藍色

佐野 雅

第一話 『赤』

ある地方の田舎の方、河原沿いに咲く真っ赤な『彼岸花』の中に一輪だけ色褪せた『藍色』の彼岸花があった。



西暦2000年前半の春。


当時18歳の彼女、りりかと

交際をしていた当時19歳の彼、れん。


りりかは春から大学生

つい先日までは高校生で、れんが初めての彼氏で

りりかが16歳の時から交際をしている。


れんは生まれながらに持病があり

何万人に1人の確率の病気をもち、いつ亡くなってもおかしくない。

と病院から言われるほどの重病を患っていた。

16歳のときは通学していたが

高校一年生の冬には自宅よりも週に病院に居る回数の方が多くなり

高校二年生からはずっと病院にいる。


病院でしか会えないれんを、りりかは長い河原を超えて隣町のれんのいる病院まで週3で通い詰めた。


れんはそんな彼女の励ましと支えを

残り少ないとわかっている人生を生きる糧に奮闘していた。


りりかは帰りの時間が近づくといつも泣き、


れん 「りりかの泣き顔を見たらこっちが辛くなるから泣くな。」


いつもれんが慰めていた。


れんはりりかが帰る後ろ姿を歯を食いしばり見送り、夜中にりりかに見えない所で毎回泣いていた。


"これがいつまで続いて、いつ終わるのだろう"


れんはそう思っていた…


ある朝。

午前中にはれんの所へれんの母親がくる。

れんの母親は2人の交際を良く思ってはおらず、

亡くなる息子への彼女の気持ちが追い討ちのように思っている。


れん母 「りりかちゃんまだ来てるの?別れないの?」


れんは毎回言ってくる母親の彼女への冒涜に嫌気を感じていた。


昼過ぎにはりりかがくるから

母親に早く帰ってもらうよう適当にあしらい、

れんは寝た。


りりかは学校が2限で終わり急いでいつもの河原を超え走って隣町のれんがいる病院へ向かっていた。

病院へ向かう途中いつも不吉なことが起きる。

この日は目の前で烏が車に引かれた。

前は自転車の事故、その前は目の前で人が倒れ救急車を呼ぶ事態だった。

決まっていつもと同じ河原の同じ場所。

いつも早く会いたくて急いで病院へ向かうりりかにとっては、

そこまで気にならず颯爽に河原を進む。


いつもより早く着いた。


病院の入り口に見覚えのある顔が、


れん母 「りりかちゃんこんにちは。お久しぶり。少しだけ話いいかな?」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

藍色 佐野 雅 @myb_s

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ