愛しあつてるかい

姫野みさき

愛しあつてるかい

ふきだしのやうな風船得てゐたり

泣く顔の顎の皺やヒヤシンス

針山にぷつと刺す針水温む

石が蝶へ変はるパラパラ漫画かな

春雪の中へ収束する拍手

側転の着地片足づつ五月

オーブンの余熱泰山木の花

会計を任せて金魚見てをりぬ

噴水の波紋ぶつかり合ふところ

雲の峰犬の一歩を連写して

ねぢれたる消しゴムのカス涼新た

クレヨンに巻いてある紙秋の海

椿の実回覧板の滞る

掃除機のなか空にして虫時雨

秋燕マスカラいつも右目から

犬の尿みちに広がる小春かな

冬の雨父は錆びない鉄を作る

瘡蓋にべたつき少し寒椿 

双六の折り目へ駒の倒れけり

地へ尖る氷柱や愛しあつてるかい

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愛しあつてるかい 姫野みさき @himenomisaki

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