娘の様子も相まって私自身気が気じゃありません。
このまま娘が呟く期日を迎えたらどうなってしまうのだろうか。
このままでは娘まで
あの子のようになってしまうんじゃないか。
そう思えて仕方ないんです。
完
不気味な友達 願油脂 @gannyushi
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