豚人間
「もしもし」
「どうしたの?」
「殺してくれて本当にありがとう」
「…………」
「私の本命はあんたなんだ」
「何言ってるの? 冗談でも言っていい事と悪い事があるよ?」
「冗談で言う訳ないじゃん本気だよ!」
「そんな訳ないじゃん、いい加減にして!」
「好きすぎてあんたとエッチする妄想して毎晩オナニーしてる!」
「もういい……」
「もういいって何がもういいの?」
「今から……会って話そう……でも……この話はこれきりにしてよね……」
「会えるなんて嬉しい」
「それじゃ……」
※
自分の部屋で制服姿のまま過ごしていた私は電話を切った後、急いでメイクを直して家を出た。
放課後の学校は部活に精を出している生徒が多い為、教室へ入ろうが屋上へ上がろうが誰も気に留めない。
待ち合わせの時間よりも一時間早く着いてしまった。
待つ事なんて別に構わない、一時間なんてあっという間だし待てば必ず私の好きな人に会えるんだから。
早く会いたい、彼女の瞳に私の姿が映るって凄く素敵な事なんだから。
また前髪がクシャクシャになってしまった、学校の屋上は転落防止の壁や柵がないから風通しが良すぎて困る。
通学用のリュックからコンパクトミラーを取り出して前髪を入念に整えよう。
彼女に少しでも可愛く見られたいし、好きになってもらいたいし、いっぱい愛し合いたいから。
彼女が到着したら第一声なんて声を掛けようか、話の話題もいくつか考えておかなきゃ。
色んな事を妄想していると屋上の扉が開く音が聞こえた。
彼女の姿が見えた、何だか顔が強張って見える。少し緊張してるのかな?
一度小さな深呼吸をしてから、ゆっくりと私の方へと向かって来る。
声を掛けようと思ったけど、私の方も緊張していて声が出せなかった。
緊張した彼女の顔に見惚れてしまって、無言のままその場で立ち上がるのがやっとだった。
彼女が目と鼻の先の距離でふくみ笑いをした。
「あれって豚を出荷する為のトラックじゃない?」
豚を出荷? 何を言ってるんだろう?
彼女が指を差す方向へ視線を移した直後、背中を強い力で押された。
「なんで!?」
思わず言葉を発し一瞬にして冷や汗が吹き出した、すぐさま死ぬと直感する。
直後、全身に凄まじい衝撃と鋭い痛みが走り抜ける。
頭部が火に覆われたかの様に熱気で満たされた。
どうして……?
私は好きだったのに……?
ずっと嫌われてたのかな……?
切なすぎて……泣けてくる……。
Are you dead yet? 川詩夕 @kawashiyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます