第19話
「そうだな、俺たちの事の始まりであるツイツイから話そうか」
パフェでも食べながら話すというので、あの特大パフェを冷蔵庫から取り出してきた。
テーブルに置くと、そのタワーはあまりにも大きいので圧倒的な圧を感じずにはいられない。
「いざ本題に入る前に一口いただきますか」
「いいだろう」
私とかなめは交互にスプーンでクリームやフルーツをすくうと、口に頬張る。
あまーい。そして程よいクリームの感触の柔らかい事、さらにフルーツがみずみずしくて、噛みしめるごとに弾ける果汁が口いっぱいに広がる。
「さすがは石田シェフ、デザートも逸品だぜ」
「石田シェフ?」
「ここの料理を一人で作っている天才シェフだよ」
「一人で全部作っているの?」
「あぁ、だから三〇分や一時間待ちでも、この美味しさでお客は納得してくれるんだ」
「まさに行列のできるホテルね」
「曜日によっては休憩でも、予約待ちで中々取れないんだぜ」
「ふーん、すごいんだね」
「今度紹介してやるな」
「うん」
かなめはさっきまでのニコニコモードから、急に真剣な面持ちに変わったのに私は気づいた。
「さてとツイツイで、俺がお菓子屋を名乗っているのは知っているな」
「うん、知ってるよ」
私はせっせとパフェをつっつきながら相槌を打つ。
「元々お菓子屋はゲーム実況用だったんだけど、次第にみんなの愚痴や相談を聞く場所になっていったんだ」
「随分様変わりしたのね。最初ゲーム実況だとは知らなかった」
「ただ相談に応じるには限界があった。そして俺のことを理解してくれて同調し、サポートしてくれたのが、春美だった」
「私のことね」
パフェをつつきながら答えた。
「そうだ。お菓子屋と春美コンビで、解決できた
「確かに二人でだからできた相談事は、確かに多かったわね」
かなめもパフェをつつく。
「そして絆を強めていったんだ」
「うん、そうだね」
あー美味しい幸せだよね。食後のデザートにパフェは最高!
「最初は春美のことを男だと思っていた」
「えー、名前が春美だよ。男だと思うかなぁ」
むむっ、かなめなんて失礼な。
「俺と気の合う女子なんていないからさ」
「はぁあ、うそでしょ。かなめモテるでしょ」
「いやいや、人生で誰とも付き合ったことなんてないから。俺さ、実は女子苦手で……」
「嘘でしょ」
私はジト目でかなめを見つめた。
これだけの容姿をしているのに誰とも付き合ったことが無いだなんて嘘っぽいな。だけどさっきはファーストキス(ノーカウント)だって言ってたしな。本当なのかも。
「嘘じゃないってば。それより肝心なのはその後で、修学旅行のお土産を渡してくれることになったじゃんか」
「あったわね。そこでお互いの名前を知ることになったのよね。でも、いくら女子が苦手でも妹さんの名前を使う必要ないでしょ」
「それがさ、恥ずかしい話なんだけど、妹に友達が居なくてだな。同い年の子の友達がいてくれたらと思ってだな」
「なにそれ?」
妹に友達作ってあげたいってとシスコン。私はかなめの意外な弱点を発見した。
「いずれは何らかの形で二人を合わせたいと思っていて……ごめん。結果として騙していたのには変わりない」
「いいけど別に」
「へっ!?」
うつむいていたかなめであったが、二度見した。
「妹さんのお友達になるって件、私が相談賜りました!」
「いいのか」
「私たちは普段は相談に乗る側だけど、相談したっていいじゃないの」「ありがとう。朱美」
「次は私の相談を聞いてね」
「ああ任せておけ!」
憑かれるのはついてくる女子高生と幽霊 水瀬真奈美 @marietanyoiko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。憑かれるのはついてくる女子高生と幽霊の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます