第12話 従姉妹の襲来

 ———春休み4日目。


「…………心配だ」


 いつもなら『ヒャッハー! 最高の時間だぜー! ゲームしよ!』となっているはずなのだが……如何せん梓川のことが心配過ぎてベッドの上で、悶々としていた。

 まだ4日しか経っていないのにこれとは、中々に先が思いやられる。


 でもなぁ……アイツん家は学校よりよっぽど魔窟っぽいし心配なんだよな。

 と言っても家の場所は分からんけど。


 流石に、未来でも家の場所は教えて貰っていない。

 まぁ言うて2ヶ月しか関わっていなかったのだから当たり前だ。

 梓川は警戒心も強いし、何より1番地獄の家をわざわざ紹介なんかしたくないだろう。


 そう分かっているのだが。


「あああああああ心配過ぎるぅぅぅぅ」

「どうしたのよぉ、緋色ぉ? そんな頭なんか抱えちゃって」

「ああ実は———????」


 俺は、訳を話そうと母さんに目をやり……言葉が全て吹き飛んだ。

 アフロの様に髪が全体的にボワっとなっている母さんの頭を眺め、もはや何をツッコめばいいか分からなくなった。


「……その髪型、素敵だと思うよ俺は。人前でしなければね」

「あらぁ〜そうかしら? でもこれぇ、ただの寝癖なのよねぇ〜朝起きて気付いたらなってたのよねぇ〜」

「それが寝癖!? 母さんが寝てる間に髪が自我持って暴れてない!? とてもただの寝癖程度でそこまでならんよ!?」


 いやはや我が母親ながら恐ろしい。

 この母親に対してだけは、俺が常にツッコミに回らないといけなくなるほどだ。

 常に適当なこと言ってツッコまれる俺がこれとか、普通に異常である。

 きっと俺の下らないことしか言わないお口は母さんの遺伝なのかな?


「はぁ……もう風呂に入ってきなよ。それは髪に水付ける程度じゃ直らんでしょ」

くしで直るわよぉ〜」

「母さんの髪芯なさ過ぎない!? 将来母さんが禿げそうで不安なんだけど」

「殺すわよぉ〜」

「不穏! 一気に物騒になったんだけど!」


 笑みを浮かべながらも瞳だけ笑っていない状態でブチギレる母さんに、俺は恐れ慄く。

 取り敢えずぺこぺこ謝っといて作ってくれたらしい朝ごはんの食パンをかじる。

 そして、10時だと言うのに家にいる母さんへと問い掛けた。

 

「てか今日休みなん?」

「当たり前よぉ〜」

「当たり前ではないだろ」

「だって結衣ゆいちゃんと舞衣まいちゃんが来るじゃないの」


 へぇ、結衣と舞衣が来るんだ……は?


「…………聞いてないよ、俺?」

「……ごめんねぇ?」

「よし、喧嘩だコラ! 幾ら母さんと言えどあの2人の襲来を言ってない大罪は万死に値する!!」


 結衣と舞衣。

 それは、俺の従姉妹である。









「———緋色おにぃー!」

「お邪魔します、緋色兄さん」


 あれから真剣な戦い(2人ババ抜き)で勝利をもぎ取った俺は、急いで支度をした。

 そして12時過ぎ。

 遂に従姉妹がやって来た。


 元気に俺のことを「緋色おにぃー!」と言うのが小学4年生の結衣で、俺のことを「緋色兄さん」と呼ぶのが中学2年の舞衣だ。

 結衣は地毛が色素の薄い茶髪で、いつも楽しそうにニコニコしている。

 対する舞衣は俺と同じ黒髪で、中学生なのに俺とか母さんより大人しい。


 そして———何方も従兄である俺の贔屓目に見ても、顔は結構整っている。

 

「あぁ、久し振りだな。いつ振り?」

「ん〜〜分かんないっ!」

「去年のお盆にお婆ちゃん家で会ったっきりですよ」


 結衣は一瞬唸りながら考えていたが直ぐに諦めてにぱーっと笑みを浮かべた。可愛い。

 そしてパッと答えてくれた舞衣は凄いと思います。


「あらぁ〜結衣ちゃん、舞衣ちゃん、久し振りねぇ〜いつ振りかしら〜」

「母さん、母さん。それ、俺が今の今やったからね」

「結衣分かるよっ! 去年のおぼん!」

「あら〜良く覚えてるわねぇ」

「むふー!」


 バッと手を上げて自信満々に舞衣の受け売りを述べた結衣。

 そんな結衣は褒められて嬉しそうに「えっへん」と胸を張っていた。

 

「……私が言ったのに……」


 おっと、舞衣ちゃんがむすーっと拗ねていらっしゃる。

 ここは俺がご機嫌を取らねば。


「俺は舞衣ちゃんが言ったって知ってるから許したってくれ。あのくらいのお年頃は褒められたがるもんなんだよ。あ、褒めて欲しいなら俺が幾らでも褒めてあげちゃう」

「……緋色兄さんが言うなら。あと、褒めるのはやめてほしいです。恥ずかしいですし」


 不承不承と言った感じで矛を収める舞衣。

 やっぱり中2という思春期真っ只中の女の子の相手は疲れる。


 まだ会って数分と言うのに早速疲れを感じ始めた俺に、タタタッと結衣が駆け寄って来て体当たりしてくる。


「緋色おにぃー!」

「ぐほっ……身長的に鳩尾……」

「ひ、緋色兄さん、大丈夫?」


 結衣を受け止めた俺が、結衣の頭が鳩尾に直撃して悶えていると……少し慌てた様子で舞衣が寄り添ってくれる。

 ただ、俺の鳩尾に顔を埋めた結衣が、俺を不思議そうに見上げてくる姿から悪気があるわけではないと分かるので、怒る気にはならなかった。


 …………俺の身体と精神、持つかな?


 俺はただそれだけが心配だった。


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 すまん、投稿できてなかったから今日の18時にも上げるわ。


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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