ララ・ライフ 〜母の流儀〜
幸まる
人生一度きりだから
ピンボーン
ガチャ。
あら、どうしたの。
連絡もなしで、こんなに遅く。
え? 旦那さんと喧嘩したって?
あはは、それは大変だったわねぇ。
まあ、お入りなさいな。
律儀にチャイム押さずに入ってきたら良いのに。
結婚したって、あなたは私の娘でしょ。
……ふぅ~ん、それで喧嘩したんだ。
まあ色々あるわよねぇ。
そうそう、お腹は?
食欲ないって?
駄目駄目。
人間、空腹の時は悪いことばかり考えてしまうものよ。
どんな時でも、まずはお腹を満たさなきゃ。
まあ、少し待ってなさい。
良いもの作ってあげるわ。
お母さんが酔ってるかって?
いやぁねぇ、焼酎一杯位で酔いやしないわ。
大体、この時間に飲んでるのはいつものことでしょ。
えっちゃんなら、二階でまだ勉強してるわ。
受験生だからって、今から根詰め過ぎよねぇ。
お父さん?
もうとっくに寝たわよ、明日早いんですって。
お母さんはまだ寝ないわよぉ。
夜はこれから。
好きなことは、夜に一人きりで楽しむの。
邪魔してしまったって?
あはは! 何言ってるの。
“お母さん”って生き物はね、何でもかんでも邪魔が入るのを、華麗に捌いて一日を過ごす生き物なわけよ。
言ってることが分からない?
まあ、要は自分の時間が少ないのが当たり前ってこと。
申し訳ないって?
まあ! そんなことを考える歳になったのねぇ。
あのねぇ、少しも申し訳ないことなんてないのよ。
お母さんは、自分で選んで生きてきたの。
お父さんと大喧嘩して、何もかも捨てて、それこそ「もうイヤ!」って、あなた達子供を捨てて出ていくことだって出来たのよ。
お母さんがやるわけない?
ええ。
でも、やろうと思えば出来たって話。
でも、しない。
家族といる方が良いから。
不自由でも。
ここがお母さんの場所って、お母さん自身が決めたから。
辛いこと、悲しいことがない人生はないでしょ。
だから、そんなものは数えない。
嬉しいこと、楽しいことを数えるの。
怒っても笑っても、時間は同じだけ流れるの。
だったら笑う方がいい。
怒りを持続するには、思っているよりも力がいるわ。
そんなコトに自分の力を使うのは勿体ないでしょ?
だから、好きなことをできる時間に、目一杯のパワーを注ぎ込むのよ。
人生は一度きり!
出来ないことを嘆くより、出来ることを見つけて楽しみましょう!
カンパーイ!
お母さんが酔ってるかって?
いやぁねぇ、焼酎二杯くらいで酔いやしないわ!
おっとっと!
いけないいけない、焦げるところだった!
ドドーン!
はい、どうぞ。
ふっくらほわほわホットケーキ。
三段重ねなり〜!
ふっふっふ〜♪
美味しいものは人を幸せにするわ〜♪
バターとシロップをたっぷり掛けて、夜中の背徳感と共に召し上がれ〜♪
……あ、えっちゃんが降りてきたわ。
あら?
お父さんも、起きたの?
うるさかったって?
いやぁねぇ、ひとを酔っぱらいみたいに!
どうしてお姉ちゃんがいるのかって?
そりゃあ、家族に会いたくなったからに決まってるじゃな〜い?
ほらほら、せっかくだから、冷めないう内に三人でお食べなさいな!
食べ終わったら、電話してあげなさいね。
何の話かって?
ナーイショ!
お母さん?
いらないわ。
作っただけでお腹いっぱいだもの。
飲み過ぎてるだけだって?
いやぁねぇ、焼酎三杯くらいでお腹いっぱいになったりしないわよ!
今日も皆元気。
良い一日だったわねぇ。
《 おしまい 》
ララ・ライフ 〜母の流儀〜 幸まる @karamitu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます