変態

遠藤

第1話

耳を塞いでも聞こえてくる

悲しい歌ばかり


何もかもが信じられなくなって

殻の中に閉じこもった


真っ暗な闇の中

何もできず自分の事を憎んだ


どうしてこんなに苦しいのか?


どうして生まれてきたのか?


なぜ生きている?


なぜ自分だけ・・・


言葉は自分を責め立て

やがて身体はドロドロに溶けていった


もう終わりだ


何者にもなれない情けない一つの命が終わりを告げる


それでいい、静かに消えていけるならそれでいいんだ




ドロドロに溶けた身体の中に小さな光があった


とても眩しく揺るがない光だった


それは自分だった


初めてそこに本当の自分が在ることに気づいた


自分はやがて溶けた身体を飲み込み新たな自分を形成していく


生まれ変わりたいとの欲求が心の奥底から溢れ出してきた


外にある光に自分を魅せたいと願う気持ちが出てくる


光は容赦なく自分を照らすだろう


全てを隠すことができないほどの光が自分を縁取る


もういいんだ


もう隠れなくていい


受け入れよう


自分は自分であると


何者でもない、そう、自分なんだと


さあ、出て行こう


殻を破って光の中へ


この羽を広げ自由に飛んでいけるから




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変態 遠藤 @endoTomorrow

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