第27話 体育館


「3時間目はもうそろそろ終わるな。4時間目はここに他の組の応援団もくるから、まとまって座るぞ。とりあえず一旦休憩で」


菖蒲がそう言うと各々休憩しだす。


「あの……」


菖蒲の周りに誰もいなくなるのを見計らってから話しかける。


「ん?桜庭。どうかしたか?」


「さっきのことなんですけど」


時を遡ること数分前。


私がバク宙ができるとわかり、先輩たちが演舞の構成を説明し始める。


最初は良かった。


いい演舞だなと思っていた。


だが、途中からアクロバットが入り出した頃、なぜか私の場所が菖蒲の隣になっていた。


バランスを考えればそこになるのは納得だが、どうしても2年の自分が3年の先輩を押し退けて前で踊るのは違うと思った。


「やっぱり気が引けるか?」


「はい。バランスを考えて私をそこにしたのはわかります。でも……」


「気にしなくていいのよ」


急に後ろから話しかけられ驚いて肩がビクッとなる。


誰だ?と思い振り返ると、そこには如月がいた。


「私たちはみんな納得してる。それでも、どうしても気になるっていうなら、最高の演舞をしてちょうだい。あなたを選んで良かったと思わせて」


如月はポンと優しく私の肩に手を置く。


「はい。精一杯頑張ります」


「うん。頑張ろうね」







「巴」


「あ、桃花」


4時間目が始める5分前に体育館にきた。


「早いね」


桃花たちは理科室で話し合いをしていた。


体育館から遠いところなので一番最後に白組が集まった。


「移動してないからね。私たちはここで3時間目したから」


「え、なにそれ羨ましい」


移動しなくていい分、休憩時間が多くなるのが羨ましかった。


「それより大丈夫?」


秋夜と茜もいて心配になる。


あの2人も応援団になっているとは思わず驚いた。


「うん。大丈夫。ね、それより、なんで各組の応援団が集まるの?」


チラチラとこっちを見ているのか茜と秋夜の視線を感じる。


本当は大丈夫ではない。


最悪だ。


浮気した男、親友で裏切った女、そんな2人と同じ空間にいるなど嫌でしかたない。


桃花がくるまで、気づかないふりして青組のなかにいた。


そのとき藤堂と目が合い心配そうな顔していた。


藤堂は唯一、私が秋夜と別れた理由をしていっている人物だ。


これ以上迷惑かけるわけにはいかないので、大丈夫だと教えるため笑いかけた。


それで安心したのか藤堂は後ろを向いて赤組の輪に戻っていった。


そうしてなんとか耐えていると白組がきた。


5分にも満たない短い時間だったが、あまりにも長く感じた。


4時間目が始まるまで後3分もないが、その短い時間でも茜と秋夜の話題はしたくなくてわざと話題を変えた。


「ん?ああ、今からのはね、多分だけど体育館が終わったあとに後夜祭があるじゃん。そのとき、一番最後に一部の応援団がアイドルみたいな衣装でステージに立ったの覚えてる?」


「あ、うん。覚えてるよ。すごく格好よかったし。でも、それがどうしたの?」


去年の体育祭で曲に合わせて踊るのを思い出す。


そこにいた全員が応援団と同じ振り付けをして踊った。


もちろん、一緒になって踊った。


「そのとき、ステージに立っていた人数覚えてる?」


「確か……10人じゃなかった?」


「うん。そう、10人。今からするのは……」


「まさか……!」


ここまでくれば桃花が次に何を言うか予想できた。


「そう。そのまさかよ。今からその10人を選ぶの」


桃花は興奮気味に言う。


「え、でも、そういうのって3年生がやるんじゃ?」


「私も去年同じこと思った。けど、そんな決まりはないみたい。現に去年、菖蒲先輩ステージに立ってたし」


「え?」


「もしかして覚えてないの?」


「……うん」


記憶にない。


楽しかったのは覚えているが、誰が立ったかは覚えていない。


というより顔を見れなかった。


なぜ体育祭のあとの後夜祭で応援団が一番最後に踊るのか、その成り立ちを知っていたので、顔を見たらそのことを思い出して楽しめなくなるので敢えて見ていなかった。


「まぁ、私たち後ろの方にいたし。顔が見えなかくても仕方ないか」


桃花は私がバツの悪い顔をしていたから、勘違いしたのかそう言う。


少し居た堪れなくて話を変えようと「ステージに立つ10人ってどうやって決めるの?」と聞こうとしたら、そのとき4時間目が始めるチャイムの音が鳴った。


「よし。じゃあ、始めるぞ」


チャイムが鳴り終わると教頭の三浦大吾(みうらだいご)が前に立つ。


「既にわかっているものもいると思うが、今からは後夜祭の最後に踊るメンバーを決める」


三浦がそう言うと何人かの目の色が変わる。


特に3年生の目が。


「決め方は毎年一緒で、今から配る紙にステージに立って欲しいと思う10人の名前に丸をつけてくれ」


名前を書いたのは学年が違うと漢字を知らないものもいるはずだからという配慮だ。


昔、白紙の紙に書くよう指示したら名前を知らなかったせいで、「赤組団長」「白組2年の美人」「緑組の面白い子」といった風に書くものがいた。


団長、副団長、ならまだいいが他は特定しにくい単語を使われもう一度やる羽目になったこともあるので、今では全員の名前が学年、組ごとにわかれた書かれた紙を渡している。


「あ、それと必ず男子と女子1名ずつ選ぶこと。男子9人、女子1名。逆でもいいが、必ず選んでくれ。いいな」


理由は言われなくても2、3年はわかるが、1年生だけはわからず首を傾げる。


知りたくても先輩たちがいるなかで、質問するという勇気はなく言われた通りにしようと思った。


「一応、15分を目安にしとくが、毎年1時間潰れるから気にせず悩んでくれ。じゃあ、はじめくれ」


じゃあ、最初から時間指定するなよ、と全員思ったが黙って誰にするか悩み始める。


私はとりあえず各団の団長の名前と青組と赤組の副団長に丸をつけた。


あと、3人誰にするか悩んだが三浦が「あと、5分な」と言うのが聞こえ、「うん、残りは他の副団長にしよう」と決め丸をつけていく。


「一応、聞くが終わったものはいるか?いたら、紙を持ってきてくれ」


三浦がそう言うと全員が一斉に立ち上がった。


「ん?なんだ?全員終わったのか?毎年何人かは決まらないのに、今年は……うん、まぁそうだよな」


生徒の顔を見て納得する。


悩む方がおかしい。


まだ誰に丸をつけたのか見てもないのに、誰がつけられたのか簡単に予想できた。


「じゃあ、今から先生たちで集計するからその間は各自自由に過ごしてくれ」


三浦がそういった瞬間、何も言われなくても全員組ごとにわかれて輪になって座り、先生たちに呼ばれるまで3時間目の続きをした。

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クズ彼氏と幼馴染を捨てたらモテ期がきた!? 知恵舞桜 @laice

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