第5話 バス停でバスを待つ

 優里亜と京香は潮水でチキンレースだとかシャトルランをして、薄らと汗をかいていた。数度、玉と汗が伝った。

「ちょっと、疲れた」

「確かに」

 風が吹き抜け、掴めるほどべっトリとした感覚を洗い流した、足跡は潮水がデリートし、一掬いで何も無かったかのように消し去った。

「後なんふーん」

「後じゅっぷーん」

「そろそろ戻ろっか」

「次のに乗り遅れったらシャレにならないよ」 

 優里亜と京香は砂浜に足を何度か掬われそうになりながら、コンクリの壁を超える階段へ向かった。

 二人の靴は一度も完全に浸水しなかったから。砂の上でも靴は揚げ物みたいな見た目にならずに済んだ。

 帰りも影に身を隠しながら進んだ。バス停に二人の帰りを待つかのように桃ケ浦と書かれたバス停看板は一人で佇んでいた。ベンチに再び腰掛けた時にはあと5分ほどしか時間は残って無かった。

 優里亜は商店の少し上を意識的に見つめ。

「ありがとね」

「ありがとう?」

「そう、ありがとう」

 優里亜はふやけたような照れ笑いで言った、太ももをドミレと弾き、確実に今日で一番の笑顔を見せた。

 京香もつられて笑った。メランコリック同盟は自然と解消されたらしかった。

 エンジン音は蝉の声にかき消されながら、バスはやってきた陽炎が薄っすらと揺らめいた。

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バスを待つ二人 澁澤弓治 @SHIBUsawa512

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