第19話 良いものが見れた

 今日は管理所にお呼ばれした。悪いことしたんじゃないよ?前回の領主のおっさんの件さ。

「おはようございます、トットさん。」

「やぁ、アズミさん。奥へ。」

 トットさんに連れられて、奥の部屋に向かった。


「おぉ、これはアズミくん。久し振りだね。」

 出迎えてくれたのは領主のおっさんの………あれ?そういえば名前知らないや。

「え、えぇ。お久し振りです。体調はどうでしょうか?」

 おっさんと握手をしつつ尋ねた。

「ハッハッハッ、君のお陰でピンピンしている。

 本当に感謝しているよ。」

 頭を下げられてしまった。

「いえ、当然のことです。報酬も出ると言われましたし、ですから過分な感謝は不要です。」

「おっとそうだったね。マルクス。」

 後ろに控えていた、執事さんかな?を呼ぶ。

「は、こちらが報酬の金貨百枚です。」

 ドサッ、と置かれた袋の中には前世で言うところの百万円。………良いのだろうか?

「お言葉ですが、貰いすぎかと。私の回復魔法はそもそも領主様の紹介がなければ習得は出来ませんでした。」

 こういうのは、不安要素は聞いといた方がいい。何かあってからでは遅いからね。

「いいや、これが正当な対価だ。私は知っているよ。回復魔法の習得の大変さを。私は挫折してしまったがね。だから、君にはある種の尊敬の念を持っている。遠慮せず受け取りたまえ。」

 フム………問題は無さそうだ。

「では、ありがたく頂戴いたします。」

 俺が袋を掴んだところで領主のおっさんが話しかけてきた。

「それと、合わせてもう一つ、依頼を受けてくれないか?」

「…お聞きしましょう。」

 駆け引き上手いな……流石は貴族と言ったところか。

「我が屋敷の兵士に回復魔法を使ってほしい。一人回復で金貨二十枚でどうかな?」

「………それは、五体満足で二十枚ですか?身体のどこかが欠損していたり、回復が不可能な場合は?」

「…………そうだね、欠損があっても命が助かるなら金貨十枚、回復が不可能な場合は申し訳ないがゼロだ。」

「回復が出来なかったからと、私を貶すことは?」

「それはこのピョロク・デンズ・アルマカナの名において、ないと誓おう。」

 おっさん、そんな名前だったのか。

「良いでしょう、詳しくは移動中にでも。」

「おぉ!助かる!マルクス、馬車の用意を。」

「すでに、手配しております。」

「流石だ。さ、アズミくん。我が屋敷に共に向かおう。」

「はい。」




 俺と領主のおっさん、執事のマルクスさんと記録用にトットさん、計四人が馬車に揺られる。

「一応、目に見えて助からないような方はもういないと思いますが、アズミ様の判断にお任せします。」

「分かりました。」

 執事って大変そう…………あ!

「そういえば、お屋敷に庭園はありますか?」

「えぇ、ございますよ。」

「ほう?アズミくんは庭園に興味があるのかい?」

 領主のおっさんが聞いてくれた。

「私は庭園、というよりは植物が好きでして、今住んでいる宿でも何種類か植物を育てています。」

「ほー、珍しいね?」

 領主のおっさんがそういいながら執事さんの方をチラリと見る。

「そうですね、平民の方々には縁遠い趣味だと思います。」

 執事さんは頷きながら肯定し、領主のおっさんと執事さんは意外そうな顔で俺を見てきた。

「えぇ、よく言われます。ですので、仕事が終わったら庭園を見せていただければ!」

「もちろん、構いませんとも。」

「ありがとうございます!!」 

 思わぬ楽しみが出来てしまったな!ササッと仕事が終わればいいが。




 俺の心配は杞憂だったようで、何事もなく計八十三名の回復が終わった。金貨は百六十六枚で、百六十六万円。欠損していた人もいたが、俺の魔法でくっつけることが出来た。

 それによって本来よりも払う金額が多くなったはずなのに、領主のおっさんはとても嬉しそうにしていた。いい人なのだろう。



 見せてもらった庭園はとても見事で、いわゆるイングリッシュガーデンであった。

 庭師の方とも話をして、充実した一日だった。

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