第20話 俺の生活始まります!

 前回を含めて手に入れた金貨、合計四百越えはこの世界ではかなりデカイ。この世界は日本よりも物価が安いため、三百もあれば簡素な一軒家ぐらいは余裕で買える。




「…ってことでミネネさん。どっかいい物件ないですか?」

「俺に聞くんじゃねぇ!」

 遅めの朝食中、質問に怒鳴り声が帰ってきた。

「そんな固いこと言わないで下さいよぉ。」

「お前がいなくなったらうちの利益が減るだろうがよぉ!」

 ……仕方ない、これだけは使いたくはなかったが。

「あーあー、もしいい物件教えてくれたら、暇な時でも宿の洗濯物水魔法で片してあげようと思ったんだけどなぁ。」

 ピクッ……とミネネさんが反応した。

「まー別に良いなら良いかなぁー。」

「……うぬぬぬ、分かった!俺のツテをフル動員して探してやる!ただし、約束は守れよ!」

「もちろん。それじゃあ、条件なんですけど────」






ー数日後ー




「初めまして、ドイルの街で土地の管理をしているラールです。」

「こちらこそ初めまして、アズミです。Cランクの冒険者でBランクパーティーの眼光に所属しています。」

 メガネをかけた出来る人感を醸し出してるラールさんと握手を交わした。

「早速ですが、アズミ様の条件を元に策定した結果、該当したのは二件ございました。」

「おお、そんなに。」

「では、馬車をご用意いたしましたので、そちらで向かいましょう。」

「はい。」









「一件目はこちらです。」

 ラールさんが連れてきてくれたのは、住宅街の中にある、この世界ではよくある家だった。

「へぇ!良いですね。」

 中もなかなか悪くない。ミネネさんの宿部屋を一軒家の大きさにした感じだ。

「こちらは全体的にアズミ様の要望に添っているかと思われます。」

 確かにいい感じだ。全体的にくまなく確認していくが今のところ不満点はな………

「あ、窓。」

 俺の要望の一つである窓台の広さがほとんどない。出来れば植物を優先で考えたいから窓台は欲しい。


「もう一件、拝見しても?」

「構いませんよ、参りましょう。」





 そこは街の発展したところからかなり離れた所だ。しかしその分家は広い。

 ラールさんの話でも本来ならもっと高い物件だが、主要な施設や門から離れていることからこの値段とのこと。


 中も結構ちゃんとした作りになっていて、窓台もかなり広い。一畳分あるんじゃないか?

「いいな。予算的にも私の希望通りなんですよね?」

「はい、そうですね。」

 ちょっと不安になって聞いちゃったよ。

「これならいいかも……」

「アズミ様、こちらに。この物件にはまだ見所がありますよ。」

「え?」

 俺はラールさんに連れられて、とある部屋にやってきた。ラールさんが壁に手を置くと、そこがガコンとへこみ、天井から階段が出現した。

「えぇぇぇ!?!?」

「こちらへどうぞ。」

 



「すっげ…………」

「こちら屋根裏部屋でございます。なんとこちら。」

 ラールさんが屋根裏部屋の壁をまた触ると、天井が動いて空が見えた。

「更に。」

 ラールさんが続けて言うと、空いた箇所に窓が出現した。

「温室だあぁぁあ!!!!!」

 すげぇぇぇぇ!

「喜んでいただけて何よりです。」

「こ、ここは!?」

「はい、植物を好んで育てていたとある貴族の方の別荘だった物件でございます。この機能はかなり最先端の技術が用いられているのですが、この機能を見た方々に家の安全性が信頼できないと言われてしまいまして、みるみる価格が安くなり、今に落ち着いたという経緯がございます。」

 なんか、段々とラールさんの顔が暗くなる。

「な、なるほど。」

「ですので、ここで買っていただけないと──」

「買います。」

「この家を取り壊すことに……えっ?」

「買います。」

「ほ、本当ですか?」

「はい。最高の物件です。」

「あ、ありがとうございます!で、では!必要な資料をお持ちいたします!」

 ラールさんは嬉しそうに駆けていった。





「へへへ。この家で俺は第二の人生を満喫するぞ!」

 俺は天に拳を掲げ、高らかに宣言した。

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