午後一〇時ニ〇分
浜迫さんと分かれ、自分はJR駅に向かった。ショッピングモールから徒歩にて十五分、途中ふと見上げると大粒の星々が瞬いていた。本来天文学が好きな自分が、星を満開の桃花よりも美しいと思ったこと自体が久々だった。ショッピングモールの入館証を返還し、一市民に戻ったことで、いくつもの大切なことを取り戻したのだ。もちろん、働きやすい環境にて最善を尽くす権利も。
明日の昼は市立図書館に出かけよう。今まで読みたくても読めなかった原爆の資料、長崎の復興歴史、リストアップしたままの小説を借りて、自宅で紅茶を飲みながら読み耽るのだ。最近気になっていた仮想通貨の本も合わせたら、貸出限度の十冊に到達するかもしれない。ガイドの依頼がない日の日中は読書と学習、夜は飲食店で働き、まかない食を心ゆくまでいただく。まかない食は調理長がその日の食材の在庫を調整してアレンジしてくれるので、廃棄される食材に心を痛めることがない。
これからの楽しみが、星の数を越えていた。
自分はもう、ショッピングモールの女ではないのだ。
ショッピングモールの女 加藤ゆうき @Yuki-Kato
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます