どこだってミュージカル

菜の花のおしたし

第1話 新幹線は舞台

横浜で研修会があったのよね。

一日中の研修は疲れる。

本当なら早く新幹線で帰りたいところなんだけど、、。


私はわざと最終の新幹線にしたの。


やったー!

平日の最終。

ガラガラじゃない。


私はゆっくりと自分の席に座る。

隣は来ないみたいだから。

そこに買ってきた駅弁なんかを置いちゃえー。


さてとテーブルを出して、、。

横浜なら、崎陽軒のしゅうまい弁当。

そして、缶ビール2本。


しゅうまい弁当の紐をほどいて、中を見る。

ふふふ、やはりな。

しゅうまいがひとつ無い。

内蓋を見るとくっついてるぅ。

これ、戻りなさいなんて思いながら

しゅうまいを定位置に戻す。

缶ビールを開けて飲む。

うーーっ、染みるぅ。

あっと言う間に一本飲み干したわ。

まだあるわよー。新しい缶ビールを開ける。


さーてとしゅうまい弁当をいただきましょう。

あーーっ、だめ、だめ。

でもなぁ。

新幹線、ガラガラだし。

ちいさな声なら大丈夫じゃない?


「よこはまー、しゅうまいー、きようけんーー。🎶

おお、そなたは何故にわたしを誘うのだ!

食べてしまいたいぞよ〜🎵」


そうなのだ。

私はお酒が入ると、何故か、ミュージカルっぽくやりたくなるのだ。

だからこそ、最終の新幹線にしたのだった。

周りに乗客はいない。


「かぷ、うまうまぁーーい♩

シェフ、シェフを呼んでくれないかぁ?

是非、この上手いしゅうまいを作った

シェフに賞賛を〜〜🎶♪」


段々と酔いが回ってきたみたい。

ダメだわ、もう止まらない。


私は崎陽軒のしゅうまい弁当と缶ビールを片手に踊り出してしまった。


「この黄金に輝きぃ〜、甘いのか?

そぉーれとぉーもぉー?♬

いざ、いかん!黄金の卵焼き、わらわの口に

入れ!!」

卵焼きをほおばる。


私はううっと胸をかきむしりながら悶える。

そして缶ビールで乾杯。


「そこのうすぺっらい蒲鉾、貴様はぁ

なーんの為にそこまでぺらぺらなのだぁー♬」

箸に挟んだかまぼこを天井めがけてふりふり。


自分の世界に浸り切っていた時だった。


「そーのーぉ、蒲鉾はぁー、唐揚げにいく前の

前菜なのさぁーべいべー🎶。」


え?誰?

空耳、酔いすぎたの?私?


二つ前の座席から、箸でつまんだ唐揚げが

見えた!

ええ?あの人?

私のヘンテコな歌が聞こえちゃったの?


「さぁ、いざ!行かん!

唐揚げ革命が待っているー♬♪」

またしても声がした。


あ、この人も私と同じなんじゃない?

よーし、やっちゃえー!


「アンドレーー!

馬を用意しろ!唐揚げ革命に参加するぞ!」


「はい、オスカル様ーーー。

唐揚げはぁー、お酒にもいーい🎶。

唐揚げはぁー、ご飯にもあーうー🎶。」


そうきたか。

「しゅーまいをわすれるな!

しゅーまいは我らを待っているぅー♬♩。」


「そうだ!!しゅうまいだぁ!突撃!

われらがぁーの強いみかたぁー、しゅうーまーいーだぁー♩♫。」


「では、しばーし、あじあおうぞぉーー!

オ、レ♬♪。」


ふー、楽しかった。

しゅうまいとごま塩の俵ご飯を夢中で頬張る。

きたわ。

さいごの杏。これでおしまいと思いきや。


「愛しい杏姫〜〜。

そなたを想いて幾千年〜〜♩。」


ありぁ、こら悲しみになってきてるわよ。

「杏も想いは同じでござ〜いまするぅ。

こうしてお会いできましたのです。

一緒にまいりましょう〜♩」


お互いに箸につまんだ杏を天井向けて見せあったのよね。

その後、ぱくり。

ふふ、楽しい駅弁だったなぁ。


あれ、名古屋に着いちゃった、、。

名残惜しいけれど、ここで名刺の取り交わしは

野暮だわ。

そっと降りようとしたら、

「また、会う日までーー、会える時までー🎶。」


尾崎キヨヒコ、、。


また、いつか最終新幹線で会いましょう。


おしまい










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