第5話 戦闘力は変動するのが基本
「アラニアスさんとリーリアさんはこのフードを被っておいてください、尻尾も閉まっておいてください」
ベルがフードを買ってきた。獣人と人族はなんか微妙なのだ。獣人のほうが強いのに人族の方が数が多い。つまり主流派の雑魚と少数派の強者、そして人間は根性がひん曲がった虫けらなので獣人が虐められ、抵抗するといっぱい集まってくるというわけだ。竜族は平等に縄張り争いで殺し合うというのに、人間は本当に人間だわ。
「ベル、そろそろ魔物倒しに行きたいんだけど」
「はぁぁぁぁぁ」
こいつほんとしばくぞ。
「リウス様、ペットを拾ったならちゃんと面倒を見なくちゃいけません。彼女たちをどうするつもりですか?まずは衣・食・住の確保をして、ペット達が幸せに過ごせる環境を作る必要があります。それだけじゃだめですよ、ちゃんとかまってあげて、躾もして、御主人様と一緒で幸せだわんと言わせないと駄目です。だめだめです」
「ペット…」
「私は犬科じゃないんだが」
めんどくさい!元いた所に置いてきなさい!
「さっきの金貨でなんとかならない?」
「まぁ、これだけあるなら小さな家を借りた方がいいかもですね。人の目も気になりますし、彼女たちも庭がある方が走り回れて嬉しいでしょう」
「…」
「犬じゃないんだが」
「ベルに任せるよ、僕子供だからよくわかんない」
「承知しました。では今後の動きですが。とりあえず宿を取りましょう、まだ時間もあるので冒険者ギルドで登録します。明日は準備をしてから山越えで魔物を狩りながら隣領へ行きましょう。合う売家があればそこに住み着きます」
「宿なんてどうでもいい!冒険者ギルドが先!早くいきたい!」
「どうでも良くはないのですがリウス様が可愛いのでそれでいいです」
「らしゃっせー」
「登録しに来たぞ!」
「ありゃりゃすー、こちらどぞー」
冒険者ギルドはそこそこ大きな建物だったのだが、中はガラガラでやる気のない受付の娘が雑に案内していた。人間ってもっと必死に魔物狩ってるんじゃないの?我がっかりなんだけど?
「名前と職業おねあしゃー」
「はっきり話さんかい!ぶっ殺すぞ!!」
「ひぃぃ、なんですかこのお子ちゃま!あっ、良く見たら貴族なのでは…」
「リウス様落ち着いてください、品がありませんよ」
ぼけがぁ!カスがぁ!イライラするわ!だが抑えるのだ、前世もそれで失敗したしな。
「ごめんねおねえちゃん、僕イライラするとついやっちゃうんだ。貴族じゃないよ」
「そうなんだ、小さいのにすごい迫力あったよ。ごめんねちゃんと登録しようね」
「いいから早くしろ」
「は、はい。それではまずお名前から」
「リウス・マーレだよ」
「は~い、リウス・マーレですね。ん?マーレ?」
「ちょっとリウス様!」
あ、しまった。ついイライラして意識が。まぁいいか。
「うん、リウス・マーレだよ。誰にも言っちゃだめだよ。おねえちゃんと僕の約束ね!」
「はわわわ、わ、わかりました」
まぁバレてもどうってこと無い、だってあの家馬鹿だし。
「それでは次に職業はなんですか?」
「職業?」
「リウス様、ここは冒険者ギルドですから戦闘のための職業ですよ」
そんなの調べた記憶が無いんだが?戦士とか魔術師って事?
「ゴールデンエンシェントダークセラフィスドラゴンナイトだよ!」
「そういうのは無いですね。こちらの玉に手を置くだけで能力が見れますから、能力と自分のやりたいことを考えて登録職業を決めてくださいねー」
ほう、ずいぶん便利な道具があるのだな。あれ?でも我の能力が見られちゃうと不味くないか?
「おねえちゃん、これ能力全部見えちゃうの?」
「能力っていうか総合戦闘力が見れるだけですよ、足が早いとか頭がいいなんていう事は分かりません。便利だけど痒いところに手が届かないんですよねぇ、作った人は気が利かないです。たぶんおっさんですよきっと、絶対そうです」
余計な事を言うな。
ふむ、我の戦闘力を知らしめてやるのも良いな。この娘が騒いだら攫ってしまえばいいだろう。
「じゃあいくよ!」
玉に手を乗せドラゴンパワーを喚起する!刮目せよ愚民ども!これが我の力ぞ!!
球の表面に数字が現れ激しく動く!ハハハッ!数値で表示しきれずおかしくなっているのではないか!?
ピピッ!! 5
「戦闘力たったの5か、」
?
「失礼しました。戦闘力5ですね、大体5歳児くらいの戦闘力です。職業はとりあえず【見習い】でいいですね」
「ベル、どういうこと?」
「リウス様は繊細で華奢だからです」
「あの、わたし達も測らせてください」
ピピッ!! 38
「失礼する」
ピピッ!! 128
戦闘職っぽい侍女が128、そして何故か我と同じくらい小さいアラニアスが38?
「ちょっとベルも測って」
ピピッ!! 21
ちょっと安心した。
「はーい、みなさん終わりましたね。戦闘職を名乗れるのは100以上からですのでそちらの女性だけです。」
3人が見習い冒険者、侍女が戦士で登録して帰った。
「ところでリウス様、身分を隠すためにこれからベルの事はベルおねえちゃんとお呼びください」
そんなもん知るか。
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