第6話 スライムが強い漫画は名作

「ベル、ちょっと聞きたいんだけど」

「…」

「ベルおねえちゃん!ぼくおしえてほしいなー!」

「はいはいリウスくん、おねえちゃんが何でも教えてあげますよ」

「さっきの登録って意味あったの?ガラガラだったし」

「マーレ領内で登録すると適当に登録されるんですよ。ガラガラなのはマーレ子爵が報奨金をケチっているからですね。領内の魔物であっても討伐部位を他領に持っていけば報奨金が多いですから」

隣領はクッソ迷惑だな。まぁアイツらのやりそうな事だ、あいつらアホだし。


「はぁ、もう宿で休もう。明日はやっと魔物を狩れる」

「それですけどリウスくん。街道から外れての山超えですが、あの火魔法は山林じゃ使っちゃだめですよ?」

「???、なんで?」

「火事になるからです」

「火事になったらだめなの?」

「だめです」

駄目なのか。ふむ、終わった。今の我にはブレスしかないのだぞ?この貧弱な腕では武器を握ることすらままならぬ。

「リウス様は火の魔法を扱うのですか?」

「あ…まぁそうなんだよね!最近ずっと使ってないんだけど!!」

「すごいですね!若くして魔法を使える方は希少だと聞きます!」

「火……」

侍女の目が厳しい。だが我は認めぬ、証拠はあるまい!まぁこいつら見た目は綺麗だが割とアホな言動多いからな、大丈夫だろう。


そうだ、燃える馬車で思い出したがベルが水魔法使えるじゃないか。火事になってもベルが頑張れば何だとかなるはず。

「ベルおねえちゃんの魔法があるから大丈夫だね!」

「え?いや森の消火はさすがに」

「ベルおねえちゃん凄い!ベルおねえちゃん大好き!」

「は~いおねえちゃんですよぉ!おねえちゃんが魔法でやっちゃいますからねぇ!」

やっぱちょろいわ。ベルのゲロで森の再生エネルギーも補給出るし一石二鳥だな。名案である。


「リーリアもお手伝いできるかしら?」

「お嬢様、今はお嬢様の傍を離れるわけにはまいりません」

戦闘侍女?は役に立たないようだ。ベルとは仲良くなったらしいがあんまりにも興味無いから名前聞いたけど忘れてた。こいつらなんであそこにいたんだっけ?まぁ我の経験値稼ぎの邪魔しないならどうでもいいか。

「ベル、魔物って何が出るの?」

「…」

「ベルおねえちゃん、魔物って何が出るの」

「は~い、ベルおねえちゃんが調べておきましたよ。まずこの辺りの魔物に強いのは少ないです。たまにオークが発見されたら討伐隊が出るようです。それ以外はどこにでもいるスライムとかゴブリン、後はウサギやイノシシですね。山なら虫系もいますが、キラービーの様な大型の目撃例は無いそうです」

ものたらんなぁ、まぁ贅沢は言うまい。まずは少しでも狩りをしないとそこらの人間にも力負けしているからな。

「それじゃあ明日は頑張ろう!」




という事で翌日。朝から食料や丈夫な服鞄水筒等を揃えていく。

「リウスくん、武器はどうしますか?」

「うーん、重くて持てないんだよね。小さいナイフでいいよ。他のみんなは揃えておいて」

「私も剣とか持てないんですが」

「大丈夫大丈夫、僕が全部倒すからね」

分け与える気はない。もっと余裕が出来たら小物くらいは構わんのだが、今は我が小物レベルであるからな。


結局ベルは少し大ぶりのナイフ、アラニアスが細身の剣、リーリアは槍を購入した。防具は無しで丈夫な服装と靴だけだ。

「しゅっぱつ!」

予定通りに街道をある程度進んだ所で山に入った。山と言っても大したものじゃなく、ハイキングコースみたいなもんだ。今日中に隣領の村に着く予定。




「リウスくん!あそこに魔物が!ベルおねえちゃんを守ってください」

もう町を出たんだからその設定やめろ気色悪い。

ウニョウニョ、ウニョニョ。

プスリ。

「リウスくん流石です!初討伐ですね!」

「ベル、本当にやめて。小さいスライムなんてカマキリでも勝つから」

「はい。リウスくんが喜ぶかと思い頑張っていました」

ぶん殴るぞ。

「はぁ、こんなの倒しても仕方ないんじゃないの」

「そんな事はありませんよ、このスライムゼリーを10匹分集めたら小さいパンが買えます」

「通貨で言うと?」

「銅貨半分くらいですかね」

「いらん!」


まったく、こんなもんあつめて、も?そうだ思い出したぞ。

「10匹分集めよう」

「リウスくん、初給与はお世話になった人に何かプレゼントするものですよ」

「いいからスライム探して」

4人でスライムを探し歩く。大体大きな石をひっくり返すと湿った土と石の間に隠れていたりするのだ。湿った所に自然に湧くので苦労する事も無く集まった。

「こんなの何するんです?」

「いいからいいから」

集めたスライムゼリー纏めて少しこねる、しっかり一体化したら地面に置き、薄く土をかぶせておく。

「よし隠れよう、近くにいるなら釣れるはず」



暫く隠れていると、どこかから一匹のイノシシが現れてスライムゼリーを掘り始めた。

(は~、イノシシが釣れるんですね。でもスライムなんてそこら中にいるのに何故?)

(ふふふ、少しだけ魔力を混ぜたんだよ。ゼリーと混ざって匂いが強くなるんだ)

昔はヒュージスライムを餌にして色々釣ったものよ。馬鹿みたいにでかいサンドワームやアホみたいにでかいクラーケンと引っ張りあって遊んだりな。最後は全部食ったが面白かったなぁ。


(あ、リウスくん!見てください!)

(ん?おぉ!ゴブリンだ!)

無防備にゼリーをもしゃっていたイノシシは数本の矢が刺さって倒れた。

そこに弓を持ったゴブリン共が3匹。

(お嬢様お下がりください、ここは私が)

(そうですね、リウス様ここはリーリアが)

(いやいや!いいからここは見送ろう)

武装したゴブリンが3匹って事はアイツラは恐らくゴブリン集団の狩り部隊だろう。ハグレならこんな構成にはならんはず。こいつらは獲物を集落に持って帰る。なら当然そこを見つけて殲滅だよなぁ!

溜め込んだブレスで華麗にスタートダッシュだ!!

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厄災の邪竜なのに転生したら虚弱な子爵家次男だった ーショタコンメイドと一緒に冒険者になって力を取り戻す! 無職無能の素人 @nonenone

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