第18話
お互い目をパチクリしてしばらく動けなかった。
私からゆっくりと唇を放した。
気まずい空気が流れるも、高見沢家伝統のオーラパワーで草原に居る心地になる。
キスしちゃった。
二人の間を風が遮る。今度はさっきの間接じゃない。
唇と唇が重なったキスだった。
それも一瞬ではなく数秒、いや数分していたかの様な長い時間だったようにも感じた。一瞬のことだったこともあり、自分自身で何が起きているのかに理解が追い付かなかったことも、事態を長引かせた要因でもある。この事態に先に動いたのはかなめだった
「ごめん。顔を近づけすぎたわ……」
「こつちこそ、ごめんね。急に振り向いたからびっくりしちゃったよね……」
お互い気まずい雰囲気が流れる。ナプキンで唇を拭いた。
ファーストキスだったのになぁ。いやこれは事故よ。事故。歩いていたら人とぶつかった感じの事故よ。
「これはさ事故よ。だから大丈夫だから」
私は涙がこぼれ落ちた。ぽろぽろと涙が流れている。
なんでだろう。やだ変だな。なぜか涙が止まらないよ。
「かなめ、どうしよう。泣きたいわけじゃないのに、涙が止まらないよ」
「本当にすまなかった」
かなめは誠心誠意謝罪の意を表した。
「かなめは悪くないよ。振り向いたのは私だし、何感情的になってるんだろうね」
私は涙をナプキンで拭くと笑顔でかなめに答えた。
「もう大丈夫だよ。かなめも座ってよ」
「おっおう、そのさファーストキスだったんだろ。本当にごめん」
かなめは自席に戻り平謝りだった。
私はさっきの涙で、吹っ切れた感じがした。
「事故だって言ったじゃん。これはノーカウントです」
「おれも……初めてだったけど、ノーカンな」
「うそ、以外。東京の人は小学生のうちに、終わらせていると思ってたのに」
私は少し冷めたハンバーグを口に入れた。冷めてもこのおいしいさはすごいわ。
「はぁあ、簡単にするわけないだろうがよ。そう言うことってさ」
「私の所は、中学で最後までしちゃって子もおるよ」
「するって何をだよ」
「決まってるじゃん。恋人とすること全部」
「全部ってなんだよ」
「ははーん、東京の子はけっこうウブなんだ」
「ウブ? 大事な事だろ、そう簡単にはしないのが普通だろ」
「東京の子は結構奥手なんだ」
「いやいや、受験とかすることいっぱいあるから、付き合っていてもそんなことする暇ねーてば」
「まるで田舎もんは、遊んでると思ってない?」
「そこまで言ってないだろ」
「あっははははは」
「なにがおかしんだよ」
「何もとにかく、このことは二人だけの秘密ね。そうすればノーカウントなんだから」
「おっおう、わかった」
真剣なかなめを見ていると、なんだかおもしろい。
揶揄うのはこれぐらいにしておきましょうか。
私はハンバーグもパンも食べ終え、冷めきったコーンスープを口にしている。ここの料理は冷めても絶品だ。
「話は戻すけど、どんなことが聞きたい」
「ことの発端から聞いて行きましょうか」
「発端とはなんだ?」
「お菓子屋さんこと、高見沢ひよりの名前を語っていたわけから聞いてきましょうか」
私はスープ用スプーンでかなめを指さした。
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