第10話 銀河鉄道の現場ネコ

 【事故調査終了報告書】

[調査符号]:№333"銀河鉄道建設公団トラックビーム誤射事故"

[重要度]:最重要・永年保存・非公開

[原因究明]:解明済み

[再発防止]:対応済み

[概要]:銀河鉄道建設機材誤操作による惑星破壊事故

[説明]:銀河系内での輸送需要増に伴い銀鉄は急激な事業拡大を進めており、当該事故発生現場においても「突貫工事」で路線の敷設作業が進められていた。原因となる機材の誤操作に誰一人として気づかず、惑星が破壊されたことが観測されて初めて銀建公団は重大事故の発生を認知、通報を受けた宇宙事故調査委が調査を実施し、その事故の全貌があきらかとなった。過失を原因とする案件で、ここまで規模が大きく被害が拡大した事故の前例は無い。

■原因調査■

どのような誤操作をしたとしても、トラックビームが「偶然」惑星に命中するなどといった事は確率的にありえず、また結果として重大な被害を発生させており、当初は人為的なテロ等の犯罪を疑い調査を進めた。

当時周辺宙域では宇宙海賊バイパーの出没が確認されており、「運転手が海賊の構成員であり綿密な犯行計画のもと事故を装い惑星を破壊した」とするのが最も妥当だと考えられ、宇宙刑事ギルドへの通報も同時に行われている。

・・・だが調査を進めるうちに、我々は恐ろしい事実を知ることとなった。

■判明した原因■

①トラックビーム運転手の飲酒運転

②機材の操作マニュアルなし

③警報システムOFF


運転手は勤続20年以上のベテランだったが、貸与された機材は二重三重の安全機構を搭載しており「どんな乱暴な運転操作でも事故が発生しない」ため、20年間毎日毎日、日常的に飲酒運転を繰り返していた。

雑に操作しても自動運転機能オートパイロットにより適切な動作をするため、運転手はマニュアルを読んですらいなかった。そもそもマニュアル自体が存在しなかった。

一度も事故が起きなかったため、警報システムも切られていた。


意図的に事故を起こさせるには自動運転機能を切り手動操作する必要があるが、手動で「惑星」という目標にビームを命中させる事は不可能。つまり、事故は絶対に起きないはず。

・・・だが、現実にはトラックビームは惑星に直撃して爆発させている。

なぜ事故は発生したのか?


ブラックボックスの解析結果が、その答えを教えてくれた。


「ものすごく運が悪かった」


秘蔵のマタタビ酒で酩酊した運転手がデタラメな方向に向けて送出したトラックビームは「0.000000・・・0001%」という超低確率のハズレ籤を引き当てた。信じがたい結論だが、我々調査チームは以上の結論に至った。運が悪かったのだ。


不幸中の幸いだが、公団はこのような希少事故にも対応する保険に加入しており、ただちに現況復旧補償を実行することができたが・・・

操作ミスを補正する100%安全なシステムを構築しても、人智を超えた「不運」があなたを襲う。事故は起こるさ。


最後に、声を大にして言いたい。飲んだら乗るな。

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地球転星★銀河鉄道建設公団のトラックビームが直撃して地球が爆散した件 平伍頼直(へいご・よりなお) @hey_go

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