第10話 たまには喧嘩も

トントン。

そっと肩を叩かれて、私は飛び上がった。

「うわっ!」


思わず声をあげると、私の肩を叩いた人……愛里が、しかめっ面でこっちを見ていた。


私が急いでイヤホンを外すと、愛里はしかめっ面のまま言った。


「あのさ。漫画借りていい?歌詞の参考にする」


ああ、私の少女漫画を、ね。いいよ、という意味を込めて私が頷くと、愛里は私の机の隣にある本棚のところに行き、物色し始めた。


さてと、私もデザインに戻ろっと。うーん、見た目はこんな感じかな?


私がデザインしたのは、ピンク、水色、黄色の三種類のTシャツワンピースを元にした衣装。下にパニエを履いてふわっとさせる。裾と袖口にフリルを付けて、首元には襟をつけて。で、そこにリボンをつけるでしょ。うーん、腰にベルトかなんか巻いた方がいいかな?キュッとした方が可愛い気がする。

あ、袖をパフスリーブにしたい!だけど、そんなの出来るのかな……?まあ、お母さんに聞いてみよっと。お母さん、昔は私たち三人お揃いの服を作ってくれてたから、お裁縫はすごく得意なんだよね。


ま、それは後で聞いておこっと。とりあえず、描くだけ描いてダメなら考え直せばいいよね!ていうか諦めたらいいよね!


あ、髪飾りとかどうしよう。三人おそろいのがいいなぁ。作れるかな?シュシュとかだったら出来そうだけど……私たちの普段の髪型的に合わないかな。いや、この衣装の時だけ変えればいっか。


とか私が考えていると。

トントン。

また私の肩が叩かれた。

振り向くと、しかめっ面をした愛里がいて。もう、さっきで用事済ませといてよ。


「もう、何?」


私がイヤホンを外して少しキレ気味に言うと愛里は「はぁ?」と言った。


「お母さんが夜ご飯できたよって言ったから声かけたのに、なんで愛里がキレられなきゃいけないの?意味わかんない。そんなに怒るんならずっとイヤホンしておけば!?」


プンプンしながら立ち上がり、部屋を出る愛里。


あー、やっちゃった……

そりゃ愛里は悪くないよね。夜ご飯だから声掛けてくれただけだもんね。

それなのに、怒っちゃったなぁ。いくら考えを中断させられたからって、今回ばっかりは全面的に私が悪いや。


ふと絵愛がいた方を見ると、いつの間にか絵愛もいなくなってる。多分、ご飯の準備をしに行ってくれたんだろうな。

部屋の電気を消すと、私も階段を下りて二階に向かう。ダイニングは二階にあるからね。ちなみに私たちの部屋、お父さんの部屋、お母さんの部屋は三階で、リビング、ダイニング、キッチン、風呂や洗面所なんかは二階。

って、それはどうでもいいよ!早いとこ愛里の機嫌をとらないと……じゃない、愛里に謝らないと。


私が急いで階段を下りてダイニングに向かうと、お母さん、絵愛、愛里が食卓についていた。お父さんはまだお店のほうね。


私が愛里の方を見ると、愛里はふんっ!と鼻を鳴らし、首を真反対に向けた。ごめんったら。


「あのさ、愛里、さっきはごめん。私が悪かったよ」


私が言っても、


「べっつにぃ〜?愛里全っ然怒ってないしぃ〜?」


と言う愛里。これは完璧に怒ってるよなぁ………

絵愛とお母さんは「またか」とでも言いたそうな顔をしている。まあ、私たち、結構喧嘩するもんね。


「ま、とりあえず食べましょう。私はこれを食べ終わったらお父さんと交代するからね」


喧嘩している私たちを見て呆れた顔でお母さんが言う。はあ、気が重いなあ……後でもう一度謝らなきゃ。


とりあえず、今はご飯だね。食べ終わってから、謝って、仲直りしよう。うん、せっかくのご飯だもん、楽しまなきゃ。


「いただきまーす」


と私が手を合わせると、じとーっとした目で愛里がこちらを見てきた。

ごめんなさい……

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HIghschool Dream Live! LovIng sIster編 薄氷 暁 @usurai_aki

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