第9話 銀河鉄道の宇宙ネコ

太陽系第三惑星、地球。

この惑星が突然、爆発した。

バラバラに砕かれ、崩壊。この惑星に生息する生命体の生存は絶望的と思われた。

どうしてこんなことに?その原因はすぐに判明した。

これは、宇宙事故調査局により作成された事故報告書を抜粋したものである。


★★★


警告音が鳴り響く。

「緊急警報。重大事故インシデント発生。管理責任者は直ちに・・・」

「まさか?」

「ウソでしょ・・・」


亜空間ゲートを利用し安定した星間移動を提供する「銀河鉄道」。

その銀河鉄道を敷設ふせつするという、重要任務をになうのが彼ら「銀河鉄道建設公団」である。


★★★

【銀河鉄道建設公団】:銀河鉄道の施設を建設することを任務とした公益団体。建設作業を得意とするニャンコロ星人(猫型宇宙人)を多数雇用している。

~銀河百科事典第334版より引用~

★★★


鉄道レイルウェイと言ってはいるが、移動距離のほとんどを亜空間跳躍ワープにより短縮しているため、実際に建設するのは発着駅ターミナルと亜空間ゲート発生装置、そして駅とゲートを繋ぐ鉄道ゲートウェイ。これだけだ。

つまり、新規路線を開拓するには、新規目的地駅ターミナルを完成させれば良いという事になる。


ターミナル鉄道ゲートウェイ⇔亜空間ゲート~跳躍ワープ~亜空間ゲート⇔鉄道ゲートウェイターミナル


「ただちに『停止ディレイ』命令を!同時に非常時チェックリスト確認!」

「自動停止機能により『停止ディレイ』済、確認。」

「緊急対策会議を招集!」

「どうして・・・」


銀建公団ではこのとき、急拡大する銀河系内輸送需要に対応するため、新規駅ターミナルの建設を急いでいた。


新規駅ターミナル建設に必要となる建設資材や建設作業員を現場に輸送するには亜空間ゲートを使用するが、そもそも建設当初は現場に亜空間ゲート自体が無い。

最初の最初、物資搬入用の亜空間ゲートそのものを建設する資材は「通常空間」を使って輸送しなければならない。


①貨物輸送宇宙船が「通常空間」を航行し現場に到着

②現場に資材受け入れ用の「搬入ピット」を展開

③最寄りの資源惑星から資材をトラックビームで射出

④現場の資材搬入ピットで資材を受け取る

⑤その資材を使用し亜空間ゲートを建設する

⑥以降はゲートを利用し資材を搬入する


という手順となる。


「トラックビームが・・・惑星に命中しただと?」


超空間通信により現場からの報告が届く。

それは、ありえない出来事だった。

宇宙空間は極めて広大、とにかくヤバい広さであり、ランダムにビームを射出したとして、それが天体に命中する確率はほぼゼロ。狙って撃っても簡単に命中するものではない。実際、トラックビームを現場目標に到達させることも容易ではなく、先進波によるガイドによりようやくそれを実現しているほどだ。


「狙って撃っても命中しないはずのトラックビームだぞ?」


長い銀河系開拓の歴史上、トラックビームが誤って惑星に命中した「事故」は一度も無い。

唯一考えられる可能性、それは「」ではなく「」だという事。これは「」であるという濃厚な疑い。宇宙海賊たちの仕業か?

緊急対策会議が始まるが、空気は重い。

ビームが直撃し、爆散する惑星ちきゅうの映像がバーチャル会議室内に流れる。それを見た会議参加者たちが息を飲む。ヤバい。


「惑星を完全粉砕するポイントを的確に狙っている。あきらかに意図的。」

「・・・宇宙刑事ギルドに通報を」

「トラックビームの運転手オペレーターは捕らえたのか?」

拘束された運転手オペレーターが乱暴に引き出されてくる。

「外部から侵入したテロリストか?」

「どうしてこんなことが・・・」

浴びせられる声に、トラックビーム運転手オペレーターが答える。


「ゆうべ飲み過ぎて・・・勤務中に迎え酒飲んでたらヴェエエエ・・・」


「・・・コイツの経歴を確認しましたが、勤続22年のベテラン公団職員で、本人に間違いありません。洗脳も寄生支配もされていません。」

「まさかの飲酒運転」

「・・・これは宇宙事故調査局の連中がすっ飛んで来るぞ」

「銀建公団、終わった・・・」


★★★

なお、今回登場する公団職員のビジュアルは全員二足歩行のネコチャンです。

★★★

次回に続く!

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